"やらされ感"が"やる気"につながっていくメカニズム ー外発的動機づけの内面化プロセスー
(本日のお話 2405字/読了時間4分)
■おはようございます。紀藤です。
さて、本日のお話です。
昨日は「自己決定理論」なる
お話についてお伝えさせていただきました。
※こちら↓↓
"自分でやろう!"という動機づけのために必要なこととは?
https://1lejend.com/b/detail/HSfoIRnMfw/4312318/
今日もこの内容の続きについて
お伝えできればと思います。
それでは早速まいりましょう!
タイトルは
【"やらされ感"が"やる気"につながっていくメカニズム ー外発的動機づけの内面化プロセスー】
それでは、どうぞ。
■「人は言われたことはやりたくない。
でも自分で決めたことはやる(やろうとする)」
基本的に、人の動機とは、
このようなものであると言えます。
自分自身が、
興味をいだいていて、
好奇心が掻き立てられて、
新しく挑戦してみたいと思える、
みたいなことであれば、
まさに”内発的動機づけ”が沸き起こり、
自分でやろう!と決められるのでしょう。
■、、、といいつつ。
こういうケースもあると思われます。
「いや、別にやりたいこととかないっす」
ちーん。
という感じですが、
さて、こういった時どうすればいいのか、
という話。
しかし、このケース、
市井ではよく見受けられると思われます。
小学生では
「宿題やりたくない、遊んでいたい」
でも宿題やらなきゃいけない。
でも、自分から「やろう」という気持ちには
なかなかなれない。(ありますね)
*
社会人になってからも、
「これがチームの目標だから」と言われるが、
いまいち乗り気にならず、でも仕事なのでしぶしぶやる、
みたいに。
■では、そんな人達は、
「内発的動機づけ」に向かうことができるのでしょうか?
そんな中で興味深い考えがあります。
『外発的動機づけの内面化プロセス』
という考え方です。
平たく言えば、
”最初は外部からやらされていたけど、
だんだん面白くなってきて、
自分で決めてやるようになる”
ということ。
正式に言えば、
「外部にあった規制を
個人が自分の内に取り込み
自己決定できるようにするプロセス」
です。
■例えば、
先述の小学生の宿題でも、
・最初はやりたくない。
でもやらなきゃいけない。
母に言われてしぶしぶやる。(=外部からの規制)
↓
・しかしプリントをやって
先生や母親から「できたじゃん!すごい!」
と言われていたらその気になってきた。(=規制を自分の内に取り込む)
↓
・ゲームみたいな感覚になってきて、
自分から進んで次のプリントをやるようになった(=自己決定する)
というイメージ。
■そして、この
「外発的動機づけの内面化」は
以下のようなプロセスで進むとされています。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
『”外発的動機づけ”の内面化のプロセス』
(↑↑自己決定は低い)
<1)外的調整(External Regulation)>
・外発的動機づけの典型的なケース。
人々の行動は特定の外的条件によって制御される。
具体的な報酬を得るため、あるいは罰をさけるために人は行動する。
<2)取り入れ的調整(Introjected Regulation)>
・個人が外部の規制を取り込み、それを同じ形で維持している状態。
つまり「言われたことを消化せず、丸のみしている」状態。
失敗したら「上司から言われたんで」となるパターン。
<3)同一化的調整(Identified Regulation)>
・個人が行動することの価値を確認し、受け入れている状態
外部からの規制を、自分なりに解釈し内面化している。
例)自分の健康のために、自分で運動しています。
<4)統合的調整(Integrated Regulation)>
・外発的動機づけの最も完全な形。
行動の重要性を認識するだけではなく、
その認識を”自己の価値観やアイデンティティの他の側面と統合”している。
(↓↓自己決定は高い)
※参考)Deci.Ryan(2000)
”The What and Why of Goal Pursuits: Human Needs and the Self-Determination of Behavior”
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(ここまで)
とのこと。
※ちなみに、上記を
「無動機」と「内発的動機づけ」で挟んだモデルを
『自己決定連続体』(The self-determination continuum)
(Deci&Rian,1985)
として紹介されています。
・無動機 or 外発的動機づけ or 内発的動機づけ)
・動機に影響を与えているものは何か(因果関係)
・関連するキーワードはなにか
について「動機づけの全体像」が
可視化されておりわかりやすいです。
■と、なんだか、
かたい言葉での説明になってしまいましたが、
要は
”最初は外部からの規制から始まっても、
だんだんと自分の中に取り込まれていく”
プロセスがある、ということです。
■そして、興味深いポイントが、
大きく2つあります。
まず1つ目が、
”「外発的動機づけの内面化のプロセス」は
自然な発達傾向である”
とされていること。(Chandler and Connell,1987
外から強制されていた行動も、
年齢とともに次第に内面化されていくことがわかっています。
たとえ最初は強制力から始まっても、
人はそれに適応し、自分のものにすることができるようです。
そして2つ目は、
”「外発的動機づけの内面化のプロセス」には
効果的に機能させるための支援が必要”
とされていることです。
具体的には、
基本的心理的欲求(有能感、自律性、関係性)が
満たされることで内面化が進みやすくなる、
というのです。
*
例えば、
小学校高学年の生徒の保護者に対して
親が子どもの学業に対して
自律的支援、対人的な関与、最適な構造化を
行っているかを調べたところ、
学校関連活動の規制を内面化している度合いに
直接影響を与えていることがわかった
という研究もあります。
(Grolnick and Ryan,1989)
つまり、
「自律支援」(自分でできるように支援
「対人的な関与」(応援や支援、ポジティブなフィードバック)
「最適な構造化」(自分でできるような習慣づくり」
などを行うことが、動機づけについても
ポジティブな影響を与えた、ということ。
■誰もが最初からやる気に
溢れているとは限りません。
内発的動機づけは
確かに望ましいし、期待したいところですが、
もしそれが難しい場合、
最初は報酬や罰からスタートしたとしても
きちんとした支援があれば、
それはその人の「内面」に組み込まれていきます。
そして最終的には「内発的動機づけ」へと
近づいていくのです。
■なんてルートもあると理解すると、
「やりたいこと、別にないっす」
という場合に対しての対応幅も
広げられそうな気がしますね。
ご参考になれば幸いです。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
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<本日の名言>
「欲は少ないほどよく、まじめにやれば幸福になれる」と
昔から言われてきたが、”欲が少ない”ということ自体が、
間違った真理であった。
リヒテンブルク
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