今週の一冊『高業績で魅力ある会社とチームのためのデータサイエンス ―職場と仕事を数値化する測定尺度、チェックリスト集』
(本日のお話 2567字/読了時間3分)
■こんにちは。紀藤です。
昨日は、土曜日は息子の運動会。
2歳なので、
・10mくらいのかけっこ、
・親子で一緒にリズムで遊ぼう!的な種目
かけっこはできましたが、後者はひたすら怯え続けており、
木にしがみつくナマケモノのようになっておりました(苦笑)
ああいう場で楽しむ子もいれば、
そういうわけでもない子もいて、
色々な子供がいるものだな、と感じた1日でした。
*
さて、本日のお話です。
毎週日曜日はお勧めの一冊をご紹介する
「今週の一冊」のコーナー。
今週の一冊は
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『高業績で魅力ある会社とチームのためのデータサイエンス
―職場と仕事を数値化する測定尺度、チェックリスト集』
松本真作 (著)/労働政策研究・研修機構
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です。
■「自分たちの会社(職場)は、
どこが強みで、どこが問題なのだろうか?」
人事や事業部長、経営者など、
人と組織に関わる役割の方とお話をすると、
このような疑問を持たれる方は少なくないと感じます。
「他社と比べて、どうなのか?」
「他社といっても、特に同じくらいの規模感の
他社と比べたらどうか?」
「どこが課題なのだろうか?」
、、、
■こうしたことが気になって、
様々な調査を行う組織も少なくなりません。
例えば、
・従業員満足度調査(ES)
・心理的安全性の調査
・エンゲージメントの調査
・働きがいのある会社
などなど。
こうした事を通じて、
組織の状態がスコア化されると、
組織の「現状の見える化」の一手となるため、
有効な施策に繋げることもできるのでしょう。
■しかしながら、
「職場調査」といってもその種類が多く、
いくつかの課題が挙げられるようです。
本書の問題提起を上げると、
以下の4つが挙げられていました。
1,会社やチームの状況を構成する要素として、どのようなものがあるのかわからない
(経営、ビジョン、上司、待遇、教育など、たくさんあって要素分解が難しい)
2,数値化する調査はたくさんあるが、一面的なものであり、多面的に捉えようとする研究が少ない
(例えば、関係性のみ、待遇のみ、など)
3,経営コンサルティングの会社から、多面的な調査を実施されることはあるが、細かい情報や背景が公開されない
4,他社と比較したデータがない
です。
こうした課題を考慮した上で、
「職場や会社の課題を
全般的に確認するための”ものさし”」
として紹介されているのが、
本書の中心になっている
『HRMチェックリスト』
という測定尺度です。
■HRMチェックリストを始め、
本書で紹介される測定尺度は
・2000社以上、3万名近くの従業員データを収集
・組織コミットメントやジョブインボルブメントなど
高業績に繋がるとされる各種の研究との因果関係も検討
・HRMチェックリストを中心とした
6領域 21尺度 84設問を提示し、
誰もが使えるデータサイエンスとして提示する
ことを行っています。
■本を見てみると、
30名までの会社
300名までの会社
3000人以上の会社など規模に応じた平均値の紹介、
また組織の現状について知りたいことと、
それをどのようにチェックすればよいかも提示しています。
(例:職場の課題を広く確認したい→HRMチェックリスト
定着率が悪い→ 組織コミットメントチェックリスト
採用で人が集まらない→ 仕事と職場の魅力チェックリスト など)
実に、ありがたい測定尺度です。。。
■このような測定尺度が
明らかにされることによって
「お金をかけて調査はできないし、
何から見ていけばよいかわからないけれど、
まず全般的に組織について健康診断をしたい」
そうしたニーズに対して
”人と組織づくりへのデータサイエンスへの一歩”
を踏み出すことができる書籍です。
以下、『HRMチェックリスト』で掲げられている
6領域と下位尺度をご紹介いたします。
(ここから)
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【ワークシチュエーションの6領域と下位尺度の概要】
<1 職務>
a.達成:仕事で自分の力を発揮し、達成感を得ることができる。
b.成長:仕事で自分の能力を生かしたり伸ばしたりすることができる。
c.自律性:業務の遂行手順や目標の設定は自分が決められる。
d.参画:仕事に関係する決定には自分の意見が反映されている。
e.意義:仕事は組織、自分の人生、社会に関係する有意義なものである。
<2 上司やリーダー>
f.承認・支持:上司は自分の能力を評価し、成長のためにサポートしてくれる。
g.公正・信頼:上司は部下を正当に扱い、公正であり、信頼できる。
h.指導・支援:上司は仕事がよくわかっており、支援してくれる。
<3 同僚や顧客との関係>
i.職場の人間関係:織場は良い人間関係であり、友好的、協力的な雰囲気である。
j.チームワーク:同僚とは良いチームワークがあり、お互いに助け合って仕事をしている。
k.顧客との関係:仕事相手とは信頼関係があり、コミュニケーションは円滑である。
<4 ビジョン・経営者>
I.ビジョン・戦略:経営陣の管理方針や仕事戦略は妥当なもので皆がそれに賛同している。
m.経営者と従業員:経営陣は成員の意見を尊重し、それらに耳を傾けるようにしている。
n.経営者への信頼:経営陣の行いは倫理的に正しく、成貝に信頼されている。
o.仕事の革新:経営陣は新しい試みやアイデアに対して受容的で、それを奨励している。
<5 処遇・報酬>
p.昇進・昇格・キャリア:昇進・昇格は公正に行われ、活躍の場、キャリアコースが用意されている。
q.評価・給与:給与制度は公正で業績に見合った十分な報酬が得られる。
<6 能力開発・福利厚生・生活サポート >
r.教育・研修:必要な研修や個人のキャリアに役立つ教育が受けられる。
s.福利厚生:福利厚生は整備され、各側面で支援してくれる。
t.生活サポート:家庭生活との両立を可能にするよう各種制度が用意されている。
u.労働条件:勤務時間は適切であり、安全で衛生的である。
※P15より引用
※具体的な調査のための質問は本書にて公開されています
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(ここまで)
■いやはや、改めてありがたい尺度です。
今ではGoogleフォームなどが簡単に作成できて
調査のためのハードルが下がってきているので、
こうした測定尺度があるだけで、
実施することは容易になってきています。
もちろん調査を実施したものの
「具体的な施策に繋げられていない」と
「フィードバックがないため、逆効果になってしまう」
という実施上の課題もあるため
調査を行うとしたら、
戦略的に行うこと(覚悟を持って行うこと)も
当然必要にはなってきます。
ただ重要な武器を渡してくれている、
そんな一冊だと感じた次第です。
データに基づいた人事施策を
まずは自分でやってみたいというマネジャーや人事の方には、
お勧めの一冊でございます。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
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<今週の一冊>
『高業績で魅力ある会社とチームのためのデータサイエンス
―職場と仕事を数値化する測定尺度、チェックリスト集』
松本真作 (著)/労働政策研究・研修機構
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