パンデミックの不安への「性格的強みが果たす役割」とは? ーインドネシア461名への調査からわかったことー
(本日のお話 2498字/読了時間3分)
■こんにちは。紀藤です。
昨日は3件のアポイント。
また夜は趣味のピアノのお稽古とランニング2.5kmでした。
2年前からピアノの発表会へと出始めて、今年3月下旬にも3度目の参加です。
今回はリストの『愛の夢』なる曲をやるのですが、
かつて挑戦し、なんとか弾いた勢い系の曲(幻想即興曲と革命)とも違う難しさ。
ようやく曲らしくなってきたレベルですが
残りの時間で行けるところまで行きたいと思います
*
さて、本日のお話です。
本日のお話は「パンデミックの不安と性格的な強みの関係」という内容の論文を見つけましたので、こちらの内容についてご紹介したいと思います。それでは、早速まいりましょう!
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<今回ご紹介の論文>
『Covid-19の知らせを受ける不安:性格的な強さが果たす役割』
Junaidin, Junaidin, Nurulsani S. Abd Latif, and Amalia S. J. Kahar. 2021. “Anxiety from Receiving News about Covid-19: The Role of Character Strength.” HUMANITAS: Indonesian Psychological Journal 18 (1): 24–31.
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■10秒で分かる論文のポイント
・本論文はCovid-19がインドネシアで増え続けてており、ロックダウンの最中に行われた調査である。
・内容は、インドネシア在住のインドネシア人461名に対して、「強み」と「不安」についての質問紙調査を行い、分析した。
・その結果、「性格的強み」が「不安」を予測する因子であることが示された。
■強みはストレスの対処スキルを高める
強みはウェルビーイング(持続的な幸福)を初めとして、精神的な健康やストレス状態から回復するレジリエンスなど様々な領域との関連性が明らかになっています。例えば、以下のようなものです。
・自分の強みを知り、新しい方法で使うことは、うつ症状を減少させ、幸福感を高める。その効果は6ヶ月間持続する(Seligman et al, 2005)
・強みを活用することで、ストレスへの対処スキルが向上し、ストレスに関するネガティブな影響が低下した。(Harzer&Ruch, 2015)
・強みを活用することでストレスが減少し、ポジティブな感情と活力、自己肯定感が上昇し、ウェルビーイングを予測した(Lavy, S., Littman, 2017)
これまでの研究からも、強みはストレスに対する対処(コーピング)にポジティブな影響があるような研究がなされています。
そして、今回の論文は、それらの内容も踏まえて、2019年から世界的に起こったパンデミックにおいて、「性格的強み(の総合スコア)が高い人は、不安に対して感じにくいのではないか?」という疑問を持ち、調査を行ったのでした。
■研究の全体像
研究のデザインとしては、以下のような概要となっています。
◯参加者
インドネシア在住のインドネシア人 461名
(参加者は「スノーボールサンプリング」によって集められました。これは参加者が別の参加者を数名推薦し、雪だるまのように増やすことで、幅広い対象者を集めることができる手法とのこと。今回はパンデミックのロックダウン下であったためこの手法が用いられたそうです)
◯調査尺度・分析方法
今回の調査では、シンプルに2つの尺度について質問がされています。
1)「性格的な強み」:強みを測定するアセスメントであるVIAの簡易版「Character Strength Rating Form(Scale)」(Ruch,2014)を利用
2)「不安」:ハミルトン不安評価尺度(1959)を利用
性格的な強みが不安を予測するかを調べるため、「不安」を従属変数として回帰分析・ANOVA検定を行い分析をしたとのこと。
■結果わかったこと
性格の強さが、不安を予測していた(しかし影響度は2.8%)
回帰分析の結果、F=13.232、P=0.00で、性格的強さがCovid-19を受け取る際の不安を予測している(性格の高さが低いほど不安は低い)、と著者らは結論づけています。
一方、”性格的強みが不安に寄与する割合は「2.8%」であった。不安の97.2%は別の要因を受けている”と述べてもいます。性格的強みが不安に寄与する割合はごく限定的のようです。
その他に、「性別による性格的強みの違いはなかった」「年齢層による不安の差が見られた」などが記載されていました。
しかし残念ながら、上記のことを示すようなデータセットを、論文中では見つけられませんでした
■まとめ(個人的感想)
「Covid-19のニュースに対する不安と性格的強み」という研究テーマも興味深かったですし、また2020年のロックダウン下の中で「スノーボールサンプリング」という手法を用いて、461名の人に対して調査を実施をした研究者の行動力(意地なのか意志なのか)がすごい・・・!と思いました。
研究とは関係ないですが、そこには、研究をされた方が人生の時間を費やして記述した物語があると感じます。そして「インドネシア心理学雑誌」への掲載論文を読むのもはじめてで、こんなものもあるのか!と発見でした。
一方、マイナスのポイントとしては、残念ながら率直な感想としては「情報に欠ける論文であった」という思わざるを得ない内容でした(涙)。
他の論文では押さえられている、質問内容の詳細、各尺度の相関分析、分析プロセスの詳細などの記載がないことなど。
また、活用されている強みの質問紙の名称も「Character Strength Scale」ではなく、正しくは「Character Strength Rating Form(Ruch, 2014)」であると思われます。
また記述されている「性格的強みが不安の2.8%を示す」の根拠となるデータが示されていない、などもあり、果たしてどこまで信頼してよいのだろう、、、と思ってしまったのでした。(私の解読能力がないだけかもしれませんが)
改めて、いろんな論文があるんだなあ、、、と視点が広がる気もしましたし、信頼できる論文、そうでない論文なども、人が手掛ける以上はあるものだと思いますので、そのあたりも見分けられるようになりたいな、そんなことを感じた次第です。
最後までお読み頂き、ありがとうございました!
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