論文からの学び『強みの活用はエンゲージメントを高めるのか?トレーニングの効果』より
(本日のお話 3822字/読了時間4分)
■こんにちは。紀藤です。
昨日は2件のアポイント。
その他研修の企画など。
仕組みづくりのために仕込みを始めております。
*
さて、早速ですが本日のお話です。
先日よりストレングス・ファインダーの
公開イベントをご案内させていただいております。
(詳細はメルマガ本文をご参照ください。
そしてお申し込み頂いた皆様、ありがとうございます!)
、、、と”強み”について語りつつも
「強みの活用の研究」については、
私もまだまだ道半ば。
(世の中的にもたぶんそう)
特に、学術的な研究の視点では
もっと収集すべき情報がありそうです。
そんな中、今日は
”「強みの活用」についての論文”
で実践的で、興味深いものを見つけましたので、
そのお話について皆様に
ご共有させていただければと思います。
それでは早速まいりましょう!
タイトルは
【 論文からの学び『強みの活用はエンゲージメントを高めるのか?トレーニングの効果』より 】
それでは、どうぞ。
■「強みの活用」。
ポジティブな響きで、
前向きな気持ちになれる感じがします。
私も、それらの知見を提供させて頂く側として
(具体的な定量分析などを行ったわけではないものの)
実際に「強みの活用のワークショップ」を
受講された個人やチームは、
・自分の強みが理解できて、
活用のイメージが湧いた とか
・他者との違いが明確にわかって
コミュニケーションが取りやすくなった
などのコメントを頂くことがおく、
インパクトのある手法の一つであるな、、、
と実感をしております。
■そんな中、こんな論文を見つけました。
『個人資源と強みの活用はワーク・エンゲージメントを高めるか? トレーニング介入の効果』
Bakker, Arnold B., and Jessica van Wingerden. 2021.
“Do Personal Resources and Strengths Use Increase Work Engagement? The Effects of a Training Intervention.”
Journal of Occupational Health Psychology 26 (1): 20–30.
というものです。
この論文は、オランダのエラスムス大学で
組織心理学を専門とされているバッカー博士によるものです。
強みの活用と、職務要求資源モデル(JD-Rモデル)、
ワーク・エンゲージメントなどの関連を調べた論文を
多数書かれています。
■では、この論文、
どんな内容かというと以下のような話でした。
簡単にまとめてみます。
(ここから)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
<論文の概要>
・この論文では、「自分の能力を最大限に活用することで、
ワークエンゲージメント(仕事への情熱や関心)を高めることができる」
という仮説で研究をしました。
・具体的には、強みの活用が
・アサーション(自己主張力)、自己効力感、レジリエンス(逆境に強い心)
・ワークエンゲージメントへもたらす影響を見ています。
・研究では、これらの個人資源を育てるトレーニングを実施しました。
参加者は実際にトレーニングを受けるグループ(54人)と
待機リストにあるコントロールグループ(48人)に分けられました。
・結果はどうだったかというと、
実際にトレーニングを受けたグループでは、
個人資源、強みの活用、ワーク・エンゲージメントが増加することがわかりました。
・また、このトレーニングが自己効力感とレジリエンスにどのように影響を与え、
それがどのように仕事への情熱につながるのかを見るための詳細な分析も行いました。
その結果、トレーニングは自己効力感とレジリエンスを向上させ、そ
れが仕事への情熱を高める正の影響を与えることが示されました。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(ここまで)
とのこと。
■まず、この論文の土台となっているモデルは
『職務要求-資源(JD-R)モデル』
と呼ばれるものです。
このモデルも興味深いのですが、
以下のような説明がされています。
まず、仕事の特性を2つのカテゴリにわけています。
それが
・「職務要求」(Job Demands)
・「職務資源」(Job Resources)。
の2つです。
「職務要求」(Job Demands)は、
・仕事の遂行に必要な労力やスキル、
・その結果として生じる物理的、心理的、社会的なコストとされ、
例えば、
高い労働強度、働きすぎ、高い心理的ストレスなどがあります。
高い「職務要求」はストレス反応(健康問題や職場での不満)を引き起こす、
とされています。
一方、「職務資源」(Job Resources)は、
・仕事の目標達成を助け、仕事で必要とされる能力を育成し、
仕事の要求やストレスと効果的に対処するための
物理的、心理的、組織的な側面のこととされ
例えば、、
支援的な管理、チームとの良好な関係、
仕事に対する自己効力感、フィードバックなどが含まれます。
「職務資源」は動機づけを高め、仕事のパフォーマンスを向上させるとされています。
そして、
「職務資源」は「職務要求」による
ストレスの影響を緩和する働きがある、
としています。
■、、、と、したときに、
『強みの活用』を高めることは
どこに当てはまるかのか?
それは、
「職務資源(Job Resouces)」を
高めることに繋がるのでは、と考えました。
ゆえに仮説はこうです。
1)「強みの活用」
↓
2)「職務資源を高める」
(自分が環境をコントロールできるという信念を強める
=自己効力感、レジリエンス、アサーションの向上)
↓
3)「仕事へのエンゲージメント向上」
とのこと。
これらの強みの活用そして、
トレーニング(研修)にて介入をして
分析(共分散構造分析)をしたところ、
自己効力感、レジリエンスの変化があり
ワーク・エンゲージメントの変化に影響を与えた、
というお話でございました。
■なるほど、、、
強みの活用はワークエンゲージメントに
影響を与えることがわかったのですね。
では、ここで気になるのが
「どんなトレーニング(研修)介入をしたか?」
です。
これについても、詳しく書かれていましたので
以下まとめてみたいと思います。
(ここから)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
<トレーニング(介入)手法のまとめ>
◯対象者について
・参加者はオランダの大手ソフトスキル研修・コンサルタント会社が提供するパーソナルリソース研修に自己申し込みで参加。
・総勢150人が参加意向を示し、102名が実際に参加。
その内、54名がトレーニングに参加、48名が待機リスト管理群。
・介入グループ(トレーニング参加者)は女性27名、男性27名。
平均年齢は41歳(SD=10.52)。72%が高等職業教育または大学教育を修了。
・待機リスト対照群は、女性24名、男性24名で構成。平均年齢は42歳(SD=10.17)。
68%が高等職業教育または大学教育を修了。
◯トレーニング(介入)の手順について
*第1回目:「キャリアと強みの活かされ方の対話」
・参加者は自分のキャリアについて語り合い、共有する。
現在の仕事で良いと思っている点や、自分の強みがどのように活かされているかについて話し合う。
自分の望みやニーズ、ポジティブな感情とネガティブな感情を相手に伝える練習を行う。
会話の始め方、続け方、終わらせ方を練習する。
*第2回目:「フィードバックを通じて自己効力感を高める」
・参加者は褒め言葉を適切に受け取る方法や、フィードバックの与え方と受け取り方を練習する。
フィードバックの授受を通じて、自己効力感を高める。
・このセッション後、参加者は職場で以下の3つの課題をこなすことが求められる。
1)自分の意見を安心して伝えられる同僚を選び、その状況における自分のニーズや感情を発言する。
2)3人の同僚に自分の長所についてフィードバックを求め、その同僚に自分の長所についてフィードバックする。
3)同僚から言われた強みの1つを使う機会を職場で意図的に作る。
*第3回目:「要求を断る練習」
・参加者はストレス要因を減らし、レジリエンスを高めるための方法として、要求を断る練習を行う。
仕事上の問題で最近起こった個人的な挫折を特定する。
特定された挫折に対する即時の反応を書くよう指示される。
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(ここまで)
とのこと。
■興味深いのが、この介入では
「ストレングス・ファインダーやVIAなどの
ツールを用いて強みの分析をしていない」
ことです。
それでも、
・自分のキャリアを振り返り、
強みがどう活かされているのか対話をする
・フィードバック(褒め言葉)を受け取りあう
・要求を断る練習(アサーション)をする
事を通じて、
レジリエンスや自己効力感が高まり、
ワーク・エンゲージメントにも繋がる
という結果が、
興味深く思いましたし、
対話の可能性や
振り返りのインパクトを考えさせられるものだな、
と思ったのでした。
■図らずも、上記の内容の上2つは、
ストレングス・ファインダーの研修でも
含まれているものであり、
やはり王道の介入手法なのだな、
と見直す機会にもなった論文でした。
ということで、
強みのワークショップもまだ募集していますので
ご興味がある方はよろしければお待ちしております。
(なんだか営業チックな終わり方になってしまい
ごめんなさい 苦笑)
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
本日も皆さまにとって、素晴らしい1日となりますように。
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<本日の名言>
閉じ込められている火が、いちばん強く燃えるものだ。
ウィリアム・シェイクスピア
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