「現在バイアス」に気をつける ー論文「仕事の先延ばしを防ぐためには、締め切りを設けない」より-
(本日のお話 1995字/読了時間2分)
■おはようございます。紀藤です。
昨日は1件の個別コーチング。
また2件のアポイント。
その他研修プログラムの企画でした。
*
さて、本日のお話です。
今月号のハーバードビジネスレビューに
こんな論文が紹介されていました。
タイトルは
『仕事の先延ばしを防ぐには締め切りを設けない』
なるうものです。
簡単にお伝えすると
「仕事の先延ばしを防ぐために
締め切りを”設ける”」
考えをすることが多いようですが、
この研究によると、
「先延ばしを防ぐためには
締め切りを”設けない”」
ほうがよい(!)とのこと。
今日はこの研究内容とそこからの学びについて、
皆様にご共有させていただければと思います。
それでは早速まいりましょう!
タイトルは
【「現在バイアス」に気をつける
ー論文「仕事の先延ばしを防ぐためには、締め切りを設けない」より-】
それでは、どうぞ。
■「仕事の締め切り」があるとき、
皆様はどのように
自分自身を管理しますでしょうか?
ちなみに私の場合、
・どんどん仕事を入れまくって
「ケツカッチン」にして(古い?)
自分を追い込んでいく
あるいは、大きなプロジェクト(論文)などでは
そういうやり方だと痛い目を見ますので、
・周りに宣言する or 巻き込む or 巻き込まれる
なる「衆人環視」の力を使い
小さな締め切りを設けて進めていく
というパターンが多い気がします。
意思が弱いもので、
追い込まれないとなかなか行動できません(汗)
(皆様はいかがでしょうか)
■さて、そんな締め切りの感覚と、
真逆のタイトルの研究が
今回のご紹介のこの論文。
*
ではどんな事が書かれているのでしょうか?
この研究の概要と結果を
簡単にまとめてみます。
(ここから)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
論文まとめ『仕事の先延ばしを防ぐには締め切りを設けない』
<研究の目的>
・締め切りまでの時間と
仕事を終らせることの関係を調べること
<研究の対象者>
・被験者はニュージーランドの選挙人名簿から
無作為に抽出した3276人
<実験内容>
1)短いオンラインアンケートに回答してもらい、
報酬の代わりに10ドル慈善団体に寄付をする、という実験
2)3276人の被験者は3つのグループに分けられた
・「回答期限は1週間」
・「回答期限は1ヶ月」
・「回答期限なし」
<結果>
・それぞれのグループの回答率を調べると
以下の通りとなった。
・「回答期限は1週間」 6.6%
・「回答期限は1ヶ月」 5.5%
・「回答期限なし」 8.3%
★すなわち「回答期限なし」が最も回答率が高く
「回答期限が1ヶ月」が最も回答率が低かった
※補足)
・特に「回答期限なし」のグループは、
3日以内に回答した人が他のグループより多かった
・一方、「回答期限は1ヶ月」としたグループは
52日後や145日後に回答がある場合もあった
※元論文:Meeker, Amy, and Maroš Servátka. 2022.
”To Keep People from Procrastinating, Don’t Give Them a Deadline.”
Harvard Business Review 2022 (September-October).
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(ここまで)
とのこと。
■ふーむ、なるほど、、、。
この実験の場合、
回答期限がない場合の方が、
回答率が上がる結果になったようです。
ちなみに、なぜそうなるか?
という考察は、
”締め切りまでの時間が長いと
何回も先延ばしにして、
結局はすっかり忘れてしまう”
という現象が働いているのでは?
と述べています。
■先延ばしに関わる人の特性の中に、
『現在バイアス』
があると言われます。
これは
”いまこの瞬間を、未来より
不釣り合いに重要だと感じる傾向”
といいます。
ある仕事を終えるのに3時間かかるとして
それは未来であろうが変わらないのに、
いまよりも先のほうがなんとなく小さく感じられるのです。
(今の3時間より未来の3時間の価値のほうが小さく感じられる。
あるいはそんなに時間がかからないように感じる)
ゆえに、人は先延ばしにするそう。
ギクリ、、、です(汗)
■もちろんこうした
『現在バイアス』の存在に対して
・何があるかわからないから
さっさと終わらせておこうという人、もいれば
・なんとかなるっしょと無邪気に先送りする人
もいるようです。
ただ、いずれにせよ
・「現在バイアス」が仕事を先送りにする一つの要因となっている
↓
・「回答期限が1ヶ月」=「1ヶ月後までに答えればいい」と思う
↓
・何回も先送りにするうちに、忘れてしまう
というメカニズムは想定されるよう。
(うーん、耳が痛い)
■、、、しかし、
この研究はあくまでも
ある文脈における実験です。
つまり、今回の実験は
・自分のためではない
・慈善団体に10ドルの寄付をする
という文脈においてです。
このことから
「期限を設けない戦術」が有用である文脈とは
1)その仕事が主に主人以外の誰かのためになるもの
2)緊急性が明確に示されている場合
(例:自然災害後の献血、ウクライナからの避難民を支援する団体への寄付など)
に効力を発揮するようです。
■ということで、
・一大プロジェクトを終わらせる
・複雑で緊急性の高い仕事を行う
みたいなときは
やっぱり締め切りを設けて
ちょっとずつ進めていかないと
よろしくないようである、
というお話でした。
どんな戦術も、文脈に応じて
使える、使えないがわかれるようです。
ただ、「現在バイアス」は
仕事の先送りの際に気をつけたい
キーワードであるな、、、
そんなことを感じた次第です。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
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<本日の名言>
制約が多いとみんな悩んでいる。
だが、制約があるからこそ、
自分のしたいことを貫くのが本当の行動になる。
岡本太郎
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