管理職の方必見?! 「暗黙理論」と「上司のコーチング行動」の関係性
(本日のお話 2351文字/読了時間3分)
■こんにちは。紀藤です。
GW、始まりましたね!
私は初日から胃腸炎&発熱にやられており
グロッキーになっておりましたが(汗)
とはいえ、夕方からは大学院の授業でございました。
オンライン受講なので受講できましたが、
非常に学び深き時間で「出席してよかったなあ」
と感じておりました。
*
さて、そんな授業に関連して
本日のお話です。
昨日の内容が
「マネジリアルコーチング論」
なるものだったのですが、
そこで取り上げられた論文の内容が、
なるほどなあ、と考えさせられるものであり、
かつ、部下を持つ管理職の方にも、
ぜひ知っておいていただきたい!
思う内容でした。
ということで、本日はそのお話について、
皆さまにご共有させていただければと思います。
それでは早速まいりましょう!
タイトルは
【管理職の方必見?! 「暗黙理論」と「上司のコーチング行動」の関係性】
それでは、どうぞ。
■「人の信念、考え方は
行動に反映されるもの」
である。
こういった感覚を持っている方は
少なくないのでは、と思います。
そんな
”自分の暗黙の信念が
行動に影響を与える”
としたのが、
『暗黙理論』(Dweck,1999)
と呼ばれているものです。
■この「暗黙理論」とは、
人は、人間の能力や性格に対して、
以下の信念を持っている、
という考え方のこと。
大きく、以下の2つにわかれるそうです。
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<暗黙理論の2パターン>
◯増加理論
:個人の特性は変化し、発展することができる
(=人は成長することができる、という信念)
◯実体理論
:個人の特性は本質的に固定的なものである
(=人は変わることはない、という信念)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
人は、上記のいずれかを信念として持っており、
その暗黙理論が
・達成努力やパフォーマンスに影響したり
・他者との関係やあり方に影響する、
ということが研究からわかっているとのこと。
(、、、うん、なんだかわかる気もします)
■さて、この暗黙理論について
興味深い論文があります。
それは、
”「暗黙理論」と「管理者のコーチング行動」の関係”
を研究した論文です。
※参考論文:Heslin(2006)
『KEEN TO HELP?
MANAGERS’ IMPLICIT PERSON THEORIES AND THEIR SUBSEQUENT EMPLOYEE COACHING』
(「部下を助けたい?」 管理者の暗黙理論と彼ら/彼女らの従業員コーチング)
■この論文で、研究された内容は、
ざっくり以下2つの問いです。
まず1つ目の問いが
「管理者が増加理論(=人は変わるという信念)を持っている場合、
部下をコーチングする程度が高まるのか?」
という内容。
ここでは米国の
私大MBAに参加している人(管理者)を対象に、
調査を行ったのでした。
プロセスとしては
・管理者が、実体理論(人は変わらない)と増加理論(人は変わる)
どちらを持っているかを質問紙で調査する
・実体理論、増加理論のそれぞれの群で、
コーチング行動(10項目の行動尺度)が変わるのかを調べる
ということで、データを収集し、
統計的に分析をしてみました。
すると、
『管理者が増加理論(=人は変わるという信念)を持っている場合、
部下をコーチングする程度が高まる』
ことがわかりました。
(やっぱり、「人は変われる」と思う管理者のほうが、
コーチング行動をたくさんしているのですね)
■そして2つ目の問い。
それは、
「実体理論者の管理者に、
”増加理論を強調したワークショップ”に実施すれば、
コーチング行動は増えるのか?」
という研究でした。
平たくいえば、
「いや、人なんて変わんねーよ」という人に、
人は変われるよ、その考え方の良い効果あるんだよ、
と納得してもらえたら、コーチング行動は増えるんだろうか?
という素朴な疑問です。
これも、統計的に有意かを確かめるために、
以下実験を行いました。
・対照群を設ける
(=つまり増加理論について強調しない
ワークショップを受けてもらう群)
・実験群には、増加理論を強調する
ワークショップを受けてもらう
、、、そして、両者で差が出たのかを
データ収集、分析をし、確かめました。
結果、
『実体理論者の管理者に、
”増加理論を強調したワークショップ”に実施すれば、
コーチング行動が増えた(!)』
ことがわかりました。
(どんなナイスなワークショップだったのかが、
実に気になりますね、、、、)
■つまり、
「増加理論を持つ管理者はコーチング行動が多い」
し、
「増加理論を支持するように
ワークショップ等で教育するとコーチング行動が増える」
ことがわかった、
なる研究内容です。
■、、、さて、この結果を見て、
皆さまはどのようなことを
感じられましたでしょうか?
感ずることは
人それぞれかと思いますが、
私がシンプルに思ったのは、
『行動の前提となる、考え方にアプローチすることが重要』
ということ。
■もちろん、
「考え方を変える」ということこそが
言うは易し行うは難しであることは
百も承知ではあります。
それでもそこからアプローチすることが
回り回って行動に影響を与えるし、
そういった考えは大事だよな、
と改めて感じたのでした。
■例えば会社から、
「これから1on1を全社的にやるので
マネジャーの皆さんはよろしくお願いします」
と話があったとして、
それに伴うコーチングの
知識やスキルトレーニングがあったとしても、
「いやいや、人は基本変わらないでしょ。
だからやっても意味ないでしょ」
という管理者の意識、
まさに暗黙理論における実体理論が
足を引っ張っているということに向き合う機会がなければどうか。
多分。どこかでもやっとしたまま、
スキルトレーニングを受けることになるでしょう。
本人だって、そのような考え方(暗黙理論)
が影響しているということを
”自分自身で自覚”
していなければ、
泳ぐためのスキルを渡されると同時に、
足に鉛の重りを付けられているようなもの、、、
なのかもしれません。
■人の信念の濃さは
それぞれまちまちでしょう。
「ゼッッッタイ!人は変わらない!
これまでの経験からもそうだ!!」
とものすごい強く
固執しているような信念を持つ人もいれば、
理論的な背景と、
実体理論と増加理論の違い、そして
その影響を自覚する機会を提供することで
「気づいていなかったけど、自分はそうだったんだ。
増加理論の方が、プラスならばそのように行動を変えてみよう」
と思える人もいるかと思います。
100%もないし、
グラデーションのように、
いろんな人が混在しているものでしょう。
■ただ、このような
”「暗黙理論」と「管理者のコーチング行動」の関係”
が一つの研究として明示されることで、
自分の認知に変化があり、
そして代わりうる可能性があることを、
証明してくれていることに、
価値を感じるな、と思ったのでした。
■人が変わること、
ましてや変えることは難しいし、
またこの研究も、
じゃあ日本ならどうなのか?
対象者が変わったらどうなのか?
など、考えるところもたくさんあります
どんな状況でも当てはまる
自然科学とは違う話です。
ただ、それでもこれらの研究が
私たちの日々の行動を変えようとする
一つの資源にはなるのだろう、
そんなことを感じますし、
だからこそ、このような知識を
積極的に知りにいくことは
今後も大切にしていきたいな、
と思った次第でございます。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
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<本日の名言>
すべての人間は、知ることを楽しみ求めるが本性なり。
彼らが見聞を好むのは、その象徴なり。
アリストテレス(古代ギリシャの哲学者/BC384-322)
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