"自分でやろう!"という動機づけのために必要なこととは? ー「自己決定理論」の3つのポイントー
(本日のお話 3105字/読了時間4分)
■こんにちは。紀藤です。
昨日は2件のアポイント。
1件のコーチングの実施でした。
また夜は10キロのランニング。
*
さて、本日のお話です。
コーチングに関わる理論の中で、
『自己決定理論』というものがあります。
本日はこのお話について、
論文からの学びを皆様にご紹介させて
いただければと思います。
それでは早速参りましょう!
タイトルは
【"自分でやろう!"という動機づけのために必要なこととは? ー「自己決定理論」の3つのポイントー】
それでは、どうぞ。
■「人は誰かに言われたことは
やる気にならないけど
自分で決めたことはやる」
生き物だと思います。
*
あるある話で
小学校やら中学校の頃、
母親「宿題しなさい」
↓
子「いまやろうと思っていたのにー!
言われたから、やる気なくなった、、、」
みたいな現象は、
どこそこの家庭であったのでは、と思います。
(ちなみに、我が家は
宿題しなさい、という問いはなかったので、
見事にやらずに先生に中学時代に怒られた記憶があります。
、、、どうでもいい話ですが)
■さて、そんな
”人は自分で決めたいもの”
というお話。
なんとなく感覚で
理解されているところかと思います。
実際に「自分で決めること」は、
・動機づけを促進させたり、
・より行動的になったり、
・好奇心が触発されたり、
そんな作用があるのですが、
実際に理論としてはどうなのでしょうか。
■この現象について
1990年頃から研究が始まった
デシとライアンによる
『自己決定理論』
が、伝統的な理論として知られています。
この自己決定理論にまつわる論文は、
たくさん存在するのですが、
今日はその中でも、
それらの先行研究をレビューしており、
また最も引用数が多い以下の論文、
(引用数:54201!多いですね)
**
ライアン&デシ(2000)
[ 自己決定理論と内発的動機づけの促進、社会的発展、幸福感 ]
※原題:Ryan,R.M.,and E.L.Deci(2000)
”Self-Determination Theory and the Facilitation of Intrinsic Motivation, Social Development, and Well-Being.”
**
より、ポイントを紐解いてみたいと思います。
ということで早速以下、
まとめでございます。
(ここから)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
【論文まとめ_自己決定理論と内発的動機づけの促進、社会的発展、幸福感(ライアン&デシ,2000)
<はじめに>
・人間は好奇心溢れて、活力に溢れ、
行動的で学ぼうと努力し、自分のために行動することができる。
そのように主体性、献身性を発揮していることは、
非常にポジティブな特徴を示している。
・一方、人間の精神は衰えたり、打ち砕かれたりすることがある。
個人が成長や責任を放棄することもある。
無気力、疎外感、無責任や子供や大人の例は枚挙にいとまがない。
何時間もテレビの前でぼんやり過ごす人、仕事をしながら無気力に週末を待っている人、、。
・これは生物学的な気質の違いではなく、
”社会的環境に対する幅の広さ”と言える。
では、一体何がそれらを規定しているのかを見ていきたい。
ーーーーーー
<自己決定理論とは>
・人間の動機づけとパーソナリティに対するアプローチ。
自己の動機づけ、社会的機能、個人の幸福を妨げたり、
促進したりする環境要因について検証した理論のこと。
ーーーーーー
<本論文のテーマ>
自己決定理論によって導かれた研究をレビューする
1,「内発的動機づけ」について検討
:学習と創造性に対する人間の傾向の典型的な現れである、内発的動機づけについて検討する。
内発的動機づけを促進したり抑制したりする条件を特定する研究の考察をする
2,「自己調整」の分析
:社会的価値や外発的偶発性をどのように取り込み、
個人的価値や自己動機に変換していくかという自己調整の分析をする
3,「健康や幸福」に与える影響に注目
:心理的欲求充足が「健康や幸福に与える影響」を直接的に検討した研究に注目する
ーーーーーーー
<内発的動機づけと、認知的評価理論>
◯「内発的動機づけ」とは
・内発的動機づけとは、新しさや挑戦を求め、
自分の能力を伸ばし、発揮し、探求し、学ぼうとする固有の傾向のこと。
・発達心理学者は、生まれたときから、最も健康な状態の子どもは、
特定の報酬がない場合でも、活動的で、好奇心が強く、遊び好きであることを認めています(Harter,1978)
・内発的動機づけという概念は、
同化、習得、自発的な興味、探索に対するこの自然な傾きを説明するもので、
認知および社会的発達に非常に重要であり、生涯を通じて楽しみと活力の主要な源泉となる。
*
◯「内発的動機づけ」に関する考察
・人間には内発的動機づけの傾向が十分に備わっているにもかかわらず、
この固有の傾向を維持・向上させるには、支持的条件が必要であることが明らかになっている。
なぜなら、この傾向(内発的動機づけ)は、さまざまな条件によってかなり容易に破壊されてしまうからである。
*
◯『認知的評価理論』(Deci&Ryan,1985)
・認知的評価理論(CET)は、自己決定理論(SDT)の下位理論として
内発的動機付けの変動を説明する要因を特定することを目的とした。
・認知的評価理論(CET)は、内発的動機づけを促進したり損なったりする
「社会的・環境的要因の観点」から組み立てられており、以下の3点に注目している。
1)有能感(competence)
:能力があり、熟練しており、有能であり、そして熟達していることへの欲求。
行動時に有能感をもたらす社会文脈上の事象(フィードバック、コミュニケーション、報酬など)が
内発的動機づけを高める、としている。
2)自律性(autonomy)
:自分の決断や行動を自由に選択し是認する欲求。
また”自分の行動が自己決定的である”と経験しなければ内発的動機づけは高まらない。
つまり、目標の押し付け、脅威、締め切りなども、内発的動機づけを低下させる。
3)関係性(relatedness)
:互いに友好的、親密、思いやり、励まし、他者との楽しい社会関係に対する欲求。
安心感や関係性で特徴づけられる文脈で、内発的動機づけがより盛んになるとされる。
上記が満たされれば、自己動機づけと精神的健康が向上し、
阻害されれば、動機づけと幸福感が低下するという仮説が導き出された。
※Ryan,R.M.,and E.L.Deci(2000)
”Self-Determination Theory and the Facilitation of Intrinsic Motivation, Social Development, and Well-Being.”
The American Psychologist 55 (1): 68–78.
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(ここまで)
■さて、いかがでしょうか。
改めてまとめてみると、
・「自己決定理論」とは、
動機づけ、幸福度などを規定する環境要因について
紐解いている理論のことである。
・「自己決定理論」には、
下位理論である{認知的評価理論}がある。
・{認知的評価理論}では、
1,有能感 2,自律性 3,関係性
の3つが規定されている。
という大枠のお話でした。
■実際にこうして詳細を見てみると
「自己決定理論」
という表面的な言葉の雰囲気からは、
見えてこない部分も見えてくる気がします。
例えば、冒頭にお伝えした、
「自己決定が大事」
とはあくまでも
”2、自律性”の部分に注目しています。
しかし、内発的動機づけを高めるためには
それ以外にも、
1,有能感
3,関係性
などの影響もあることがわかっています。
■と、したときに
たとえ最終的に「自分で決めている」としても
その社会的な文脈(背景)において
・肯定的なフィードバックがなかったり、
・安心感がある職場の関係性がなかったり
・口に出さずとも、実は強制的な目標だったり、
となると、表面をなでただけで、
トータルとして「自己決定理論」の
重要な要素をカバーしていない、
となります。
つまり、
”自分で決める”のは
最終コーナーを回ってからであり、
その背景には様々な心理的な欲求、
あるいは支援が関わっているからこそ、
「いい感じで自分で決めて、
やる気がモリモリ出る」
となるわけです。
このあたりの理論としての
全体の有機的な繋がりを理解することが
ポイントなのでしょうね。
■ということで、本日は
「自己決定理論」のお話でした。
ご参考になれば幸いです。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
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<本日の名言>
「働くこと、働かされること」を楽しまなければならない。
これはすべてのビジネスマンに言えることだ。
レイ・クロック
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