ドラッカーの語る「マネジャーに必須の資質」とは?
(本日のお話 4501字/読了時間5分)
■こんにちは。紀藤です。
引き続き宮崎に来ております。
GWとのことで、
父母姉を含めて卓球にいきましたが、
近所の体育館半面×3時間のレンタルで「40円」。
激安でした。
*
さて、本日のお話です。
昨日に引き続き、
『マネジメント 基本と原則(エッセンシャル版)』
P.F.ドラッカー
を元に、
ドラッカーの語るマネジメントについて
まとめてみたいと思います。
本日は「第5章 マネジャー」に焦点を当てて
進めたいと思います。
それでは早速まいりましょう!
タイトルは
【ドラッカーの語る「マネジャーに必須の資質」とは?】
それでは、どうぞ。
■「マネジャーとは何か?」
この問いの定義について、
ドラッカーは
『成果への貢献への責務』
というキーワードを述べました。
曰く、
”マネジャーを見分ける基準は
命令する権限ではない。
貢献する責任である。
権限ではなく、
責任がマネジャーを見分ける基準である。”
(P124)
とのこと。
マネジャーのキーワードは
(組織の成果に貢献するという)
「責任」
であると述べます。
■ドラッカーは、
知識労働者が働く組織において、
「マネジャーと専門家(いわゆるスペシャリスト)の関係」
についても言及をしています。
曰く、
・専門家は専門用語を使いがちであり、
専門家であるゆえに、理解をしてもらうことが難しい。
・そこで、マネジャーは専門家のアウトプットを
社内外の顧客の言葉に翻訳し、効果的であるように
ガイドすることが求められる。
・ゆえに、専門家はマネジャーの上司となりうるし
上司とならなければならない。
と語ります。
*
従来の考えでは
「マネジャーは他より優れているがゆえ、
多くの報酬を得る人」
という意味合いで捉えられていました。
また、それが昇進の経路の唯一のルートでした。
しかし、特定の分野で、
真の専門家が存在するようになり、
その専門家とマネジャーの関係は、
従来のようにマネジャーのほうが必ずしも
高い給与をもらうとは限らない、
となってきています。
(野球の花形プレイヤーが
監督よりも多くの報酬をえるようなものです)
そういう意味で、
・「人の成果に責任」を持つマネジャーと
・「自分の領域に責任」を持つ専門家
において、
「どちらもマネジメントの一員」である、
(=手段は違えど、いずれも組織の貢献に責任を持つ)
とドラッカーは考えました。
■さて、
人を通じて成果を出すという
いわゆる「マネジャー」について、
マネジャーには2つの役割があると
ドラッカーは続いて述べます。
以下、本書より意訳すると
1)「1+1>2以上」となるチームを創ること
(部分よりの和より大きな全体、
すなわち投入した資源の総和よりも大きなものを生み出す
生産体を創造すること)
2)「短期と長期の両面から成果」を出していく
(あらゆる決定に行動において
ただしに必要とされているものと遠い将来に
必要とされるものを調和させていくこと)
の2つです。
■そして、この2つの役割を果たすための
「マネジャーの共通の仕事」として
5つを列挙しました。
1,目標を設定する
2,組織する
3,動機づけとコミュニケーションを図る
4,評価測定する
5,人材を開発する
とのこと。
ただし、こうした”共通の仕事”は
後天的に学ぶことができるものの、
絶対にコレが必要という
マネジャーに必須の「資質」があると
ドラッカーは強調します。
それが
『真摯さ』
なのでした。
(この真摯さが何かは、
後ほど触れます)
■また、
「マネジャーの仕事」について、
その与え方にも注意点があることも
述べられています。
まず
「マネジャーの仕事は
十分な大きさと重さのあるものにする」
ことである、とのこと。
マネジャーは
最終成果に責任を持ち、
貢献を行う人間であるがゆえに、
常に最大の責任と、最大の挑戦を伴い、
最大の貢献を可能にするものでなければならない、
と言うのです。
ゆえに、ダメなパターンは
・マネジャーの職務設計を狭くし、
成長できなくすることはNGであるし、
・補佐役のような職務も有害であるし、
・マネジャーには十分な仕事がある必要があるし
(そうしないと部下の仕事を奪ってしまう)
・かといって、マネジャーの仕事は彼/彼女ら1人か、
それにプラスして一人の部下で収まる程度にする必要もあるし、
・マネジャーの仕事がないのに、
それを報奨のように肩書を与えること(◯◯専任部長など)はNGである、
とその仕事について
注意点を述べています。
■次に、
マネジャーの育成のための
「マネジメント開発」についても
ドラッカーはこのように述べます。
本書では
”マネジメント開発にあらざるもの”として
以下のことを述べます
(ここから)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
<マジネジメント開発であらざるもの>
1,マネジメント開発は、セミナーではない。
”組織全体と個々のマネジャーのニーズに合うもの”であること。
(セミナーではなく、実際の仕事や上司に合うものとするべし)
2,マネジメント開発は、人事計画やエリート探しでない。
(エリートを育成し、その他の人を放っておくと成果は上がらない)
3,マネジメント開発は、人の性格を変え、改造するものではない。
(成果を上げさせるためのものである。
強みを存分に発揮させ、自分のやり方によって活動できるようにするべし)
(参考:P135より著者編)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(ここまで)
よって、
”十把一絡げの
「作られたパッケージ用のマネジメント開発セミナー」は
効果的ではない”
し、
”組織毎に、個々のマネジャーごとに
作られる開発される必要がある”
とも言えそうです。
■そして、
ドラッカーといえば
「MBO(目標管理)」が有名ですが、
「目標管理」
についても触れています。
前提として、
”組織は共通の目標”に向けて
”組織の中の人間は貢献”すべきであり、
そのためには、いくつかの要因に
注意する事が必要とします。
そのための
「組織で注意すべき4つの阻害要因」として
・技能の分化
(=”技能自体”を目的にしないこと。
「なんのための技能か」を問うことが重要である)
・組織の階級化
(=組織の階級的な構造は、
何気ない言葉までを意味があるものに感じさせるため注意が必要)
・階層の分離
(=階層により仕事と関心が違うことから、方向付けに誤りが生じる。
階層ごとのものの見方の違いを成立さえるために、
共通の言語と共通の理解が必要)
・報酬の意味付け
(=報酬や報酬システムは強力な信号である。
かなりよい報酬システムをつくることも難しく
よって、報酬についての公式を求めても無駄である。
ただし、間違った行動を褒めたり、成果を強調しないように監視することぐらいは必要である)
を仕組みとして抑えておくことが必要、
と述べています。
■そしてその上で
「目標設定」として
・「短期視点」と「長期視点」から目標を規定する
・「有形の経済的目標」と「無形のそれ以外の目標」
(マネジャーの組織化と育成、部下の育成、社会に対する責任)
についての目標を含める
ことを行うのです。
そうすることで
目標が定まり、組織に所属する一人ひとりが
「自らの仕事ぶりをマネジメントできるようになる
(=自己管理できるようになる)」
ことで、強い動機づけをもたらすことができる、
と述べるのでした。
■そして章の最後では
「組織の目的」
をマネジメントと合わせて
以下のような言葉を述べています。
(ここから)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
組織の目的は、凡人をして非凡なことを行わせることにある。
天才に頼ることはできない。
天才はまれである。あてにできない。
凡人から強みを引き出し、
他の者の助けとすることができるか否かが、
組織の良否を決定する。
同時に、組織の役目は人の弱みを無意味にすることである。
要するに、組織の良否は
そこに成果中心の精神があるか否かによって決まる。
(P145)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(ここまで)
とのこと。
(組織とは、
「凡人をして非凡なことを行わせること」
「組織の役目とは人の弱みを無意味にすること」
、、、ぐっときます)
■そして、
ドラッカーはマネジメントにおいて重要なことを、
以下の4つ述べました。
1)組織の焦点は、
”成果”に合わせなければならない。
2)組織の焦点は、
”問題ではなく機会”に合わせなければならない。
3)配置、昇給、昇進、高級、解雇など人事に関わる意思決定は
”組織の信条と価値観”に沿って行わなければならない。
これらの決定こそ真の管理手段となる。
4)これらの人事に関わる決定は、
”真摯さこそ唯一絶対の条件”であり
既に身に付けていなければならない資質であることを
明らかにするものでなければならない。
とのこと。
・「成果」に焦点を当て、
・「問題ではなく機会」に焦点を当て、
・「組織の信条と価値観」で意思決定を行い、
・「真摯さ」が唯一絶対の条件
とする。
■そう、前述の「真摯さ」が
またまた出てきました。
マネジメントにおいて
「真摯さ」はめちゃくちゃ大事である、
とドラッカーは考えているようです。
そして、
何を持って「真摯」であるのかについて、
ドラッカーはこのように述べます。
まず、
「真摯さ」の定義は難しいが
「真摯さの欠如」を定義は難しくない
として、以下のような人は
マネジャーとして任命してはいけない、
と述べています。
(ここから)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
<「真摯さの欠如」がある者とは>
1,強みよりも弱みに目を向ける者。
できないことに気づいても、できることに目のいかない者は、
やがて組織の精神を低下させる。
2,何が正しいかよりも、誰が正しいかに関心を持つ者。
仕事よりも人を重視することは、一種の堕落であり、
やがて組織を堕落させる。
3,真摯さより頭のよさを重視する者。
そのような者は人として未熟であり、
その未熟さは通常なおらない。
4,部下に脅威を感じる者。
そのような者を昇進させてはならない。
そのような者は人間として弱い。
5,自らの仕事に高い基準を設定しない者。
そのような者をマネジャーにすることは、
やがてマネジメントと仕事に対するあなどりを生む。
(P147 ~148)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(ここまで)
とのこと。
「真摯さ」自体の定義はされませんが、
真摯さが欠如している者とは、
上記のような表現で規定されるようです。
■、、、と長くなってしまいましたが、
以上、著書『マネジメント』の
「第5章 マネジャー」より
ドラッカーが語ったことを
要約をしてみました。
おそらく、
マネジメント研究において、
他にも様々な定義がされていますが、
特にドラッカーは、
・「真摯さ」が
マネジャーの必須の資質であり
・「真摯さの欠如」が
ある者をマネジャーにしてはならない
と最初と最後にサンドイッチにして
述べているところに、
知識やスキルを越えた
人間としてのあり方のようなものを
見ているようにも私は感じました。
(オーセンティックリーダーシップの
「真正さ(integrity)」にも
近しいものを感じます)
■こうした定義を組織内で語り、
そして向き合うことが、
とても大事なことであるのかもしれない、
そんな事も考えさせられた章でした。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
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<本日の名言>
仕事を生産的なものにするには、
成果すなわち仕事のアウトプットを中心に考えなければならない。
技能、情報、知識は道具にすぎない。
ピーター・ドラッカー
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