「ポジティブ心理学」と「コーチング」のつながりを紐解く
(本日のお話 3008字/読了時間4分)
■こんにちは。紀藤です。
キンモクセイの香りが、
近くを歩いていると公園から
強く感じられる季節になりました。
日も短くなって、秋、そして気づいたら
冬になっていくのだろうな、とじんわり感じる今日この頃。
1日1日大切に過ごしたいものです。
*
さて、本日のお話です。
大学院の研究、そしてお仕事でも
1on1、コーチングなどを探求しており、
加えてストレングス・ファインダーなど
「強み」に基づいたアプローチを使って
企業研修などもさせていただいています。
そんな”強み”そして
”コーチング”が立脚している学問領域が
「ポジティブ心理学」と「コーチング心理学」
とされています。
その2つの領域の世界の権威の方々が、
この概念や考え方を概観するための専門書が
日本語に翻訳されているのを発見しました。
それが非常に面白い(学びになる)と
感じております。
こんな書籍です。
『ポジティブ心理学コーチングの実践』
(スージー・グリーン&スタファン・パーマー/編、西垣悦代/監訳)
*
専門書ではありますが、
この領域(コーチングや強みなど)に
興味を持たれている方々にとって
有用な内容になるのだろう、
と感じておりますので、
今日はその本の中から
学びをご共有させていただければと思います。
それではまいりましょう!
タイトルは
【「ポジティブ心理学」と「コーチング」のつながりを紐解く】
それでは、どうぞ。
■ポジティブ心理学という
学問分野があります。
約20年前から
進展してきているこの学問。
そのテーマは
・人生の満足度/幸福、
・動機づけ/達成
・楽観性
・組織における市民性/公平性
とされています。
キーワードは
”持続的な幸福”
(Flourish=繁栄)
とも言います。
■確かに、誰もが
「幸福になりたい」ものだと思います。
幸せか不幸せで言えば、
幸せのほうがいいと
大多数の方は答えると思われますし、
声を大にせずとも、
心のどこかでそれを願っているのでしょう。
■特に昨今は、
経済的な成功などの
”物質的な豊かさ”から、
人とのつながり、達成感、満足感など
”精神的な豊かさ”が大切にされている文脈もあり、
このようなポジティブ心理学の領域が、
ますます注目されているのかと。
■ちなみに、この領域、
”「ポジティブ心理学」という領域は
「コーチング心理学と」相補的であると定義”
(Green,2014)
されております。
どちらも少しずつ注目されていますが
このつながりを整理することで、
強みを通じたアプローチの目的や
コーチングのアプローチの目的が、
私自身改めて整理されたように思いました。
ということで、
上記ご紹介した著書より、
その内容についてまとめてみたいと思います。
以下、まとめでございます。
(ここから)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
【ポジティブ心理学コーチングの実践 まとめ
ー第1章 ポジティブ心理学コーチング より】
<(1)「ポジティブ心理学」と「応用ポジティブ心理学」の違い>
◯「ポジティブ心理学」の定義
”人を最適な機能に導く状況と過程に関する科学”
(Gable&Haidt,2005)
◯「応用ポジティブ心理学」の定義
”ポジティブ心理学の研究を実践へと適用する学問”
{ちょっと補足&解説}
・ポジティブ心理学は、”科学的な探求”の学問ですが、対して、
応用ポジティブ心理学は、”それをどのように活かすのか?”を
研究する学問として、区別されてきています。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
<(2)「ポジティブ心理学」と「コーチング心理学」の違い>
◯ポジティブ心理学の定義
・同上
◯コーチング心理学の定義
”コーチング文脈における行動科学のシステマティックな応用で、
個人、集団、及び組織における
人生経験、仕事のパフォーマンス、およびウェルビーイングの増進”
(Grant,2007a)
{ちょっと補足&解説}
・「コーチング心理学」の目的は3つあります。
1、人生経験の増進、
2、パフォーマンスの向上
3,ウェルビーイング(幸福)の増進 とあり
最後がポジティブ心理学と特に親和性が高いものです。
・そして、「コーチング心理学」は「応用ポジティブ心理学」であると定義付けられています。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
<(3)「応用ポジティブ心理介入」と「エビデンスベースドコーチング」の違い>
◯応用ポジティブ心理介入(PPIs)
・応用ポジティブ心理学の研究を活用した介入施策を
「応用ポジティブ心理介入(PPIs)と呼びます。
その定義は以下のように示されています
*「応用ポジティブ心理介入(PPIs)」の目的=『PERMA』の養成
Pleasure:喜び
Engagment:エンゲージメント
Relationship:関係性
Meaning:意味
Achivement:達成
◯エビデンスベースドコーチング(EBC)
・科学的な理論と研究に基づくものであることを明示されたコーチングのこと。
根拠に基づかない「普通のコーチング(coaching as usual)」とは一線を画す
・”コーチングをいかに伝えるかについて、
現時点における再考の知見が実践の専門家の判断に統合され
知的で良心的に用いられたもの”と定義される。(Grant&Stober,2006)
*「エビデンスベースドコーチング(EBC)」の目的=『目標達成』
個人にとって意味のある目標を設定し、繁栄することを奨励する
{ちょっと補足&解説}
・応用ポジティブ心理介入(PPIs)が、
「PERMA」と呼ばれる喜びやエンゲージメント、関係性等を
最終的な目的としており、その一部が「達成」と定義されている一方、
エビデンスベースドコーチング(EBC)は
目標達成を最終的な目的としているところに特徴があります。
EBCの観点からすれば、
コーチングを通じて目標達成をする道のりにウェルビーイングがあり、
PPIの観点から見れば
目標達成をすることによりウェルビーイングのプロセスの一部分が満たされる、
とも言えるかと思います。
※参考:『ポジティブ心理学コーチングの実践』P23-48
(スージー・グリーン&スタファン・パーマー/編、西垣悦代/監訳)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
■さて、まとめてみましたが、いかがでしょうか。
この領域の厳密な分け方も、
まさに専門書、という感じで
場合によっては「だからなに?」と
ツッコミたくなるかもしません。
しかし、
このように分けて考えることは
理解を深めてくれると感じます。
例えば、
・普通のコーチング(coaching as usual)
・エビデンスベースドコーチング(Evidenced based coaching)
などもそう。
同じコーチング、といっても
「定義の仕方の厳密性は、
行動や考え方の裏にあるものの深さと広さ」
に現れます。
「普通のコーチング」なのか、
(傾聴と承認と質問がコーチングです)
「科学的知見と実践に基づいたエビデンスベースドコーチングです」
(例:コーチングをいかに伝えるかについて、
現時点における再考の知見が実践の専門家の判断に統合され
知的で良心的に用いられたもの”と定義される。(Grant&Stober,2006))
なのかは、
どちらも意味はあるものであるとはいえ、
その背景にあるものの深さと量は、
検討に携わった人の数も労力も
違う”質”になるのではないか、
と個人的に感じます。
■上記にまつわる定義や目的も
先人の世界中の研究者たちが、
頭を捻りながら検討を重ねたものについて、
敬意を持って探求すること、
その意味を考えることは、
関わる人にとっても
自分の持論と重ねることは、
意義があることなのだろう、
そんなことを感じつつ、
この書籍を読んでおりました。
ということで、本日は
” 「ポジティブ心理学」と
「コーチング」のつながりを紐解く
ということで
その共通性、また違いを
ご紹介させていただきました。
また別の項目についても、
改めてご紹介させていただければ幸いです。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
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<本日の名言>
一方は「これで十分だ」と考えるが、
もう一方は「まだ足りないかもしれない」と考える。
そうしたいわば紙一枚の差が、大きな成果の違いを生む
松下幸之助
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