エグゼクティブ・コーチングとはなにか(前編) ーその定義と特徴/レビュー論文よりー
(本日のお話 2568字/読了時間3分)
■おはようございます。紀藤です。
昨日はIT企業の中堅社員の皆様を対象とした
リーダーシップ研修の実施でした。
*
さて、早速ですが本日のお話です。
「レビュー論文」というものがあります。
これは、過去に実施された研究を検証し、
先行研究の知見をまとめている論文のことです。
その分野における全体感がわかり、
非常に価値ある論文とされています。
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そして本日のテーマ
「エグゼクティブ・コーチング」
にもあります。
論文を検索すると、以下のものが
レビュー論文の1つとして出てきました。
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Feldman, Daniel C., and Melenie J. Lankau. 2005.
“Executive Coaching: A Review and Agenda for Future Research.” Journal of Management 31 (6): 829–48.
(エグゼクティブ・コーチング :レビューと今後の研究の課題)
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Google Scholarだと引用数842と、
最も多い引用件数でした。
今日は、この内容のまとめと、
そこからの学びを皆様にご共有いたします。
少し長いので、前半・後半にわけて
お伝えできればと思います・
それでは参りましょう!
タイトルは、
【エグゼクティブ・コーチングとはなにか(前編) ー定義と特徴/レビュー論文よりー】
それでは、どうぞ。
■エグゼクティブ・コーチング。
この手法は、企業において
エグゼクティブトレーニングに代わるものとして
急激に普及してきた、といいます。
一方、この言葉は様々な著者によって、
様々に定義をされています。
言ってしまえば、
「エグゼクティブ・コーチングやってます」
といえば、それで
エグゼクティブ・コーチングになってしまう。。。
しかし、エグゼクティブには
独自の状況があるわけです。
経営層や上級管理職を対象とした場合
いわゆるパーソナル/ライフコーチングと
違っているところもあるはず。
■そこで、本論文では、
以下を明らかにするためにまとめられています。
**
<本論文の目的>
a)エグゼクティブ・コーチングを定義し、他の概念と区別する
b)エグゼクティブ・コーチングから得られる可能性を明らかにする
c)コーチングのプロセスがいかに、なぜ機能するかについて複数の理論の視点を統合する
d)エグゼクティブ・コーチングの効果を決定するかもしれない個人、状況、組織上の変数を明らかにする
**
そして、以下エグゼクティブコーチングについて
簡単に特徴をまとめたいと思います。
1)エグゼクティブコーチングの定義
2)エグゼクティブ・コーチングの特徴
3)エグゼクティブ・コーチにふさわしい人はだれか
について以下、論文よりまとめてみます。
(ここから)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
<1)エグゼクティブコーチングの定義>
◯ミドルレベルやシニアレベルのマネジャーの行動を変えることに特化した介入
・最も広いレベルでのコーチングの定義は
「人々が自己開発し、より効果的になるために必要なツール、知識、機会を備えるプロセス」とされるが、
その中でもエグゼクティブ・コーチングは、ミドル・シニアレベルのマネジャーの行動変容に特化した介入である
◯フェルドマン(2001)の定義
a)仕事に関する問題について1対1のカウンセリングを行うこと
b)エグゼクティブの長所と短所に関する360°のフィードバックを出発点とする
c)エグゼクティブの現職での有効性を高めることが目的
**
<2)エグゼクティブ・コーチングの特徴>
◯エグゼクティブ・コーチの特徴
*アプローチ:
技術的な専門家の役割を担わず、伝統的なビジネスコンサルティングの契約も結ばず、
特定のビジネスイニシアチブに関する提言も行わない (Miller & Hart, 2001)。
*目標:
短期的に行動を変えること、
長期的に感情を変えることではない(Feldman,2001、Palmer,2003)
*対象(以下3パターンが多い):
1)過去に高い業績をあげたが、その行動が現在の職務要件を妨げている、または十分ではないエグゼクティブ
2)エグゼクティブレベルへの昇進を目指しているが特定の能力が不足しているマネジャー
3)事業の急速な成長に対処するための指導方法に関する助言を求めるエグゼクティブ
*コーチングの期間:
通常6~18ヶ月。非公式に発展ではなく、正式に契約されたもの。
コーチは部外者であることが多い。
◯エグゼクティブコーチングとキャリアカウンセリングの違い
*キャリアカウンセリング:
自分の長所と短所を見極め、外部の労働市場で自分にあった仕事を見つけるためのもの。
仕事の好み、価値観、興味、個人的な人生の関心事などをより包括的に調べる。
*エグゼクティブコーチング:
エグゼクティブの仕事に関連するスキルや能力だけに焦点を当てる(Feldman, 2001年)。
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<3)エグゼクティブ・コーチにふさわしい人はだれか>
◯エグゼクティブ・コーチの2タイプ
・タイプ1)心理学者:
心理的ダイナミクスや成人の発達に関する特別な訓練、
性格やパフォーマンスの評価に関する理解、クライアントとの厳密性や信頼関係を構築/維持するスキルがあるため
・タイプ2)エグゼクティブが活動するビジネスコンテキストに精通しているコーチ:
リーダーシップ、ビジネス分野、経営原則、組織政治を理解することが
エグゼクティブ・コーチの重要なコア・コンピテンシーとみなすため
◯エグゼクティブ・コーチのアカデミック・ビジネス経験
・60人のエグゼクティブ・コーチの調査によると、
回答者45%が博士号を持ち、90%がビジネスまたは社会科学の修士号を持っている。
・コーチの80%は35歳から55歳。平均24年の職務経験。
・社内コーチとして組織に雇用されている人は7%。
残り93%はコンサルティング会社に雇用されているか自営業者であった。
◯エグゼクティブ・コーチにとって重要な資格とは
・最も多く挙げられた基準は、以下の5つだった。
・心理学の大学院でのトレーニング。
・ビジネスでの経験や理解
・コーチとしての定評
・傾聴のスキル、
・プロフェッショナリズム(知性、誠実さ/正直さ、機密性、客観性)
※Feldman, Daniel C., and Melenie J. Lankau. 2005.
“Executive Coaching: A Review and Agenda for Future Research.” Journal of Management 31 (6): 829–48.
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(ここまで)
とのこと。
■改めて論文から
その特徴を整理してみると、
より通常のコーチングと比べて
必要な介入方法、経験などが
違ってくることに気が付きます。
明日は、
「エグゼクティブコーチングの
標準的なアプローチの流れ」
について引き続き、論文より
お伝えさせていただければと思います。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
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<本日の名言>
もし、私がより遠くを見ているとしたら
それは、先人の肩に経っているからです。
アイザック・ニュートン
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