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3228号 2022年12月23日

「理想と現実のズレ」をいかに受け入れるか ー論文『理想自己の生涯発達 ー変化の意味と調節捉えるー』より

(本日のお話 2856字/読了時間3分)

■こんにちは。紀藤です。

昨日は2件のアポイント。
また夜はお世話になっている会社の
人事の皆様との忘年会でした。
(皆様、ありがとうございました!)



さて、本日のお話です。

現在、大学院にてキャリアについての授業があり、
その中の課題で「今後の自分」を考えております。

今週が発表ですが、
自分はどうしていくのか、いきたいのか。
そんなことを改めて考えるこの頃です。


そんな中で、
「理想と現実の自己とのギャップ」について
研究をした論文、

『理想自己の生涯発達 ー変化の意味と調節捉えるー』(松岡,2006)

を読み、

自分に当てはめて考えつつ
なるほどなあ、、、

と納得したのでした。

ということで、本日は
この論文からの学びについて
皆様にご共有させていただければと思います。

それでは早速まいりましょう!

タイトルは



【「理想と現実のズレ」をいかに受け入れるか
 ー論文『理想自己の生涯発達 ー変化の意味と調節捉えるー』より】



それでは、どうぞ。



■「理想自己」とは

”人が「こうでありたい」と望む
 自己の方向性の表象である”

とのこと。

すなわち、”ありたい自分像”というやつですね。



■若い時は、
「人は何者にでもなれる!」
と理想高く強く思うものです。

しかし、その思いは年を重ね、
経験を積み、世の中を知るにつれ、
少しずつ変容していきます。


やはり、元々の性質の違いは
あるもので、その存在と、

自分の相対的な立ち位置も
理解が深まっていくものです。

夢を描くことと、実現できること
その中で人は調節をしていくものなのでしょう。
(うーん、わかる)


■そんな、私の独り言的な心の声も
反映された前置きを踏まえて、ですが、

「理想自己」という自己概念が
生涯に亘ってどのように変化していくのか?

について研究をした論文があります。

「理想自己」は自尊心にもつながっている
とても大事な感情ですが、これが若かりし頃から、
歳を重ねるにつれ、どのようになるのか。

非常に気になるところですね。

ということで、早速
内容を見てまいりましょう!


(ここから)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

【論文まとめ『理想自己の生涯発達 ー変化の意味と調節捉えるー』松岡弥玲.(2006)】


<研究の背景>

・人が将来にわたって自己に対する
 肯定的な態度を維持できることの一つに、
 理想自己の変化が関わっているという(Cross&Markus,1991)
 
・年齢とともに、理想ー現実自己のズレが減少していく傾向は、
 喪失を含む加齢による変化の中でも、適応状態を維持するために
 理想自己が調節されていく過程と考えられる。
 
・しかしこのことは実証されていない。
 ゆえに、本研究ではズレが年齢と共に減少していく変化が
 適応状態と結びついているのかを検討する。

**

<研究の目的>

本研究の目的は,

(1)理想-現実自己のズレが年齢と共に減少していく変化と,
 自尊感情が生涯にわたって維持される傾向とが関係しているかどうかを検証すること
 
(2)理想自己の実現可能性の生涯発達変化を捉えること,

(3)ズレを減少させる方略(肯定的解釈、粘り強さ、諦めの早さ)の
 生涯発達変化をズレとの関わりから探索的に検討すること

である。

**

<研究の仮説>

・仮説1:自尊感情は生涯維持される

・仮説2:理想-現実自己のズレは年齢と共に減少する

・仮説3:理想-現実自己のズレは生涯にわたって自尊感情と負の相関関係にある

**

<研究の方法>

・青年期から老年期の男女865名に対して
 質問紙調査を行った。
 
・「1、理想自己の測定」
 「2,理想ー現実自己のズレの測定」
 「3,理想自己の実現可能性」
 「4,自尊感情尺度」
 「5,理想ー現実自己のズレを調節する方略」
 
 について調査し、それぞれの相関を調べた。
 
**
 
<論文の結果>

・仮説1~3共に支持された。

**

<その他研究で見えた結果と考察>

◯「理想自己の実現可能性」の年齢毎の違い
 →45-54歳群が、それより若い群より有意に低かった。
 
◯「理想ー現実自己のズレを減少させる方略とズレの関係の発達変化」について
 →自分についての「肯定的解釈」「粘り強さ」と有意な負の相関が見られた。
  
◯「ズレを減少させる方略」の男女の違い
 →女性は「粘り強さ」、男性は「肯定的解釈」をする傾向が見られた
  よって女性のほうが理想自己を近づくべき重要な自己指針とみなしている可能性が高いと思われる
 
※引用:松岡弥玲.(2006).理想自己の生涯発達.教育心理学研究 54 (1): 45–54.
 
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(ここまで)

とのこと。



■なるほど、興味深いです。

ポイントは、

「加齢するに伴って
 理想ー現実の自己のズレは減っていく傾向である」

こと

「理想ー現実の自己のズレが減ると、
 自尊感情は高まっていく傾向がある」
 
ということが言えます。


基本、人生の後半につれて
自尊感情が高まるのは、
明るいニュースに思えますね。

前向きになります。


■一方、気になるのが、

”「理想自己の実現可能性」は
 45-54歳で大きく低下していた”
 
ことです。

ありたい自分になることは難しい、
(=理想自己の実現可能性は低い)
そう感じる人が一気に増える傾向があります。

曰く、その理由は

”中年期は体力の衰えなどを実感し始め,
 自己の有限性を自覚する時期とされる”(岡本,1995) 

であることや

”限界間の認識のよるあせりに加えて
 停滞感も現れる”(岡本、2002)
 
とも言われています。



■こうした理想ー現実のギャップは
やっぱり、起こりやすいもののようです。、

もちろん年代による変化も、
人それぞれですが

ある意味、傾向として
あって然るべきものと捉えると
皆一緒だよね、と少し肩の荷が降りる気もします。



同時に、それらの

「5,理想ー現実自己のズレを調節する方略」

として以下の2因子(※)が
理想ー現実自己のズレを調節する、
というのお話も興味深いです。

(※)
{肯定的解釈因子}
・人生の困難な出来事に出会っても明るい面を見つけることができる。
・すべてがよくない方向に向かっているように思えるときでも、多くの場合、明るい面を見つける事ができる
・不運な出来事にみまわれたときでも、前向きに考えることが容易にできる
・ずっと大切にしてきたことをあきらめるようなときでさえ、何か前向きな面を見つける事が多い
・チャンスを逃しても、大抵そのことを長くひきずったりしない
 他全8項目

{粘り強さ因子}
・目標を実現するための状況が絶望的なときでも、それを乗り越えようとする
・大きな困難に直面したときでも、自分の目標や計画を諦めない
・絶望的な状況のときでも、目標を実現するために頑張り続ける
・大きな壁に直面したとき、一層の努力をすることが多い
 全4項目
 
※Brand-stadter & Renner (1990)のTenacious Goal Pursuit and Flexible Goal Adjustment尺度

とのこと。


■「理想と現実自己のズレ」が
生じることを受け入れる。

ただ、ズレを減らす方略として、

1,ズレがあると受け入れつつも
2,前向きに捉えるように心がける。
3,かつ、それでも目標に向かって粘り強く頑張る

シンプルですが、納得感があります。

男女差や年齢差はありますが、
現実の認識とそれへの対応策を知ることで
自尊心を高く保つためにも役立ちそうです。

私もズレを感じるこの頃ですが、
「粘り強く」、いけるところまで頑張りたい、

などと思った次第です。

最後までお読み頂き、ありがとうございました。

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<本日の名言>

書籍は、病める時には装具となり、
苦しいときには慰めとなる。

キケロ
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