闇の中の天使、私設エイドおじさん ~263kmマラソン体験記(4)~
(本日のお話 3404字/読了時間4分)
■おはようございます。紀藤です。
7/15(土)17:00に
弘前公園東門をスタートした
「みちのく津軽ジャーニーラン」。
今日も続けてまいります。
※昨日までのお話はこちら
◯「知らないから楽観的でいられる」 ~263kmマラソン体験記(1)~
https://1lejend.com/b/detail/HSfoIRnMfw/4549662/
◯120kmからが本当のスタート(そして絶望の始まり) ~263kmマラソン体験記(2)
https://1lejend.com/b/detail/HSfoIRnMfw/4550245/
◯「股間の痛みとリーダーシップ」海岸線の苦行 ~263kmマラソン体験記(3)~
https://1lejend.com/b/detail/HSfoIRnMfw/4550700/
今日は、7/17(月)、
3日目からのお話となります。
それでは早速まいりましょう!
タイトルは、
【闇の中の天使、私設エイドおじさん ~263kmマラソン体験記(4)】
それでは、どうぞ。
■7月17日(月)深夜2時。
開始から33時間経過。
現在178km地点。
最後の死力を振り絞って、、、
といいたいところですが、
そのセリフを言うには
まだ早すぎるタイミングです。
ここからは
「後半戦のはじまり」
なのです。
もう、いつになったら
終わるんだ、、、
走りながら、自分もそう思っています。
■5人になった仲間は、
1人脱落して、4人になりました。
また遅れて到着した一人マッキーも
足首の腫れを訴えており、
後で出発するとのことでした。
いよいよ眠く、
いよいよつらく、
いよいよ皆いっぱいいっぱいです。
1日目の夜に話していた
お互いの赤裸々トークなど
行う余裕はありません。
それでも、
”闇の中、
誰かと一緒に走れる”
というのは、それだけで
心強いものであることは、
この2晩で痛いほど知りました。
エンディ、ヒロポン、
そしてここにはいない提督、
マッキー、ありがとう。。。
■1時間弱の睡眠ののち、
「ふるさと体験館」
を発ちました。
睡眠に加えて
股擦れをテーピングで固めて
誤魔化したことで、活力がみなぎりました。
痛みがない。
眠気も今はない。
きっと大丈夫だろう、、、、
そして
次のチェックポイントである
「津軽中里駅(204km)」
を目指します。
そこまでの道のりは、
ひたすら山道。暗い山道です。
あと2時間もすれば
夜が明ける。
最後の夜が、
終わろうとしていました。
■一方、走りながら
重要な事に気づきます。
それは
”次の休憩所まで約26km、
休憩所がない”
ということ。
自販機が現れるのも、今は山道なので、
20kmくらい先になります。
股擦れの処置で頭がいっぱいで
水の補充を忘れていたのでした、、、
「水がない」。
これは致命的なのです。
仲間に話をすると、
水が不足しているといったエンディ。
水なくして走れない、ということで
山道のトイレで水を組むことにしましたが、
「飲まないで下さい!
飲料水ではありません」
と強く警告されており、
腹を下しては元も子もない、
ということで諦めて走り出します。
■さて、この頃になると
走りながら、
様々なものが見えるようになります。
いわゆる「幻覚」です。
正常なときでも
暗い中だと見間違いという
現象は起こります。
そこに加えて、
暗闇✕睡眠不足✕疲労が重なると、
”別のものに見える”という勘違いが
脳内で起こりやすくなるよう。
私が、走っていると
懐中電灯で照らした先の
すぐ目の前の路肩の段差に
1歳くらいの赤ちゃんが
座ってこっちを見ていました。
そして、その目が光っていました。
あまりにもビビって、
「うわっ!」と一人声をあげました。
側にいたエンディが
「どうした?」と聞きます。
「赤ちゃんが見えた」と私が答えると
「ああ、そう。まあそろそろ、
そういう頃合いだよね」
と驚く様子もなく、
するっと受け流されました。
皆、そういうのが見えているのです。
その他にも、
カーブミラーが
スーツを来たパンダに見える、とか
木々が、象に見える
など不思議な光景が見えました。
■ただ、そんなのは
どうでもよいのです。
脳がちょっと勘違いしただけで
痛くも痒くもありません。
問題は、
「めちゃくちゃ眠い」
ただこれだけ。
「眠い!眠い!眠い!」と
誰が助けてくれる訳でもないのに
誰にとも無く叫んで見る。
「ああーっ!!」と大声を出してみる。
眠くて、
誤魔化してたくて
でも変わらなくて。
また水もなくて
喉も渇き始めて、
トイレの水も駄目で、
でもやはり変わらず。
ただただしんどさだけが
溜まっていきます。
■そんな中で、
「闇の中に天使」のような
存在が現れました。
それが「私設エイドおじさん」です。
この山道、同じように
水不足に陥ったランナーに、
深夜3時にも関わらず
おじさんが車を出してくれていました。
毎年、ここで1人、
深夜~明け方にサポートを
応援してくれているそうです。
トイレの水が飲めず絶望している中で、
「もしかしたら今年もいるかも」と
仲間が言っていましたが、
私設エイドのおじさんは今年もいてくれました。
そこでミルクティーやコーヒー、
リポビタンDなどを頂きます。。
そして空だった水も、
両方のボトルに満タンにしていただきました。
まだまだ頑張れる・・・!
人の優しさや、サポートがあるから
長い旅路も続けられるのだ、、、
そう思わずにはいられませんでした。
■さあ、いくか!!
と元気よく走り始めます。
、、、がそれもつかの間。
また、ものの10分で、
暴力的な眠気が襲ってきました。
目を覚ますために、
1kmくらい全力で走ってみたりします。
それでもただ足が疲れるだけで
やっぱり眠い。
なので、全力で走る
道端でまた5秒だけ眠る。
仲間に追いつかれる。
全力で走る
道端でまた5秒だけ眠る。
仲間に追いつかれる、
を繰り返していきました。
■195km。
朝4時30分。
もう空は明るくなりました。
最後の夜が、明けたのでした。
休憩所まであと10km。
でもこの10kmが長い。
そしてやっぱり眠い。。。
「ちょっとだけ寝よう」
駐車場のベンチのようなところを見つけ
5分だけと思い、横たわります。
すると、今度は車に乗った
若いお兄さんが小走りで近づいてきました。
「お疲れ様です!
、、、お味噌汁、飲みます?」
と一声。
体が塩分や栄養分を必要としている中
味噌汁という最高に嬉しいギフト、
そして優しさが身に沁みました。
紙コップに入った
お味噌汁を持ってきてくれます。
「この時間、辛いですよね・・・
もうちょっとです、がんばりましょう!」
この方は今回参加されなかったのですが
毎年参加されている猛者であるそう。
その明るすぎる声には、
この時間のキツさがリアルにわかるからこそ、
元気づけようとしてくれている、
そんな想いを感じました。
また、ちょっとだけ元気を
そしてアミノ酸をいただきました。
■追って、
後方を走っていた仲間の一人
エンディも加わって
お味噌汁を飲んで、
つかの間の休憩を入れました。
あと10km、がんばろう。
そこまでいったら、30分寝よう。
そして走り始めました。
山道は終わりを告げ
民家がポツポツ増えはじめ、
場所が町になっていました。
そして朝7:00、
チェックポイントである
「津軽中里駅(204km)」
に到着。
そこでは駅にブルーシートがひかれており
そのままそこに横たわります。
すべての場所に、布団なんて当然ないし、
畳もありません。
床でも、コンクリートでもいいのです。
寝れれば、それでいい。
■小休止の後、
さていこうか、と
仲間のエンディ、ヒロポンと共に、
歩き始めた時に、エンディが言いました。
「マッキーから連絡があった。
足首が痛くて、このペースだと
次のチェックポイントに間に合いそうもない。
ここでリタイヤになると思う」
とのこと。
最初5人で始まった仲間は、
3人になっていました。
■自分たちは必ず完走しよう、、、
言葉には出しませんが、
皆その意志を持っていることは確かでした。
そして3人で
次のチェックポイント
「金木町物産館(212km)」
を目指します。
次まで、あと8km。
あっと言う間じゃないか、
魔の明け方の時間が過ぎて、
いくぶんか体力も、
そして希望も戻ってきていたようでした。
テーピングでぐるぐるまきの
股擦れが汗と水分でぐしょぐしょになってきており
大変な痛みを醸し出し始めました。
朝になって空いていた薬局で
「キズパワーパット」を購入。
これを患部に貼って、対処をしました。
金木町物産館に到着し、
皆で「さくらんぼソフト」を食べます。
あと50km・・・!
最後の戦い、という言葉が
脳裏に浮かびました。
■すでに完走経験がある
エンディがいいます。
「ここから先は、
最後の国道になるけど、
それぞれのペースで行こう」
「そして、
最後のチェックポイント、
黒石駅で会いましょう!」
、、、と。
結局、後半の最大の壁と対峙し、
ゴール前のチェックポイントにて皆で会おう、
というのは叶いませんでした。
そして、後半の最大の壁
”212km~242km間の
延々と続く国道沿いの道”
がここから始まるのでした。
朝9:30。
制限時間まで、あと12時間30分。
(つづく)
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
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<本日の名言>
閉じ込められている火が、
いちばん強く燃えるものだ。
ウィリアム・シェイクスピア
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