今週の一冊『触れることの科学 なぜ感じるのか どう感じるのか』
(本日のお話 2522字/読了時間3分)
■こんにちは。紀藤です。
昨日土曜日は、
半年間に亘るリーダーシップ研修のDAY2。
ストレングス・ファインダーを用いた
強みの自己認識のワークショップでした。
4年前にコーチの資格取得の際に
ご一緒した方と共に実施をいたしましたが、
我々運営側の成長も感じられて嬉しい時間でした。
外の人とのつながり、
これからも大切にしていきたいと思います。
(そしてご参加頂いた皆さま、ありがとうございました!)
*
さて、本日のお話です。
毎週日曜日は、お勧めの一冊をご紹介する、
「今週の一冊」のコーナー。
今週の一冊は
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『触れることの科学 なぜ感じるのか どう感じるのか』 (河出文庫)
デイヴィッド・J・リンデン(著)、岩坂彰 (訳)
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です。
■「触れる」ということは、
私たちに何をもたらすのか?
というより、触覚とは、
一体なんなのか?
あまりにも日常的すぎて
「触覚」を意図して意識する場面は
少ないでしょうし、
触覚ってなに?なんて考える人も
相当レアでしょう。
あるいは、相当変わっているか、
どちらかかと、、、(苦笑)
■視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚の
5感の一つに数えられるこの感覚は、
健康診断で視力テストや聴覚テストを
されるわけでもありません。
しかし、
・他者や世界とのつながりを感じるために必要不可欠
(触れる、繋がる、愛情を感じる)
・自分が主体となり何かを表現するためにも必要不可欠
(働く、書く、奏でる、運動をする)
であり、
非常に重要な感覚の一つであるというのは、
触覚がもたらしてくれるものに一度焦点を当てると、
容易に理解ができることではないか、と思えてきます。
■そんな「触れる」ことについて、
科学的な研究から、徹底的に解き明かした
エンターテイメント作品がこの一冊。
エンターメント、というのが
ちょっとしたポイントだと思っていて、
というのも、Amazonの本のレビューでは、
こんなふうに紹介がされています。
”人間や動物における触れ合い、
温かい/冷たい、痛みやかゆみ、性的な快感まで、
目からウロコの実験シーンと驚きのエピソードの数々。
科学界随一のエンターテイナーが誘う触覚=皮膚感覚のワンダーランド。”
(Amazon本の紹介より引用)
著者のデイヴィット・J・リンデン氏は、
ジョンズ・ホプキンス大学医学部教授であり、
神経科学者でありますが、
”科学界随一のエンターテイナー”
と書かれていることが、実に納得できる一冊なのです。
■紹介されている話は、
研究に基づいた実験の数々を論文より紹介する
説得力があるものですが、
その事例一つ一つが、
「えっ、そんなのもあるの?」と
驚かされる話ばかりなのです。
そこが面白い。
*
例えば、王道から言えば、こんな話です。
<「温かいコーヒー」と「冷たいコーヒー」の実験>
→”身体的な温かさ”は比喩的な温かさと関連するのか?の実験。
「皮膚に感じられる温かさが、
相手の印象に対する温かさに繋がるのか」を調べたところ、
温かいコーヒーを持って、対象者の第一印象を聞いた場合と、
冷たいコーヒーを持って、対象者の第一印象を聞いた場合では、
温かいコーヒーを持って接したほうが、
有意に相手のことを「温かい人」と感じていた。
(そんな単純な!?と思いましたが、統計的に有意な差があったそう)
あるいは、
<触れ合いが多いバスケットチームは強い>
→ハイタッチや、仲間のお尻を叩いたり、
チェストバンプ(胸をぶつけあう)などの身体的接触が、
協調的プレーと好成績の予測因子になるのでは、という実験。
・NBA全30チームの開幕後2ヶ月の試合の録画をチェックし、
身体的接触を数え、それらを適切な統計処理したところ、
「勝ち越したチームの身体接触は、
負け越したチームの身体接触に比べて多い」結果になった。
など。
触れ合いって、大事なんだーと、
考えさせられます。
(もちろん文脈や立場のほうが影響力は大なので、
職場に安易に触れ合い大事、とすると危険です)
■上記のように、
”触れ合うことの効果”を調べた
王道的な研究も前半に紹介されつつ、
中盤からは、もっとマニアックな話にも
踏み込んでいきます。
例えば、
「パートナー同士の触れ合い」も研究的視点から取り上げます。
パートナー(同性/異性)が実際に触れ合うことで
何が脳に起こるのかを調べるため、
”CTスキャンを取りながら
パートナー同士で触れ合ってもらう(!)”
という実験。
関連する皮膚感覚と、
通常の皮膚の違いの神経学的な話も、
盛り込んで論考していきます。
*
あるいは、痒みという感覚。
こちらも掘り下げて解明していき、
触覚を部分的に失ったことで
脳まで掻いてしまった女性の話(!)
など衝撃的な症例の話なども
紹介されていきます。
■そうやって、
・触れ合うとは何か?
・人はどうやって「触れること」を感じるのか?
・神経科学的にどのようにできあがっているのか?
・触れ合うことが子供の免疫や発達に、
どのような影響を与えるのか?
・性的な触れ合いとは
科学的に何が起こっているのか?
・痛みとはなにか?
・かゆみとは何か?
等々、「科学的に」「研究に基づいて」
紹介をされていくのが、
非常に興味深い内容となっています。
まさに、触れ合うことのワンダーランドを
体験できる一冊ではないか、
と思います。
■ちなみに急に話が飛ぶようですが、
1点思い出す話がありました。
この本を、
「人材開発・組織開発に関わる方にも、
おすすめしたい一冊」
と思う所以です。
というのもこの本は、
ある研修の参考書籍として
紹介されていた本だからです。
個人的な話ですがコロナ禍の真っ只中で
もっとも警戒が強かったとも感じた1年半前、
レゴブロックを使ったワークショップ
「レゴ・シリアスプレイ」というものの資格取得の
4日間のコースに参加いたしました。
その際に言われたことが印象に残っています。
「コロナが落ち着いて
対面研修が戻ってくる日は必ずやってくる。
その時には”対面で会う”ことの意味が、
これまでと変わってくるはず。
せっかく”対面で会う”のだから、
そこでしかできない体験、
例えば、五感を使ったような、
記憶に刻まれる体験がますます求められるはずです」
、、、と。
そして、その中で「触れる」という
重要な感覚について、触れていたのでした。
■まさに、書籍で紹介されている、
「温かいコーヒーを持ちながら人と接すると
(触覚に影響され)相手が温かく感じられる」
ように、
”触れる感覚”も含めて、
対面ではその場が作られていきます。
それは人・組織づくりにおいて、
付加価値をもたらす材料の一つに
なりえるのかもしれません。
対面研修ではクッシュボールという
ふわふわしたボールも研修教材として
使うことがありますが、
※こんなのです。さわってると気持ちよくて落ち着くのです↓↓
こういったものも、
もっともっと注目されていくのかもしれない、
とも思います。
■と、つい人・組織づくり系の話に
よせてしまいましたが、
それに関係なくとも、
「触れること」という人生に重要な感覚を探求する
学び深き一冊でございます。
よろしければ、ぜひ。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
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<今週の一冊>
『触れることの科学 なぜ感じるのか どう感じるのか』 (河出文庫)
デイヴィッド・J・リンデン(著)、岩坂彰 (訳)
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