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3652号 2024年2月24日

強みはランク1位だからといっても、使えているとは限らない?! ~強みの適用とポジティブ経験の相関研究~

(本日のお話 2252字/読了時間4分)

■こんにちは。紀藤です。

昨日は、沖縄のことを学ぶスタディツアー(合宿)への参加。
那覇の平和祈念公園資料館や、JICA沖縄センターの見学などでした。
大変、勉強になりました。今日、明日も続くので、とても楽しみです。
このあたりのお話はまた後日、ぜひお伝えさせて下さい。



さて本日のお話です。

本日も先日の記事でご紹介した論文より、ある知見をご共有させていただければと思います。

今日のテーマは、ややマニアックな話かもしれません。
というのも、「強みランクと自分の強み活用の肌感覚の乖離を探求する研究」だからです(なんのことや…と思われたかもしれませんが、その理由は本編にてご紹介したいと思います)。

一方、自分の疑問に思ってたモヤモヤを解消してくれるような興味深い調査でもありました。ということで、早速中身に入っていきたいと思います!

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<今日ご紹介の論文>
『特徴的な性格的強みとポジティブな経験を仕事に活かす』
Harzer, Claudia, and Willibald Ruch. (2013).
“The Application of Signature Character Strengths and Positive Experiences at Work.” Journal of Happiness Studies 14 (3): 965–83.
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■強みは「ランク1位から順に使っているものなのか?」問題
私(紀藤)が、ストレングス・ファインダーを活用して、強みを読み解くワークショップを実施する時に、毎度のこと、参加者の中でこのような意見をお持ちの方が現れます。それは、

「アセスメントの結果を見てみると、自分の強みの第3位は全然当てはまっていると思えないけど、第8位はすごく当てはまる気がします。これどう読み解けばいいんですか?」

という意見です。

そしてこの感覚を持つ方は、実に多いです。

アセスメント結果が1位、2位、3位…10位などと並んでいると、「自分の強みはその順番で現れているものなのだろう」と感じてしまうのも分かる気がします。

では、実際のところ、どうなのか? このことをストレングス・ファインダーではなく「VIA」の順位で検証した内容が、本論文に含まれていました。

■検証方法
では、具体的にどのように調べたのでしょうか。以下、そのプロセスと結果です。

●調査対象者
まず、調査対象者は、ドイツ語を話す1,111名を対象に行いました。

●調査内容
対象者に対して、(1)「VIA(強みの活用テスト)」、(2)「性格的強みの適用可能性評価尺度(ACS-RS)」(強みをどれくらい活用しているか)、(3)「仕事におけるポジティブな経験」を調査しました。

●予測した仮説
最高ランクの強み(=強みの保有と強みの適用が高い)のほうが、それ以下のランクよりも、「仕事におけるポジティブな経験」と強い関係があると予測しました。
つまり、「自分が持っていて使っていると感じる”強み”のほうが、自分が持っていない・使っていないと感じる強みよりも、ポジティブな気持ちをもたらすだろう」ということです。

●分析方法
上記の仮説について、以下の分析をしました。個人の結果のVIAの強みランク1~24位それぞれについて、仕事のポジティブな経験を元にした因子「職場でのポジティブ経験」と「性格的強みの適用可能性」の偏相関(=年齢など他の変数の影響を取り除いた相関)を分析し、結果を検証しました。

■結果わかったこと
その結果わかったことは、大きく2つありました。

(1)強みの1位から5or6位までは、「職場でのポジティブ経験」との相関は減少する傾向があった
つまり、1~6位までは、ランクが高いほうが「職場でのポジティブ経験」をより感じているということです。強みを活用していると、仕事満足度が高まる、幸福感が高まると言われていますので、トップ5は「よりランクが高いほうが強みと本人も自覚しやすい」と言えるかもしれません。

(2)強みの7~16位まではプラトーが続く。その後、強みの17~24位まで再び「職場でのポジティブ経験」との相関が減少していく
興味深いことに、7~16位まではプラトー(平原)状態になっているため、この結果だけみると、7位も15位も「職場でのポジティブ経験」との相関は変わらない(割と団子状態)という結果になりました。ですが、17位~24位までは、また順に下がっていく形になりました。

■まとめ(個人的感想)
上記研究は、あくまで「VIA」を用いた研究となります。また、強みのランクにおける「職場でのポジティブ経験」と「性格的強みの適用可能性」の相関を調査したという分析です。ゆえに私が冒頭に挙げた「上位の強みだけど使っている実感がない」という疑問に真正面から答えるものではありません。
しかしこの研究結果でわかった、

”1位の強みに近づくほど「強みを使っている感覚(=性格的強みの適用可能性)」と「職場でやりがいや喜び、意味を感じる(=職場でのポジティブ経験)」との繋がりが強い”

というのは、自分の中にある「強みの存在感」と比較的一致するようなものにも思えます。また結果のグラフはあくまでも「負の比例の”傾向”」を示すだけです。
なので、1,111名の調査だと、1位より3位のほうが相関が実は高いとか、2位より7位のほうが実は相関が高いという、完全なる負の比例ではないというのも、自然科学ではない人間たる”ゆらぎ”を感じる結果でもあると感じました。

…と、少しまとまりがなくなってしまいましたが、「強みの活用は1→10位まで、きれいに活用感が高い並ぶわけではない」ということに一つの示唆を与えてくれた内容だった、と思った次第です。

最後までお読み頂き、ありがとうございました!

※本日のメルマガは「note」にも、図表付きでより詳しく掲載しています。
よろしければぜひご覧ください。

<noteの記事はこちら>

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<本日の名言>

現実とは、あなたの外側にあるだけでなく、
あなたの内側にもあるのです。

ドロシー・ロー・ノルト
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