ドラッカーの語る「組織構造の分析」の4ステップ
(本日のお話 3965字/読了時間4分)
■こんにちは。紀藤です。
引き続き、宮崎にて祖父母、父母姉を含め、
GWをゆるりと過ごしています。
また夜に1件の打ち合わせでした。
*
さて、本日のお話です。
引き続き、本日も
『マネジメント 基本と原則(エッセンシャル版)』
P.F.ドラッカー
を元に、
ドラッカーの語るマネジメントを
紐解いていきたいと思います。
本日は「第7章 マネジメントの組織」です。
それではまいりましょう!
タイトルは
【ドラッカーの語る「組織構造の分析」の4ステップ ー第7章:前編ー】
それでは、どうぞ。
■マネジメントは
”成果を上げる”
ためのものであることを
ドラッカーは強調しています。
そして、
成果を上げるための要素の
重要な一つとして、
『組織構造』
が挙げられます。
■私たちも、組織で働く上で
営業部とか開発部とか
広報部とか人事部 etc・・・
何かしらの職能別の組織に所属しています。
そしてその構造により
縦割り構造に陥ったり、
やたらと調整に時間がかかったり、
意思決定がよくわからなくなったり、、、
という症状が重くなったり、
あるいは比較的スムーズに進んだりします。
私たちの成果に直結する組織の仕組み、
それがまさに
「組織構造」
なのです。
■これまで、
マネジメント分野における
組織構造について
多くの研究がなされてきました。
階層型組織、自由型組織
職能別組織、チーム型組織
連邦分権組織、システム型組織
ホロクラシー型組織などなど、
なんだか何がどう違うのやら・・・
こんなに分ける必要があるのか、、、?
とつい思ってしまいそうな、
多くの用語で定義されています。
(苦手でございます汗)
しかし、
それぞれの組織構造は
組織が成果を上げるために
過去の実践者、研究者たちが
経験と研究を深めてきた歴史があり、
重要な要素であることは確かなようす。
これは掘り下げてみる価値が
大いにありそう!
と思ったのでした。
■さて、
マネジメントにおける、そんな
『組織構造』の重要さを
ドラッカーは第7章にて語っています。
*
章のはじめにドラッカーは
このように述べます。
「組織構造こそ、
成果をあげるための前提である」
と。
なるほど、、、
成果を上げる前提なのですね。
そして、こう続けます。
・組織構造は、自ずから進化していくものではない。
・組織構造の設計は、最後に手を付けるべきことである。
・組織構造は組織が目的を達成するための手段である。
「組織構造」は、
組織の成果のためにあるべきである。
よって「課題は何か」という
課題中心に組織構造を組み立てる事が重要とします。
■、、、とは言うものの、
「組織構造を設計する手法」とは
具体的にいかなるものなのか?
ここが気になるところです。
まず組織構造を考えるには
以下の4つの問題に向き合う必要がある、
といいます。
それは
・何を組織の単位とするか(1)
・何を一緒にし、何を分離するか(2)
・いかなる大きさと形にするか(3)
・いかなる位置づけを行い、いかなる関係をもたせるか(4)
です。
そして、この1~4に対応する
組織構造の分析が、
【活動分析】
↓
【貢献分析】
↓
【決定分析】
↓
【関係分析】
となると述べました。
■では、具体的に、
どのように行っていくのか?
このことについて
触れていきたいと思います。
まず
【活動分析】
です。
以下の「3つの問い」を
考えることから始めます。
1、組織の目的を達成するには、いかなる分野において卓越性が必要か
2,いかなる分野において成果があがらないとき、致命的な損害を被るか。
いかなる分野に最大の弱点を見るか
3,本当に重要な価値は何か。
の3つです。
これらの問いを考えることで、
「組織の基本活動」が明らかになり、
特に組織において成果をあげる上で
重荷を担っている部分、すなわち
”中心となる部分”を明確にすることができ、
組織構造の設計に役立つことになります。
■そして、次に必要なことが、
【貢献分析】
です。
この貢献分析で明らかにすることは
「何を一緒にし、何を分離するか」です。
そのためには、
企業内の活動における
「貢献の種類の4つの分類」
を考えることが有用であると述べました。
*
具体的には以下のような分類です。
(ここから)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
【企業内の活動における「貢献の種類の4つの分類」】
(1)成果活動
:組織全体の成果に直接、あるいは間接の関わりを持つ測定可能な成果を生む活動のこと。
以下の3つの活動がある。
1,収入活動・・・直接収入をもたらす活動。(例:マーケティングとイノベーション)
2,成果貢献活動・・・直接収入はうまないが、企業全体の成果や部門の成果に関わりを持つ活動。(例:製造など)
3,情報活動・・・アウトプットを生むが収入はうまない。組織内のあらゆる者が必要とするアウトプットである
(2)支援活動
:成果活動と同じように必要不可欠ではあるが、自らは成果を生むことはなく、
アウトプットが他の組織単位によって利用されて、はじめて成果を生む活動のこと。
以下の3つの活動がある。
1,良識活動・・・基準を設定し、ビジョンを描く活動。(例)組織ビジョン・価値・基準を設定する)
2,スタッフ活動・・・助言活動と教育活動。
3,渉外活動・・・法律スタッフや特許部の活動。
※特に1,2については、関わるスタッフを極力少なくする必要がある。
あらゆる種類の活動のスタッフをつけると、必ず生産性の低下を招く。
(3)家事活動
:組織全体の成果とは直接関わりのない活動、つまり付随的な活動のこと。
健康管理、清掃、食堂、年金や退職基金の管理、政府指定の記録類の管理など。(例:労務等)
(4)トップ活動
:他の活動とは全く性格の違う活動。
(※この章では触れられておらず、別で解説されています)
<原則>
・同一の貢献を果たす活動は、同一の部門にまとめ、同一のマネジャーの下におくこと。
・同一の貢献を果たさない活動を一緒にしてはならない。
(P184~191)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(ここまで)
「果たす貢献の種類によって
一緒にするものを決める」
というシンプルな原則に沿って、
組織単位において
”一緒にするものと分けるもの”
を決めるのです。
■そして3番目が、
【決定分析】
です。
成果を手にするために、
・いかなる種類の意思決定が必要か?
・意思決定をいかなるレベルでおこなうか?
・いかなる活動が意思決定によって影響をうけるか?
・いかなる部門のマネジャーが、いかなる意思決定に参加し、相談を受け、
あるいは意思決定の結果を知らなければならないか?
の問いを考えます。
その問いに対する答えが
組織における仕事の位置づけを左右します。。
組織における意思決定は
以下の「4つの観点の分類」が必要とします。
1,影響する時間の長さ
(意思決定によって、将来どの程度の期間にわたって
行動を束縛されるか)
2、他部門や組織全体に与える影響の度合い
(影響が部門内にとどまる意思決定は低いレベルで行い、
そうではない場合は、高いレベルor他部門との協議により行う)
3,考慮に入れるべき定性的要素の数
(定性的要素とは、企業の行動原則、価値観、信条などのこと。
価値観の問題が入ってくる場合は、高いレベルで意思決定を行う)
4,問題が繰り返しでてくるか、まれにしか出てこないか
(繰り返し出てくる問題は原則をつくる。
停職など、人に関する問題は高いレベルで原則を作り、
運用は低いレベルで意思決定をする)
とのこと。
■そして、
組織構造の設計の最終段階が
【関係分析】
です。
その組織の基本単位が
・どこの誰と協力して働かなければならないか
・どこの誰に対して、いかなる種類の貢献を行わなければならないか
・どこの誰から、いかなる種類の貢献を受けることができるか
などを特定することで、
組織単位の位置づけを決定することができます。
ここでの原則は
「活動間の関係を最小限に絞ること」
です。
致命的な重要な関係を
円滑、密接、中心的な関係にする必要があり、
そのためには活動間の関係を絞る必要がある、
と述べます。
■これらの、
【活動分析→【貢献分析】→【決定分析】→【関係分析】は
小規模起業では数時間で行えて、
紙も数枚で足りるとする一方、
大企業では数ヶ月の時間と、
高度の分析と、総合の手法が必要と言います。
いずれにせよ、
”いかなる場合においても、
これらの分析をおろそかにしてはならない。
あらゆる企業にとって必要不可欠な作業であり、
しかも必ずうまく行わなければならない作業である(P193)”
とドラッカーは述べます。
要は「組織構造設計の分析はめちゃ大事」
ということですね。
■ではこれらの分析を行い、
精緻に組み立てたからといって、
完璧な組織構造ができるかというと
残念ながら、そうではないようです。
できるのは、
”せいぜい問題を起こさない組織をつくるくらい”
が現実であるようです。
(リアルですね)
しかし、この点をきちんと抑えないと
以下のような「悪い組織」の症状が
現れてしまうようです。
具体的には、
・マネジメントの階層が増加する。
組織内の相互理解と協同歩調を困難にする
・組織構造に関わる問題が頻発する。
・要となる者の注意を、
重要でない問題や的はずれな問題に向けさせてしまう。
・大勢の人間を集める会議を頻繁に開かざるを得なくなる。
・人の感情や好き嫌いに気を使うようになる。
・調整役や補佐役など、実際の仕事をしない人たちを
必要とするようになる
・そして大企業の組織病となり、
常に組織構造を気にすることになる。
という症状です。
■改めて、マネジメントは
マネジメントの資質、
マネジメントの技能などの
個人要因はもちろん重要であるものの、
「マネジメントの組織」
という環境をいかに設計するかも
大変重要であることがわかります。
また、第7章の後半では、
・組織の条件や
・代表的な5つの組織構造
とまとめられておりますので
このお話については明日に続けたいと思います。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
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<本日の名言>
卓越した者の強みや能力が他の者にとっての脅威となり、
その仕事ぶりが他の者にとっての問題や不安や障害となることほど、
組織にとって深刻な問題はない。
ピーター・ドラッカー
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