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3613号 2024年1月16日

強みとパフォーマンスの関係は「逆U字」である?! ~書籍『ストレングスベースのリーダーシップコーチング』(4)

(本日のお話 3056字/読了時間5分)

■こんにちは。紀藤です。

昨日は終日、ストレングス・ファインダー研修の実施でした。
手挙げ式で集まっていただきましたが、多くの方が
「強み」について色々と発見いただいたようで、私も嬉しく思いました。

お互いの強みを見ることによる、温かい空気感が
毎度のこと、とても素晴らしいな、と嬉しくなります。

今週もあと3件の研修がありますので、
少しでも良いものをお届けできるように尽力したいと思います。



さて、本日のお話です。
本日も前回に引き続き「ストレングスベースのリーダーシップ・コーチング」をテーマにした書籍を紹介いたします。

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<今回ご紹介の文献>
『Strength-Based Leadership Coaching in Organizations:An Evidence-Based Guide to Positive Leadership Development』
(組織におけるストレングス・ベースのリーダーシップ・コーチング:ポジティブなリーダーシップ開発のためのエビデンスに基づくガイド)_第ニ章後半より
Doug MacKie (2016)
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■強みは「出し加減」が大事

◯強みとパフォーマンスの関係は「逆U字」である

さて、「強み」と「リーダーシップのパフォーマンス」の関係ですが、一言で表すと『逆U字』がキーワードです。両者の関係がどのように影響しあうかはポジティブ組織心理学の分野で多くの研究がされていますが、「逆U字」を描くとされています(Kariser and Ocerfield,2010)。

例えば、リーダーシップの脱線、ポジティブな感情に関する研究では、「“強み”として考えられる変数(楽観性・自信など)」と「パフォーマンス基準(積極性・創造性など)」は、曲線的な関係(逆U字型)であり、強みを文脈に関係なく、無秩序に活用すると、パフォーマンスに悪影響を及ぼす、といいます(Kaiser and Overfiels,2011)。

つまり、強みは「出し加減」が大事!ということですね。

著書では、「自信度(強みの変数の一つ)」と「パフォーマンス」の関連について、逆U字になることをモデルとして示していました。

◯「逆U字」であることを示す様々な研究

実際のところ、概要はそうかもだけど、具体的な研究はあるの?ということで、「逆U字」となる様々なエビデンス(証拠)が紹介されていました。以下、著書で紹介されていた研究を紹介します。

●リーダーシップ脱線の研究から得られたエビデンス(逆U字型になる)
・強みはやりすぎると弱みになる。過剰な活用や、文脈上の誤用という形で現れる。強みの過剰な適用は「偏ったリーダーシップ」と呼ばれている。

●パーソナリティ研究からエビデンス(逆U字型になる)
・性格と職務遂行能力についても、「曲線(逆U字型)」の関係を示す証拠が示されている(Le et al,2011)
。例えば、パーソナリティの「良心性」が誇張されて「優柔不断」として現れる、あるいは「情緒安定性」が「無関心さ」として現れるなどがある。

●アサーティブネスとリーダーシップの関係(逆U字になる)
こちらを調べたデータによると(Ames and Flynn,2007)中程度のアサーティブネスは成果の達成を促進するが、高いレベルのアサーティブネスは対人関係の質を低下させ、他者を介した達成を難しくすることがわかっている。

●ポジティブな感情に関する研究からのエビデンス(逆U字型になる)
直感的にポジティブな感情はパフォーマンスと関連しているようにみえる。楽観主義、自信、希望をより多く持つ人は、目標を長く継続するし、挫折から回復するからである。
しかし意外なことに「“ポジティブな感情”と“積極性”の関係」も曲線的(逆U字型)であることがわかっている。
ポジティブな感情が高いと、物事が上手く言っていると認識されるため積極的に行動する必要が減るから、と想定される。

●「“ポジティブな感情”と“創造性”の関係」(やっぱり逆U字型)こ
れも同様に逆U字になっていることが示されている(Davis,2008)。
過度の楽観主義は、準備不足やリスクの過小評価につながるというマイナス面がある(Grant and Schwartz,2011)。
また、あまりにもポジティブすぎると、空虚で不誠実な感じがしてしまうことも。

また、最近の研究では、パフォーマンスの高いチームのポジティブ比率は3:1と言われています(ロサダ比率)。
つまりネガティブなコメント1件に対して、ポジティブなコメントが3件程度とされていますが、これは言い換えれば「ポジティブもとにかく高ければいいというわけではない」ともいえます。
もちろん、ある程度は、自信のなさや悲観的な視点、リスクなども考えたほうが、積極性や創造性が生まれるということは覚えておいてよさそうです。

***

■強みは「文脈」が大事

◯強みは状況や環境に併せて適用すべし

強みをパフォーマンスにつなげるためには、「文脈」を見ることが必要です。具体的に言うと、自分の特性(強みの要素)と環境の相互作用を見よ、ということ。

たとえば「外向性」は「リーダーシップ行動」と正の相関関係を示しますが、この特性(強みの要素)が機能するか、あるいは機能しないかという「文脈」はあります。例として、営業部門で、顧客や取引先と継続的に関わり信頼関係を築く上で「外向性」は必要不可欠だが、静かに考えることが当たり前のIT部門などでは、必ずしも「外向性」は機能しないかもしれません。

よって、強みは“適用される状況や環境”に併せて適用する必要があります。

◯強みを試す柔軟性が必要

また、自分の成長にストレングスベースのアプローチを役立てるためには、“自分の役割内で、結果を出す方法を選択できること“が必要であるとしています(仕事の自律性が高い状態)。その状況下で、自らが最適な結果を得るために、“強みの組み合わせ”をいろいろと試すことができるので、強みの適用方法を広げることができるようです。

◯弱点を無視していいわけではない

またもう一つ大事なポイントですが、「ストレングスベースのアプローチは弱みや文脈を無視してよいわけではない」と述べています。もちろん、ポジティブ心理学の研究は強みを過度に活用することの危険性よりも、強みに基づいた行動がないことの悪影響に焦点を当てています(Grant and Schwartz,2011)。しかし、かといってストレングスベースのアプローチが弱点を無視したり、出し加減(発現度)や文脈やを考慮せずに、闇雲に強みを適用することを意味していません。

弱みは無視するのではなく、対処をしましょう。

***

■まとめ

ということで、第ニ章の話も長くなりましたが、ポイントとしては以下の通りです。

1)変えやすい強みとそうでない強みがある
「状態-特性連続体モデル」からは、感情・性格・特性・才能など、強みの発達のしやすさについても、比較的変えやすいもの、安定しているものがあることが示唆を与えている。
強みの開発も、状況に応じて選択をすることも重要である

2)「強みとパフォーマンスの関係」は「逆U字型」である
強みの過剰使用、文脈を考慮しないやり方に注意しなければ、弱みになってしまう可能性もある。

最後に、ストレングスベースのアプローチでは「成長思考」は重要である、とも述べていました。
最近の才能のエピジェネティックスの研究では、相対的に固定されている知能という“特性”でさえも、発達する可能性があるとしており、そこには成長思考が寄与しているとします。

つまり、「強みは開発可能である」という前提に立つことが、ストレングス・ベースのアプローチでは重要だと言えます。

最後までお読み頂き、ありがとうございました!

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