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2898号 2022年1月27日

「ジョブ・クラフティング」と「ジョブ・デザイン」の違い

(本日のお話 2262字/読了時間3分)

■おはようございます。紀藤です。

さて本日も引き続き、

「ジョブ・クラフティング」

をテーマに学びを皆さまに、
ご共有させていただければと思います。

今日は「ジョブ・クラフティングと他の概念の違い」について
皆さまにお伝えできればと思っております。

※本日も論文、
高尾義明(2019)『ジョブ・クラフティング研究の展開に向けて:概念の独自性の明確化と先行研究レビュー』
を参考にご紹介させていただきます。

それでは参りましょう!

タイトルは、

【「ジョブ・クラフティング」と「ジョブ・デザイン」の違い
~ジョブ・クラフティングを紐解く(その4)~】

それでは、どうぞ。

■ジョブ・クラフティング。

”仕事を手作りする”

というこの考え方。

このような人や組織に関する考え方は、
実は過去も似たような概念を、
研究者が言っていたりします。

そしてそれらの
「どことなく似た概念」とジョブ・クラフティングは、
一体何がどのように違うのでしょうか?

今日はこの点について紐解きつつ、
ジョブ・クラフティングの理解を
深めて参りたいと思います。

■まずご紹介したいのが、

『ジョブ・デザイン』

と呼ばれる概念です。

『ジョブ・デザイン』とは、

「職務特性モデル」(Hackman & Oldham, 1980)とそれに基づいた
「職務再設計」(ワークデザイン)を意味します。



ちなみに、「職務特性モデル」とはなんでしょう。

曰く、

”五次元で測定される職務の客観的特性が
労働者の認知的心理的状態を左右し、
それが職務成果に反映されるとするもの”

とのこと。

何だか小難しい言い方になってしまいましたが(汗)
要は、「仕事のやる気や成果に影響を与える5つ職務特性」を
モデル化して整理したもの、と言えるかと思います。

ちなみに、こんなモデルです。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
<職務特性モデル>

{職務特性}    {重要な心理状態}   {仕事の成果}

1)技能の多様性  →有意義感の実感
2)職務の完結性  →同上         ・高い内発的動機づけ
3)職務の重要性  →同上        →・高い業績に関する満足感
4)自律性     →責任の実感      ・高い成長に関する満足感
5)フィードバック →結果についての理解

※職務特性と仕事の成果に影響を与える要素=「成長欲求(達成・学習・進歩)」の強さ

(Hackman & Oldham, 1980)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

■上記で見られるように、

「職務特性の5つの要素」があり、それらを満たすことで、
「重要な心理状態」を獲得することができます。

そしてそれが内発的動機づけ等の
「仕事の成果」に繋がっていく、となります。



ゆえに、上記の職務特性モデルを元に

・「フィードバック」がないなら、
フィードバックを職務の中に組みこむ

・「技能の多様性」が少ないのであれば
より多くの技能を活用できるように仕事を再設計する

というように
「職務特性モデル」に準じて「職務を再設計する」ことで
内発的動機づけや満足感という成果を意図的に高められる、

となるわけです。

■ということで『ジョブ・デザイン』のお話をまとめると

・仕事のやる気や成果に繋がる
5つの要素とそれらの関連を「職務特性モデル」と呼ぶ

・そして、基づいて「職務再設計」すること、
この一連の流れを『ジョブ・デザイン』と呼ぶ

となります。

■と、ここまで
ジョブ・デザインのお話を
お伝えさせていただきました。

では、このお話と
「ジョブ・クラフティング」は
一体何が違うのでしょうか?

ちなみにジョブクラティングとは、
以下の3つの考え方が軸になっています。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
<ジョブ・クラフティングの3つの次元>

1)タスク境界(task boundary)
→仕事そのもの(を創意工夫する)

2)他者との関係性(relational boundary)
→人との関係(を築く)

3)認知的な境界変化
→仕事の捉え方(を変え、意味や意義を見出す)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

これらと、職務特性モデルに代表される
「ジョブ・デザイン」とは何が違うのか?

■以下、論文を参考に整理をしてみました。

(ここから)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
<ジョブ・デザインと・ジョブ・クラフティングの共通点>
・どちらも「仕事の経験」に着目していること

<ジョブ・デザインの考え方>
・従業員は基本的に「受動的な存在」とされる
・マネジャー主導でトップダウン的に決定する
・職務特性が画一的に従業員に影響を与える前提である

<ジョブ・クラフティングの考え方>
・従業員は自らの仕事を変更するという「能動的な存在」
・社会構築主義的な見方で、個々の従業員が自らの仕事を作り上げていく
ボトムアップの考え
・仕事の経験を自らの手で変えていくことができる前提

※参考:高尾義明(2019)『ジョブ・クラフティング研究の展開に向けて:概念の独自性の明確化と先行研究レビュー』
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

つまり、
「ジョブ・デザイン」と「ジョブ・クラフティング」は
共通する「仕事の経験」(を変える)という立場でありつつ、
そのスタンスが

・組織主導ー個人主導
・画一的ー個別的
・客観的ー主観的

という部分で対比的に捉えることができる、
となります。

同じ山を登りながら、若干ルートが違う、
というイメージでしょうか。

■しかしながら、繰り返しになりますが
いずれの概念も「仕事の経験」に着目している部分は同じです。

またジョブ・クラフティングで言う、
「仕事のそのものの創意工夫」は、

ジョブ・デザイン(職務特性モデル)でいう
「技能の多様性」「職務の完結性」と
同じような視点といえますし

ジョブ・クラフティングで言う
「仕事の捉え方を変える」

ジョブ・デザイン(職務特性モデル)でいう
「職務の重要性」と近しい視点で、相互に関連しています。

ゆえに、どちらがどちらと
キレイにすぱっと分かれるわけではなく、
それぞれ”補完的な見方”とされている、

というようです。

■、、、ということで、
少し突っ込んだお話をしましたが、
現在の概念と対比をさせてみるとことで、

「ジョブ・クラフティングとはなにか?」

がより明確にわかるのではなかろうかと思います。

また次回以降も別の切り口から
引き続きジョブ・クラフティングを
掘り下げていきたいと思います。

最後までお読み頂き、ありがとうございました。
本日も皆様にとって素晴らしき1日になりますように。

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<本日の名言>

人生で最も大切なことは、
はるか彼方にあるものを見ようとすることではなく、
目の前にはっきり見えるものをきちんと実行することだ。

オーギュスト・ロダン(フランスの彫刻家/1840~1917)

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