ストレングス・コーチングの効果を紐解く(その3) ~ストレングス・ベースのコーチングの手順/3つの視点~
(本日のお話 3054字/読了時間4分)
■こんにちは。紀藤です。
昨日は、2件のアポイント。
並びにセミナーへの参加。
久しぶりに大学院以外にて
「自分がどうしていきたいのか」を
考える機会を設けましたが、実に良い時間でした。
アカデミックな話もいいのですが
やっぱり泥臭いほうが好きなんだな、
と自覚した1日でした。
*
さて、本日のお話です。
昨に引き続き、
「強みとコーチング」の論文について、
本日も泥臭く(?)紐解いていきたいと思います。
昨日までは、
・ストレングス・コーチングのオーストラリアの研究の全体像
・コーチング有効性に関するエビデンスについて
お伝えして参りました。
今日は、
「ストレングス・コーチングの研究において
どのような目的・手法で進めていったのか」
について話を進めてまいりたいと思います。
※参考・引用論文は、
ダグ・マッキー博士(CSAコンサルティング)
『THE EFFECTIVENESS OF STRENGTHBASED EXECUTIVE COACHING IN ENHANCING FULL RANGE LEADERSHIP DEVELOPMENT_A CONTROLLED STUDY』(2014)
(ストレングス・ベースのエグゼクティブ・コーチングが、フルレンジリーダーシップ開発を強化する上での影響:対照研究)
です。
それではまいりましょう!
タイトルは、
【ストレングス・コーチングの効果を紐解く(その3)
~ストレングス・ベースのコーチングの手順/3つの視点~】
それでは、どうぞ。
■「効果がある」という言葉は、
それだけではなんとも曖昧なものです。
ゆえに、
”「何」に対して、
「どのような」効果がある”
という目的を明確にしなければ、
説得力を持たないものです。
ゆえに、
「ストレングス・ベースのコーチングの
有効性を研究する」
という研究テーマをおいたときも、
「”何に”対して
ストレングス・ベースのコーチングは
影響があるのか?」
を明確にしないと、
お話(研究)が始まりません。。
■では、この論文の
ダグ・マッキー博士らは
”何”を基準としてはストレングス・ベースの
コーチングの成果を測ったのでしょうか?
まず、博士らは、
”ストレングス・ベースのコーチングが
「リーダーシップ」に影響を与える”
としました。
そしてリーダーシップの中でも特に
『フルレンジ・リーダーシップ・モデル』
なるものを基準にしました。
これは
・最も一貫性があって、
・研究されていて
・包括的なリーダーシップのモデル
とされています。
なんのこっちゃ、と思われた方も、
いらっしゃるかもしれませんが、
リーダーシップには大きく
・変革型リーダーシップの要素
(人を鼓舞する・変革するなど、カリスマチックなリーダー要素 例:坂本龍馬とか)
・取引型リーダーシップの要素
(信頼を築く、誠実さを持つなどのリーダー要素 例:信頼される中間管理職など)
の2つがあります。
これをどちらも兼ね備えたリーダーシップが
フルレンジ・リーダーシップ・モデルとされており
このモデルは多くの研究がなされています。
どうでもいいですが、
なんだか響きもカッチョイイですね。
※より詳しく知りたい方はこちら
↓↓
『リーダーシップ理論を紐解こう!(中編)~カリスマ型・変革型アプローチってなんだ?~』
https://www.courage-sapuri.jp/backnumber/9758/
■そして、
ストレングス・ベースのコーチングの成果を研究するにあたって
フルレンジリーダーシップを目的変数としました。
そうすることで
”目的が、誰もがわかる明確な基準”
となりました。
■こうして目的を明確にしたところで、
”どのような手法で
ストレングス・ベースのコーチングを実施するのか?
が次の課題になってきます。
コーチングとは人が介入するものです。
ゆえに、やり方が人によって微妙に異なってしまう恐れがあります。
しかし、そうすると研究としては
”本当に「ストレングス・ベースのコーチング手法」が
効果を発揮したのかどうかがわからない”
となってしまいます。
ゆえに、
”今回の調査・研究で介入する
プロのコーチ達のコーチングの手法を統一する”
というプロトコル(手順・ルール)が
必要になるのでした。
■ということで、ダグ博士らは、
以下のようなルールで
ストレングス・ベースのコーチング手法の統一を測っていきました。
(この定義の仕方が、なかなか勉強になります)
以下論文より整理をして、まとめてみました。
(ここから)
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<ストレングス・ベースのコーチングのプロトコル(手順)>
◯その1)「強みが何か」という概念の整理をする
・「強み」という概念は、分類され始めているものの、
『リアライズ2』『VIA(Value in Action)』、
『ストレングス・ファインダー』など、
様々な枠組みがあってそれぞれ違っています。
・その中でも、『リアライズ2』における
以下のような4つの観点で「強み」の概念を分類しました。
{強みの概念の整理}
(1)既知の「実現された強み」
(2)既知の「未実現の強み」
(3)パフォーマンスは身についているがエネルギーに乏しい「学習された行動」
(4)能力とエネルギーの両方が低い「弱点」
◯その2)コーチング・セッションの構造を整理する
・上記の概念も踏まえた枠組みの中でコーチング介入を適用することで
プロトコル(手順)を客観的に示し、方法論がブレることを避けました。
そして、コーチング・セッションに以下を行うこととしました
{コーチング・セッションの構造}
(1)プロセスの振り返り
(2)目標達成
(3)明確な行動
(4)現在までに進捗状況に関する自己評価
◯その3)ストレングベースのリーダーシップ・コーチングの4つの中核的要素
・「強みの開発」の意味を定義します。
この言葉も、曖昧になりがち。ゆえに何をもって”開発”とするのかも
以下の「強みの認識と開発」4つの要素として明確にしました。
{強みの認識と開発}
(1)強みの診断を行い、パフォーマンスの問題に強みを意識的に適用すること
(2)自信が傲慢になってしまう場合を特定する
(3)強みを他の補完的コンピテンシーと組み合わせる
(例:技術的な専門知識✕人間関係構築を組み合わせる等)
(4)強みをより広いビジネス目標や内発的な関心事と結びつける
(例:問題解決の強みを組織のイノベーションと結びつける)
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(ここまで)
とのこと。
■さて、こんな風に
・研究目的を明確にする
・研究手法を明確にする
ことを行って研究をしました、、、
という論文のご紹介ではありましたが、
いかがでしたでしょうか。
■私の感想ですが、このプロセスは
大変学びになるなあ、と感じました。
思うのですが
・”コーチング”というプロセス
・”強みを開発する”というプロセス
のいずれにおいても、
例えば人事や研修において
(ちょっと乱暴なようですが)
「なんとなくやっている」
というケース、意外とあるのでは?
と思うのです。
あるリーダーシップ研修のワークを、
見様見真似で実施するのは、
できるといえばできます。
やってみてわかることも多々あるので
一概に否定するつもりもないのですが、
もしそのプロセスを
今回の論文における
「研究の前提合わせ」のように
・目的を明確にする
(誰もがわかる客観的な目的を設定する)
・手法を明確にする
(誰もがわかる客観的な手順を設定する)
上で手間暇をかけて
プロセスを設計したならば
”まぐれヒットと
狙ったヒットを分かつ、
分水嶺になり得る”
のでは、と思ったのでした。
■私自身、色々と研修プログラムを
設計させていただく機会も増えていますが、
今回の論文のようなプロセスを大事にすることは、
大変ではあるものの
結果的に中長期的に貢献できる研修を実施する上で
重要な行為だろう、と感じております。
自戒を込めて、掘り下げること、
丁寧にプロセスを設計すること、
大切にしていきたいものだな、
と感じた次第です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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<本日の名言>
創造して破壊して、破壊して創造する。
そのプロセスが大切である。
似鳥昭雄
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