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2991号 2022年4月30日

管理職の方必見?! 「暗黙理論」と「上司のコーチング行動」の関係性

(本日のお話 2351文字/読了時間3分)

■こんにちは。紀藤です。

GW、始まりましたね!
私は初日から胃腸炎&発熱にやられており
グロッキーになっておりましたが(汗)
とはいえ、夕方からは大学院の授業でございました。

オンライン受講なので受講できましたが、
非常に学び深き時間で「出席してよかったなあ」
と感じておりました。



さて、そんな授業に関連して
本日のお話です。

昨日の内容が

「マネジリアルコーチング論」

なるものだったのですが、
そこで取り上げられた論文の内容が、
なるほどなあ、と考えさせられるものであり、

かつ、部下を持つ管理職の方にも、
ぜひ知っておいていただきたい!
思う内容でした。

ということで、本日はそのお話について、
皆さまにご共有させていただければと思います。

それでは早速まいりましょう!

タイトルは

【管理職の方必見?! 「暗黙理論」と「上司のコーチング行動」の関係性】

それでは、どうぞ。

■「人の信念、考え方は
行動に反映されるもの」

である。

こういった感覚を持っている方は
少なくないのでは、と思います。

そんな

”自分の暗黙の信念が
行動に影響を与える”

としたのが、

『暗黙理論』(Dweck,1999)

と呼ばれているものです。

■この「暗黙理論」とは、

人は、人間の能力や性格に対して、
以下の信念を持っている、

という考え方のこと。

大きく、以下の2つにわかれるそうです。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

<暗黙理論の2パターン>

◯増加理論

:個人の特性は変化し、発展することができる
(=人は成長することができる、という信念)

◯実体理論

:個人の特性は本質的に固定的なものである
(=人は変わることはない、という信念)

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

人は、上記のいずれかを信念として持っており、
その暗黙理論が

・達成努力やパフォーマンスに影響したり
・他者との関係やあり方に影響する、

ということが研究からわかっているとのこと。

(、、、うん、なんだかわかる気もします)

■さて、この暗黙理論について
興味深い論文があります。

それは、

”「暗黙理論」と「管理者のコーチング行動」の関係”

を研究した論文です。

※参考論文:Heslin(2006)
『KEEN TO HELP?
MANAGERS’ IMPLICIT PERSON THEORIES AND THEIR SUBSEQUENT EMPLOYEE COACHING』
(「部下を助けたい?」 管理者の暗黙理論と彼ら/彼女らの従業員コーチング)

■この論文で、研究された内容は、
ざっくり以下2つの問いです。

まず1つ目の問いが

「管理者が増加理論(=人は変わるという信念)を持っている場合、
部下をコーチングする程度が高まるのか?」

という内容。

ここでは米国の
私大MBAに参加している人(管理者)を対象に、
調査を行ったのでした。

プロセスとしては

・管理者が、実体理論(人は変わらない)と増加理論(人は変わる)
どちらを持っているかを質問紙で調査する

・実体理論、増加理論のそれぞれの群で、
コーチング行動(10項目の行動尺度)が変わるのかを調べる

ということで、データを収集し、
統計的に分析をしてみました。

すると、

『管理者が増加理論(=人は変わるという信念)を持っている場合、
部下をコーチングする程度が高まる』

ことがわかりました。

(やっぱり、「人は変われる」と思う管理者のほうが、
コーチング行動をたくさんしているのですね)

■そして2つ目の問い。

それは、

「実体理論者の管理者に、
”増加理論を強調したワークショップ”に実施すれば、
コーチング行動は増えるのか?」

という研究でした。

平たくいえば、

「いや、人なんて変わんねーよ」という人に、
人は変われるよ、その考え方の良い効果あるんだよ、
と納得してもらえたら、コーチング行動は増えるんだろうか?

という素朴な疑問です。

これも、統計的に有意かを確かめるために、
以下実験を行いました。

・対照群を設ける
(=つまり増加理論について強調しない
ワークショップを受けてもらう群)

・実験群には、増加理論を強調する
ワークショップを受けてもらう

、、、そして、両者で差が出たのかを
データ収集、分析をし、確かめました。

結果、

『実体理論者の管理者に、
”増加理論を強調したワークショップ”に実施すれば、
コーチング行動が増えた(!)』

ことがわかりました。

(どんなナイスなワークショップだったのかが、
実に気になりますね、、、、)

■つまり、

「増加理論を持つ管理者はコーチング行動が多い」

し、

「増加理論を支持するように
ワークショップ等で教育するとコーチング行動が増える」

ことがわかった、

なる研究内容です。

■、、、さて、この結果を見て、

皆さまはどのようなことを
感じられましたでしょうか?

感ずることは
人それぞれかと思いますが、
私がシンプルに思ったのは、

『行動の前提となる、考え方にアプローチすることが重要』

ということ。

■もちろん、
「考え方を変える」ということこそが
言うは易し行うは難しであることは
百も承知ではあります。

それでもそこからアプローチすることが
回り回って行動に影響を与えるし、
そういった考えは大事だよな、

と改めて感じたのでした。

■例えば会社から、

「これから1on1を全社的にやるので
マネジャーの皆さんはよろしくお願いします」

と話があったとして、

それに伴うコーチングの
知識やスキルトレーニングがあったとしても、

「いやいや、人は基本変わらないでしょ。
だからやっても意味ないでしょ」

という管理者の意識、
まさに暗黙理論における実体理論が
足を引っ張っているということに向き合う機会がなければどうか。

多分。どこかでもやっとしたまま、
スキルトレーニングを受けることになるでしょう。

本人だって、そのような考え方(暗黙理論)
が影響しているということを

”自分自身で自覚”

していなければ、
泳ぐためのスキルを渡されると同時に、
足に鉛の重りを付けられているようなもの、、、

なのかもしれません。

■人の信念の濃さは
それぞれまちまちでしょう。

「ゼッッッタイ!人は変わらない!
これまでの経験からもそうだ!!」

とものすごい強く
固執しているような信念を持つ人もいれば、

理論的な背景と、
実体理論と増加理論の違い、そして
その影響を自覚する機会を提供することで

「気づいていなかったけど、自分はそうだったんだ。
増加理論の方が、プラスならばそのように行動を変えてみよう」

と思える人もいるかと思います。

100%もないし、
グラデーションのように、
いろんな人が混在しているものでしょう。

■ただ、このような

”「暗黙理論」と「管理者のコーチング行動」の関係”

が一つの研究として明示されることで、

自分の認知に変化があり、
そして代わりうる可能性があることを、
証明してくれていることに、

価値を感じるな、と思ったのでした。

■人が変わること、
ましてや変えることは難しいし、

またこの研究も、
じゃあ日本ならどうなのか?
対象者が変わったらどうなのか?

など、考えるところもたくさんあります

どんな状況でも当てはまる
自然科学とは違う話です。

ただ、それでもこれらの研究が
私たちの日々の行動を変えようとする
一つの資源にはなるのだろう、

そんなことを感じますし、

だからこそ、このような知識を
積極的に知りにいくことは
今後も大切にしていきたいな、

と思った次第でございます。

最後までお読み頂き、ありがとうございました。

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<本日の名言>

すべての人間は、知ることを楽しみ求めるが本性なり。
彼らが見聞を好むのは、その象徴なり。

アリストテレス(古代ギリシャの哲学者/BC384-322)

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