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3507号 2023年10月1日

今週の一冊『サビカス キャリア構成理論 四つの〈物語〉で学ぶキャリアの形成と発達』

(本日のお話 2369字/読了時間4分)

■こんにちは。紀藤です。

昨日は大学院のアルムナイの仲間と
『キャリア構成理論』についての勉強会。

その他、夕方は5キロのランニング、
そして5キロのウォーキング&読書でした。



さて、本日のお話です。

毎週日曜日は、お勧めの一冊をご紹介する
「今週の一冊」のコーナー。

今週の一冊は、

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『サビカス キャリア構成理論 四つの〈物語〉で学ぶキャリアの形成と発達』

マーク・L・サビカス (著), 水野 修次郎 (翻訳), 長谷川 能扶子 (翻訳)


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です。

■「この本を読んで、
生きるのが少し楽になった気がする」

先日、この本について
大学院の仲間と勉強会を行って
率直な感想を述べたときの私の第一声です。

別に生きるのが辛い、、、

というわけではないのですが
生きていると色々思うこともあるわけで。

そして、他のメンバーからも

「自分の中のダークな部分について
他の人もあるんだと知って楽になった」

こうしたコメントがあったことも
印象的でした。

■さて、本書ですが、

キャリアの世界では大変有名な、
マーク・サビカス先生の、

「キャリア構成理論」

について集大成として書かれた本とされています。

この本の特徴は

・4人の人物の人生を
数十年単位で追いかけていき(!)、

・その特定の人物の軌跡を
「キャリア構成理論」の観点から
読み解いていく内容

となっていることです。

それぞれの物語が
めちゃくちゃ重厚で、引き込まれるのです。

※「それぞれの人物の物語」は、
バックナンバーにまとめています。
面白い、では片付けられない重たさがあります。
↓↓

◯『サビカスのキャリア構成理論』を読む

・「道を拓く人」の原動力_ロバートの軌跡
https://1lejend.com/b/detail/HSfoIRnMfw/4600020/

・「守る人」の義務_ウィリアムの軌跡
https://1lejend.com/b/detail/HSfoIRnMfw/4604299/

・「道を探す人」の冒険_ポールの軌跡
https://1lejend.com/b/detail/HSfoIRnMfw/4605549/

・「漂う人」の不安_フレッドの軌跡
https://1lejend.com/b/detail/HSfoIRnMfw/4606204/

■本書は全428ページと重厚な内容です。

しかし、
その2/3くらいの紙面では
「4人の人生の物語」が描かれます。

彼らが生まれてからの

家庭環境の話、
幼少期を振り返った時の話。
生まれてから年を重ねる軌跡。

彼らからの

25歳の頃の語り、
35歳の頃の語り、
そして59歳の語りを記録し、

・両親にどのような影響を受けたのか、

・どのような生得的な気質を持っていたのか

・学生時代、何に興味を持ち、何を選択したのか

・仕事では何を選び、そして何を選択基準としているのか

・どのような痛みや葛藤を抱えてきたのか(いるのか)

など、時間軸をまたいだ、
質的なインタビューの結果を、

サビカス先生のキャリア構成理論の観点から
紐解いていくのです。

■その中で見えてきたもの。

私が思ったことは、

「誰もが、”自分という存在の種子”が落ちた場所で、
根を伸ばし、茎を伸ばそうとしている」

という事実がある、という感想でした。

どういうことかというと、
それぞれの物語には、

・家庭の中で愛情を受け、
他者と親密な関係を可能にする
「安定的な”愛着”」を獲得できた者

もいれば、

・親からの十分な愛情を受けられず
他者と親密になることを避ける「拒絶ー回避型の”愛着”」
となった者

もいました。

そしてその”愛着”という
枠組みは彼らの”気質”にも影響します。

・人間関係において外交的な志向を持ち、
社会的基準や規範に対して受容的な志向を示す”気質”
(”安心するアルファ志向”といいます)を持った者

もいれば、

・他者や行動に対して内向的な志向を持ち、
ルールや社会規範に対して疑問を持つ人、
すなわち、内気で引っ込み思案となった”気質”
(”恐れるデルタ志向”と呼びます)を持つようになった者

もいます。

■彼らが努力する、しない以前に

その自らの存在という
”種子”が落ちた場所によって、

自分のキャリアの初期、
すなわち土台となる地盤において、

・どっしりとした根を張ることができた者

もいれば、

・乾いた硬い岩盤で
浅く不安定な根を張るしかできなかった者

もいるのです。

4人の物語を読むと、

それぞれの種子が、自らの意思で
環境を選ぶことができないという事実を理解します。

しかし、どんな種子も、
数十年の軌跡の中で、与えられた環境下で根を貼ろうともがき、
重力に逆らい、枝を伸ばし、葉を広げようとしていることに
気付かされます。

4人の物語は

・最も成功している「道を拓く人の物語」

から始まり、

・不安を抱えながらも晩年、
なんとか社会に適応する「漂う人の物語」

もあります。

成功が素晴らしいものと思うかも知れないし
成功に憧れることもある。

でもそれだけが正解などでは決してないし、
大輪の花を咲かせることだけがキャリアではない、

色んな物語が会ってよいのだ。

そんな風に自分の中の
”成功という名の囚われ”から
解放されたような気もしたのでした。

■本書は一方(というか主軸としても)
「キャリアの専門書」でもあります。

ゆえに、それぞれの物語を、
キャリア構成理論の観点から
丁寧に分析もしています。

たとえば、その要素としては、
以下のようなものです。

(説明をすると非常に長くなるので
こんなかんじ、とだけ紹介させていただきます)

***

<自己構成プロセスの3つの要素>

1)自己を体系立てる「アクター」

・4つの「愛着」スキーマ
・4つの「気質」戦略

2)自己調整する「エージェント」

・動機づけ
- ニーズ・価値・興味
- 昇進焦点型・予防焦点型

・アダプタビリティ
- 適応準備、適応資源、適応反応

3)自己概念化する「オーサー」

・リフレクティビティ
(未来へと意味を構築する)

***

内容は難しいので、
割愛させていただきますが

こうしたフレームを持つことで、
”みんな違ってみんな良い”の格言のようなものに、

キャリアの理論という観点からも
納得ができるような気がします。

■物語と理論の高い次元でのコラボレーション。

自分も自分の物語を、
精一杯生きてみよう、

そんな事を思わせてもらえる一冊でした。

最後までお読み頂き、ありがとうございました。

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<今週の一冊>

『サビカス キャリア構成理論 四つの〈物語〉で学ぶキャリアの形成と発達』

マーク・L・サビカス (著), 水野 修次郎 (翻訳), 長谷川 能扶子 (翻訳)

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