今週の一冊『夢なし先生の進路指導』
(本日のお話 2550字/読了時間3分)
■こんにちは。紀藤です。
昨日土曜日は、次世代リーダー向けの
5ヶ月間の研修の1日目でした。
世代が近い方も多く
とても素敵な参加者ばかりで、
これからが楽しみになる1日でした。
ご参加いただきました皆様、
これからよろしくお願いいたします!
*
さて、本日のお話です。
毎週日曜日は、お勧めの一冊をご紹介する
「今週の一冊」のコーナー。
今週の一冊は
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『夢なし先生の進路指導』
笠原真樹 (著)
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です。
■「この漫画は、新しい…!」
そんな純粋な感動と
興奮を覚えた一冊でした。
そして、多くのキャリアを考える人にとって
現実的で役に立つ漫画でもあるな、
そんなことを思いました。
■さて、先週
山手線に乗っていたとき
電車の広告がありました。
”夢の底から生徒を救い出す
革新の教師物語”
と書かれていた漫画の新刊広告を見て、
なんか面白そうだなと思って読んでみたのがきっかけ。
、、、と、そのきっかけはよいとして
ストーリーはざっくりこんなお話。
・元キャリアコンサルタントの高校教師:高梨が主人公
(一見、暗めのキャラ設定)
・夢を追い、夢に破れた生徒に対して
卒業後にも手を差し伸べる
・彼/彼女らに「諦めるための授業」として、
キャリアの考え方を引用しつつサポートする
というような内容です。
■こう書くと
単調に聞こえてしまいそうですが
この話が面白いのが、
”エンターテイメント性を出しながらも
かなり現実的な話を描いている”
ところ。
表現の大げさ感はありますが、
”夢を追って敗れると、
人は大いに傷つくこともある”
”ゆえに夢は時に呪いであり
人を殺しかねない”
というスタンスを持つ主人公が
この話の中心人物となります。
(彼はピアニストを目指しており、
夢破れた経験を持っています)
■その痛みと影響を知る故に、
生徒の夢を応援するというよりも、
「現実を突きつける」
ことで覚悟を問うのです。
例えば、
「声優を目指したい」
という女子生徒がいれば
市場の現実、勝率、
枕営業などの闇の部分、
可能性に見込みの薄さを伝え、
先の見通しもあまりなく、
期待ができないだろう
(このあたりのデータの引用も面白い。
VUCAの時代、とか出てきます)
を淡々と話します。
■しかし、女子生徒は若く、
夢に溢れています。
ゆえに、「夢を追う」のです。
しかし、こうした現実は
漫画では叶えられますが、
この漫画では多くのストーリーで、
叶わないのです。
かつ、叶うとしても予想と違う、
というような現実です。
夢破れ、生活が荒む。
「こんなはずじゃなかった・・・」
そして、途方にくれます。
■そんなとき
「夢なし先生」こと、
元キャリコンの高梨先生が現れる。
そして悩む元教え子に、
こう言うのです。
以下、本書から引用いたします。
(ここから)
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(夢破れ、立ちすくむ生徒に対してファミレスで話しをする)
高梨先生
「キャリアの理論家の一人にブリッジズという人がいます」
ブリッジズが唱えた”トランジション3段階理論”があります」
「ここでいう”トランジション”とは「転機」を意味します。
今、三田さん(生徒)は、この終焉”何かが終わる時期”にいるとします」
「この中立圏”ニュートラルゾーン”の過ごし方で
”新しい始まりの時期”の可能性や質が大きく変わると言っています」
「今、三田さんに必要なことは、
”思い切って捨てるものは何かを決める”
”継続/維持するものは何かを明らかにする”。」
※夢なし先生の進路指導(1) No94-95/217 kindleより引用
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(ここまで)
■ちなみに、
言葉だけですが”漫画”ですので
わかりやすい絵がメインです。
上記の言葉だけ切り取ると、
キャリア教育の教科書みたいですが、
繰り返しますが、エンタメ性のある漫画です。
ただ、要所に、
こうしたキャリア教育の考え方や理論が
差し込まれてきているのが特徴。
その考えを物語の中で上手に活かしながら
生徒の道を示すのが「なるほど!」と唸らされます。
■実際の現実は
この漫画のように、
思い描いていた「夢」を叶えて、
ちゃんちゃん、で終わりません。
・プロになりたい、
・アイドルになりたい、
・目指していた職業に就きたい
そうした一時点での「夢」は、
あくまでも泡沫のもの。
その「夢」を目指して叶えられる可能性は
実は必ずしも高いとは言えません。
夢破れ、でも今ある選択肢や
めぐり合わせなどからできることを選んでいく、、、
そうしたアクションこそが
多くの人にとっては一般的ですし、
現実的です。
あるいは、仮に
その「夢」と呼んだものを叶えても、
そこから人生はもっと続くわけであり
その先の悩みだって生まれるわけです。
■キャリアとは、
紆余曲折あり、必ずしも
単純なハッピーエンドで終わるものではない。
山あり谷ありで、その中に
自分なりに意味付けをしていくという、
旅の轍、あるいは物語が”キャリア”なのです。
この漫画はそんなリアルな
”キャリア”に対しての
一つの視点を与えてくれる
そんな作品だと感じさせられます。
■ということで、以下、
書籍のご紹介です。
(ここから)
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夢のどん底から生徒を救う革新の教師物語!
元キャリアコンサルタントの高校教師・高梨(たかなし)は、
生徒から「夢なし先生」と呼ばれている。
彼は進路指導時、生徒の「夢」に対し
現実的なデータや世の中の実情を突きつけ、
否定し、覚悟を問う。
それでも夢を追い、のちに夢破れ、
どん底の中でも諦めきれない生徒がいれば、
卒業後でも手を差し伸べ、「諦めるための授業」を行うのだった。
『群青戦記』『リビドーズ』の作者が放つ、新時代の教師物語!
※Amazon本の紹介より
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(ここまで)
■余談ですが、
巻末の「参考文献」に
私も受験したキャリアコンサルタントの勉強や
大学院のキャリアの授業で学んだ参考図書が
色々と掲載されていました。
ああ、この学びをこんな風な
エンターテイメント作品として
多くの人に届けられるのだ!
ということに感動を覚えました。
これからのキャリアを考える学生にも、
キャリアコンサルタントの方にもお勧めです。
サラッと読めるので、息抜きにもよいかと!
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<今週の一冊>
『夢なし先生の進路指導』
笠原真樹 (著)
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