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3111号 2022年8月28日

今週の一冊『承認とモチベーション』(前半)

(本日のお話 1618字/読了時間2分)
■こんにちは。紀藤です。

昨日より、夏休みということで
愛知県の旅館にきております。

父、母、姉と
妻、私、息子での温泉旅行ですが、
ゆるりとした時間が流れております。

リフレッシュって大事ですね。



さて、本日のお話です。

毎週日曜日はお勧めの一冊をご紹介する
「今週の一冊」のコーナー。

今週の一冊は、

========================

『承認とモチベーション』(前半)

太田 肇(著)


========================

です。

今回の一冊は、少しじっくり
掘り下げたいと思いましたので、

前半・後半

で分けてお伝えしたいと思います。

■「承認」=ほめること、認めること

を意味します。

この「承認」、
コーチングでも重要なキーワードであり

また私たちが働く上でも、
大切な行為のようです。

■少し話が回り道になりますが

「働く意味」のお話について
少し触れてみたいと思います。

たとえば、働くひとに

「何のために働いているのか?」

と問うてみると、おそらく
その回答の大多数として

”金銭”

と答える人はかなり多いかと思われます。

その理由は、

・金銭は人格と切り離された中立的なものであること
・金銭は定量化して見えやすい(具体的なモノである)
・金銭は生活のために必要なものである

ことなどの便宜的な理由から、

「人は金銭のために働く」

という仮定が生まれた、
と考えられるそう。

■、、、ただ、
ここで立ち止まって考えてみたいのです。

本当に

「金銭の”ため”に働いているのか?」

、、、と。

間違いなく、それ以外の理由も
多々あることを感じます。

もし金銭の”ため”なら、
報酬がよければそれでOK、
離職も少ない、となるでしょう。

そして、生産性やパフォーマンスも
もらえる金銭が高ければ、高まる、
と想定されます。

しかし、現実はそうはなっていません。

あるいは過去の研究からも、
それとは矛盾する結果が出ています。
(ホーソン実験等)

■人は、働くことに関して

金銭以外の様々な意味を
動機づけとして見出しており

その中の動機づけの
中心的なものの一つが、

”面白い、楽しい、嬉しい”

という感情である、
と本書では述べています。

そして

「どんなときに嬉しいと感じたか?」

という質問をアンケートや
インタビューを通じて行った結果によると

おおざっぱにほぼ半数が、

”周囲から認められたり、
褒められたりしたとき”

に嬉しい、と感じるそうです。

まさに「承認されたとき」です。

■、、、ということで、
少し遠回りになりましたが

働くことを、
お金のためではなく

「承認されたい人(承認人)」

という重要な観点もあるのではないか、
という議題を投げかけています。

■さて、
そんな重要な意味をもつ「承認」。

その効果について、

【承認の5つの効果】

について同書でまとめています。

どんな内容なのでしょうか。

以下、簡単に整理いたします。

(ここから)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

【承認の5つの効果>

<1)組織のパフォーマンス向上>
・組織成員のモチベーションアップが仕事の成果を高める。

・良い仕事が称賛されることで、成員の仕事が生産的な方向に導かれていくため、
職場の雰囲気や人間関係が良くなり、それが生産性を高める

<2)モチベーションアップ>
・ハーズバーグの研究によると、「承認」は動機づけ要因の一つになる。
昇進や昇給といった外発的動機づけも要因も、「承認」と結びついている。

・仕事の楽しさや面白さ、成長、自己実現、達成なども
多くの場合、背後に「承認」が働いている。
(ただし、このプロセスは説明されていないため、本書で検討)

<3)離職の抑制>
・日本での大量退職の理由を、追跡調査で調べたところ、
その理由は金銭ではなく、多忙なため上司や先輩が認めてくれなかったことを
理由としてあげる者が大半であった。

・離職した教師と、離職しなかった教師を比較したところ、
離職しなかった教師の多くは、「同僚からの承認」が行われていたところに特徴があった。

・ハーズバーグの研究では承認は「動機づけ要因」に分類されているが、
「衛生要因」としての要素もかなり含んでいることがわかる。

<4)メンタル・ヘルスの向上>
・看護師を対象に行った研究によると、
”他人からの承認が自己効力感の重要な構成要素”だということが
明らかになっている(小野,2007)

・そして自己効力感が高い人は比較的低い人よりストレスが低く、
うつ状態や不安が少ない傾向が見られる(鈴木,2002)

・自己効力感がバーンアウト(燃え尽き症候群)の抑止に
効果があるという先行研究もある(久保,2004)

<5)不祥事の抑制>

・不祥事の抑制にも承認が一定の効果を持つのでは、と考えられている。
理由として、「職務的自尊心」を持つ人は違反をしにくい、という(岡野,今野,2006)

・「職務的自尊心」と定義された因子の因子負荷量が高い質問を見ると
「自分の職業が社会的に認められている」「人々の役に立っている」「自分の働きが同僚や上司に認められる」など
まさに承認そのものを意味する内容が含まれている。

・よって、承認が職務的自尊心を高め、
不祥事の抑制に繋がる可能性がある、と考えられる。

※参照:太田肇(2011)『承認とモチベーション』.同文館出版 P38-45

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(ここまで)

とのこと。

こうして並べてみると、

承認の効果を改めて
考えさせられるように思います。

■とはいいつつ、

プラスの側面だけではなく

「承認の逆効果」

もあります。

その代表的なものは
『アンダーマイニング効果』です。

アンダーマイニング効果とは、

仕事そのものに動機づけられているときに
(=内発的モチベーションがあるときに)

金銭などの外的報酬を与えられると
内発的モチベーションが下がる場合がある、

というデシらの研究でわかったことです(Deci,1975)



これまでそれ自体が楽しくて
無料でやっていたことでも

お金(外的報酬)をもらうようになってしまうと
その外的報酬がなくなったときに、

なんとなくやる気が下がってしまう、
モチベーションが下がってしまう、、、

という作用のことです。

■つまり、

「承認」は金銭と同じとは言わずとも、
外的報酬のような性格を持ちうる、

ということ。

そして、

「褒められる」ことを目的として
仕事を行うようになってしまうと、

自分からその行為を楽しむ
内発的モチベーションが低下する可能性もある、

となるわけです。

■ゆえに、

承認の逆効果の可能性を知りつつ、
「承認」を使う事が重要である、

といえそうです。

では具体的に、
どうすればよいか?

当然ながら
「自分を思い通りに操るに褒めている」と
思われてはNGです。

たとえ「承認」が
外的報酬としての色を持っていたとしても、

「有能感」や
「自己決定の情報」(自分で決めていると感じられること)

に繋がるのであれば

それは「自己効力感」へと繋がり、
内発的モチベーションを高める、

ということがわかっています。

■ゆえに、「承認」は

『相手の能力に対する自信を高める』

ことが重要であり、

相手の行為が
どのような業績、貢献、
能力の証明につながっているのかを

具体的な事実、客観的な情報に基づいて
伝えることがポイント、

となるようです。

■、、、ということで、

前半はここまで。

後半は、この「承認」について
具体的に組織で行った実験がありますので、
そのお話をご紹介させていただければと思います。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。

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<今週の一冊>

『承認とモチベーション』(前半)

太田 肇(著)

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