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3201号 2022年11月26日

関係学習としてのピアコーチング:3つのステップモデル

(本日のお話 2532字/読了時間3分)


■こんにちは。紀藤です。

さて、早速ですが本日のお話です。

「職場内支援」の領域の中で
同僚による『ピアコーチング』と呼ばれるものがあります。

今日はこのピアコーチングについて
論文より学びをご共有させていただければと思います。

それでは早速まいりましょう!

タイトルは



【関係学習としてのピアコーチング:3つのステップモデル】



それでは、どうぞ。



■職場内でも「1on1」と呼ばれる
上司と部下の対話は人材開発に用いられています。

1on1もマネジリアルコーチングと
呼ばれる上司によるコーチングの一種とされておりますが

職務満足度やパフォーマンス、
組織コミットメントなどに
影響を与えることが知られており

「コーチングは成果に繋がる」

と言えます。



■しかし、物事には副作用もあるもので、
一方、難しい状況もあります。

その1つが

「(コーチングを行う)上司の負荷が大きい」

こと。

しばしば耳にする話として

・部下の数が15人いるので
 コーチングをするだけで時間がなくなってしまう 

・自分もプレイヤーとしての数字責任がある中、
 何人もの部下の1on1は現実的ではない

などあります。。。

そもそもマネジャーは役割がたくさんあるのに、
そこにさらに1on1なりが入ってくると、
その大変さは、想像に難くありません。



■そんな中、本日のテーマである

『ピアコーチング』

は、上司ではなく、

”対等な立場の同僚同士で行うコーチング”

ということで、また別の切り口として
役に立ちそうです。


そして、この「ピアコーチング」について
その特徴と、一つのステップを紹介した論文がありました。

それが、

『ピアコーチングのための関係性コミュニケーション・アプローチ』

Parker, Polly, Ilene Wasserman, Kathy E. Kram, and Douglas T. Hall. 2015.
”A Relational Communication Approach to Peer Coaching.”
The Journal of Applied Behavioral Science 51 (2): 231–52.

という論文です。

この論文では、

・比較的新しいピア・コーチングについての説明
・ピアコーチングの3ステップの紹介
・関係性コミュニケーションのアプローチである協調的管理の理論と統合

について述べられています。



■以下この論文からのポイントをまとめてみました。

(ここから)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

論文まとめ『ピアコーチングのための関係性コミュニケーション・アプローチ』

<ピアコーチングの定義>
・「対等な立場の2人が、特定の課題や問題に対して、
 互いに助け合いながら積極的に参加する援助関係の一種」(Parker,2008)
 
・ピアコーチングの特徴
 1、関係性が対等であること
 2、パワーダイナミクス(地位・権力による影響)
 3、専門的な訓練を受けたコーチではないこと


<ピアコーチングの歴史>
・ピアコーチングは、
 マネジメントや組織行動におけるコーチングのアプローチの中でも
 比較的新しく登場した分野である。

・コーチングは学際的な支援プロセスであり、
 その形態には、公式/非公式、専門家/ボランタリー、短期/長期などの様々あり
 適用される領域も、スポーツ、教育、経営、リーダーシップなど幅広い。
  
・その中でピアコーチングは歴史的に、
 看護、教育、理学療法などの分野で使用されてきた。


<ピアコーチングの成果>
・ピアコーチング活動の成功の尺度として
 ー自己認識の高まり
 ー適応性の向上
 ーより積極的な傾聴と探究
 ーより信頼性の高い効果的な対人関係
 ー効果的なリーダーシップ(Parker,2008)
などが挙げられる。


<ピアコーチングの成否を分かつもの>
1)お互いの関係性
 最も成功する要因はお互いが
 ー「質の高い関係を構築する能力」を持つことと
 ー「そのための時間を十分にかけたとき」である
 
2)実施するコンテクスト
 1人のピアだけがある報酬を得る場合(=競争的な環境)、
 効果的なピアコーチングにつながらない
 
***

<関係学習としてのピアコーチング:3ステップ>

*「関係学習」とは・・・
 私たちは、社会的・文化的に繋がりがあるもの(関係性)に埋め込まれている。
 その関係性を、学習や発達、アイデンティティ、自尊心をサポートするものが
 関係性の実践とされ、そこからの学びが「関係学習」である

*上記の「関係学習」の考えから、
 効果的なピアコーチングを以下の3ステップに整理をした。
 
*効果的なピアコーチングの3ステップ

◯{STEP1 関係構築と良好な関係づくり}
 ・仲間を選び、交際のルールを決める。
 ・自分で選ぶor割り当てるのいずれにせよ、
  マッチングのための良い情報を提供し
  「ピアの選択にピア自身が参加できること」が大事。

◯{STEP2 成功の創造}
 ・具体的に評価される成果を創造する。
 ・コーチングのプロセスを振り返り、両者が共同で築いた進捗を確認する事が必要になる。
  (第三者からの付加した観察&フィードバック、ピアとの関わりを通じた振り返りを行う)
 ・この中で、関係性のスキルや、自分自身の能力についての洞察が深まる。
    
◯{STEP3 スキルの内面化}
 ・ピア間の関係を深める
 ・ピアコーチングを”内面化したスキル”として捉えるようになる。
  (=自己開示、内省的な実践、探究的な質問などが、
   「自分の道具箱」として使えるようになる)

 ※補足:
 このプロセスを経験した参加者は意識的・無意識的に
 質の高いつながりをもたらすプロセスに長けて、
 自然にピアコーチングを行う傾向になる(Parker,2014)


Parker, Polly, Ilene Wasserman, Kathy E. Kram, and Douglas T. Hall. 2015.
”A Relational Communication Approach to Peer Coaching.”
The Journal of Applied Behavioral Science 51 (2): 231–52.

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(ここまで)

とのこと。



■まとめてみましたが、
うーん、実に深いですね、、、。

ピアコーチングの定義や
その効能は理解できます。

ただ難しいのが、

「関係学習」

というお互いの”関係”という
目に見えないものを育て、深める中で
より深い洞察、内省が促され質の高い関係を求める、

という概念です。

わかる気がするんだけど、
文面上だけでは、なかなか実感を持ちづらい、
あるいは本当に再現可能なのかわからない、
複雑なプロセスであると感じました。



■実際の論文には、

・「ジム」と「サビータ」という2人のピアコーチングの事例
・第三者のバルコニービュー
・ストーリーテリングの例
(語られる物語、語られない物語を探究する)

などが紹介されていますが
いずれもお互いの信頼を築き、
自分の中の深い部分をさらけ出し
自己認識を深めることに繋げる、

というプロセスでした。

つまり、

目標設定をする
そのための宣言をし合う
期待を伝えあう

などの現実的なことにフォーカスをする以上に、
お互いの水面下の囚われや信念に
対話を通じて目を向けるプロセス、

ということのようです。


■ということで、以上、
論文の紹介でございました。

「ピアコーチング」といっても、

”関係学習”という枕詞が付くと
またその意味するものが変わると感じました。

実にいろんな登り方があるんだな、、、

とこの世界の広さに
改めて目を凝らすばかりでございます。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
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<本日の名言>

自分には確かな居場所がある。
自分を必要としてくれる場所がある。
その安心感があればこそ、人は強く生きられるのです。

ドロシー・ロー・ノルト
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