トランザクティブ・メモリー・システムってなんだ? ーチームで強みを活用するための3要素ー
(本日のお話 3096字/読了時間3分)
■こんにちは。紀藤です。
昨日より妻の実家の茨城へ。
今週は茨城にてリモートワークでございます。
今週も月曜日、健やかに
楽しく参りたいものです。
*
さて、本日のお話です。
今日は、改めて先週に引き続き、
「強みの活用」のお話を続けたいと思います。
(お伝えしたいネタがまだまだございます・・・!)
ということで、早速まいりましょう!
タイトルは、
【トランザクティブ・メモリー・システムってなんだ?
ーチームで強みを活用するための3要素ー】
それではどうぞ。
■先日までのお話から、
だいぶ日数が空いてしまいました。。。
ちょっとだけ
おさらいをさせていただくと、
こんなお話でした。
<先日までのお話>
・強みを活用することで、様々なメリットがあるよ
(幸福度、エンゲージメント、ストレス軽減、パフォーマンス向上etc・・・)
・でも、研究の中心は「個人」を対象とした
ポジティブ心理学の観点が多かったようす
・ゆえに、「チーム」という組織レベルでの
「強みの活用」の研究はまだまだ少ないのが現状である。
・それでもって「個人の強みの活用」は
”本人が自分の中で卓越性を感じていることにフォーカスをする”
ことをすれば、幸福度など高まるから、割とシンプル。
・でも「チーム」だと”強みの活用”の難易度が
ぐっと変わってくる、
、、、というお話でした。
■では、
”「チーム」だと強みの活用”の難しさが変わる、
ということですが、
・具体的にどういうことなのか?
・何をどうすれば、難しいのが易しくなり得るのか?
このことについて、
ヒントが書かれている内容が
今日のお話となります。
論文のパートがありましたので、
以下、引用させていただきます。
(ここから)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
<チームにおける強みの活用の難しさ>
チームで働くということは、
様々な個人が共通の目標を共有し、
タスクの相互依存関係を示し、
社会的に相互作用することを意味する。
(Kozlowski& Bell,2013)
自分の強みを自分のニーズに
最適な方法で使用するチームメンバー個人は、
その行動によってチームタスクの一部が放置されたり、
人員過剰になったり、その分野に強みを持たない他のチームメンバーに
引き継がれたりする可能性がある。
すると、(その人の強みは)
チームパフォーマンスに利益をもたらすどころか、
むしろ害を及ぼす可能性がある。
この状況を
「ジャズ・アンサンブル」に例えることができる。
たとえば、一緒に演奏するとき、
全員がそれぞれの強みを発揮しようとすると、
ひどい音になってしまうかもしれない。
このような理由から、
集団的な強みの使い方を理解するためには、
個人レベルの強みの使い方をユニットレベルに集約するだけでは
不十分なのである。
※Woerkom, Marianne van, Maria Christina Meyers, and Arnold B. Bakker. (2022).
『組織における強みの活用の考察:マルチレベルの構成要素』
「第3章:個人の強みをチームで活かす:集団的強みの活用に向けて」より
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(ここまで)
とのこと。
■ふーむ、なるほど、、、
「ジャズ・アンサンブルのたとえ」
確かにわかりやすいですね。。。
どれだけ優れた
サックスや、ピアノがいても、
その演奏だけを我先にと一方的に主張すると
全体としてはまとまりが無くなってしまうこともあり得る。
ジャズはあまり詳しくないですが
なんとなく、想像ができます。
そう、チームとは
1,様々なメンバーがいて
2,共通の目標があって
3,相互作用する
という要素があります。
ゆえに、
「個々の強みの発揮」を、
一人ひとりが勝手にすると、
文脈によって「強み」ではなく
「害」になってしまう恐れがある、、、
もっともな話です。
■もう少し具体的に考えると
たとえば、チームでは
”確実でミスがない仕事”
を今は求められている状況なのに、
あるチームメンバーが
「自分の強みは”創造性”なんで!」
と突飛なアイデアを思いつくままに
行動をしていたとしたら、
それはその本人にとっては
「強みの発揮」でエンゲージメントや
幸福度が高まるかもしれませんが
周りにとってはいい迷惑、
むしろチームとして生産性が下がってしまう、
なんてこともありえます。
そうして、
個人は「WIN」でもチームは「LOSE」
という状況は決して望ましくないし、
個人もチームも「WIN-WIN」になれる状況こそが
望ましいのではないか、、、
と思えます。
■では、上記の
チームでの強み活用の壁を乗り越えて
「個人とチームの双方がWIN-WIN」になるように
私たちはどのような知識と意識を持ち、
行動すればよいのでしょうか?
その一つのヒントとして
キーワードが
『トランザクティブ・メモリー・システム(略してTMS)』
(Lewis, 2003)
と呼ばれる先行研究にある、
このように論文では延べています。
TMSの研究では
「専門性、信頼性、協調性という3つの特徴が、
チームが持つ知識を最適に活用する」
と述べています。
■TMSの3つの特徴を
もうちょっと補足すると、以下の通り。
◯専門性(awareness):
メンバーの誰がどのような専門知識を持っているかという
チームメンバーの意識のこと。
◯信頼性(credibility):
チームメンバーがその知識(誰かが持っている専門知識)に
信頼を置くこと。
◯協調性(coodination)
チームのタスクを達成する際に、
それぞれの知識の違いを効果的に扱うこと。
です。
■平たく言うと、TMSとは
・個々のメンバーが、
特定の情報を覚え、その情報の専門家となっている
・他のメンバーは、
その情報が誰によって保持されているかを知っている
・グループ内で、
「誰が何を知っているか」の共通認識を持っていて
相互補完できている
この状態により、情報の効率化が進むんだよ、
というわけです。
でも、これも現場を考えると
結構当たり前の話に思えます。
職場で付き合いが長くなると
「新規営業だったら、
◯◯さんに聞いてみたら?
彼、スゴいよ~」
とか
「テレアポのやり方だったら、
△△さんが上手だよ。
マジ、神」
みたいに、
”誰が何の専門家なのか
お互いが知ってくる”
ものです。
そしてそうすると、情報の獲得も
よりスムーズになってくるわけです。
■そしてそして!
大事なポイントが、
”チームにおける強みの活用”
はついても、まさにこの
”トランザクティブ・メモリー・システム(TMS)に
基づいて実行される”
と述べられているのです。
すなわち、
1,誰がどんな「強み」を持っているのか
(強みの専門性の相互認識)
2,その「強み」についての信頼しているか
(強みの信頼性)
3,「強み」基づいたタスクの割り当てと実行ができているか
(強みの協調性)
これらのチーム内での強みの
専門性
信頼性
協調性
を意図的に高めることが大事である、
というのです。
そしてそのためには
「強みに基づいた対話」が必要になります。
■、、、しかしながら、
「強み」は、
仕事の個別具体的な情報や
その本人が得意なタスクより
より抽象度が高いものです。
加えて、「強みの種類」もさまざま。
たとえば、
「分析・戦略」みたいに
業務のコンピテンシーにも
組み込まれるようなわかりやすい「強み」もあれば
「ユーモア」のように
直接的にタスクに影響を与えるわけではないけれど
”チームの風通しを良くする”等で
間接的にチームの成果に影響を与える「強み」もあります。
■また、他の観点では
「相手の強みを認めやすい人と
そうではない人がいる」
(”肯定的な特性を持つ人”は
人の強みを認めやすい)
という個人間での
”強みを認識する能力・特性の違い”
も現れてきます。
■ゆえに一筋縄ではいかないのが難点。
TMSのパワーワードで万事解決!
とはいかないようです。
ということで、この
「チームにおける強みの活用」
において気をつけるべきことについては
また明日以降に続けたいと思います。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
本日も皆さまにとって、素晴らしい1日となりますように。
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<本日の名言>
性に合わない人たちとつきあってこそ、
うまくやって行くために自制しなければならないし、
それを通して、われわれの心の中にあるいろいろ違った側面が刺激されて、
発展し完成するのであって、やがて、誰とぶつかってもびくともしないようになるわけだ。
ゲーテ
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