強みの活用はネガティブな気持ちを抑制する ーカナダ424名への調査結果ー
(本日のお話 2256字/読了時間3分)
■こんにちは。紀藤です。
昨日は終日外部人事顧問として関わらせていただいている企業様への
コーチング・コンサルティングでした。
また子どものお迎えに行った後、夜は1件のミーティング。
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さて本日のお話です。
今日は「強み活用がポジティブ感情とネガティブ感情に与える影響」についての論文のご紹介でございます。
この研究が興味深いところは、「強みはポジティブな感情には影響があるけど、”ネガティブな感情”にはどういった影響があるのか?」に焦点を当てたところです。
結論、「強みはネガティブな感情を抑えたよ」というお話です。
ということで、その研究プロセスと内容について、詳しくみてまいりましょう!
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<今回ご紹介の論文>
『仕事における強みの活用:仕事のパフォーマンスを説明する重要なプロ セスとしてのポジティブ感情とネガティブ感情』
Dubreuil, Philippe, Jamal Ben Mansour, Jacques Forest, François Courcy, and Claude Fernet. (2021). “Strengths Use at Work: Positive and Negative Emotions as Key Processes Explaining Work Performance.” Canadian Journal of Administrative Sciences / Revue Canadienne Des Sciences de L Administration 38 (2): 150–61.
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■30秒でわかる論文のポイント
・これまでの研究で、強みの活用は仕事のパフォーマンスと関連していることがわかっている。しかし、具体的にどのような心理学的プロセスが両者にあるのかは不明である。
・本研究では、ポジティブ感情のブロード・アンド・ビルド理論(拡大構築理論)に基づいて、強みの活用と仕事のパフォーマンスの関係における、ポジティブ感情とネガティブ感情の媒介的役割を検討した。
・その結果、強み活用のポジティブ感情に対する影響はこれまでの知見が確認されたが、ネガティブ感情についても、その発生を抑制し、仕事のパフォーマンスを促進することが示唆された。
という内容でした。
■強みはポジティブ感情を促進するが、ネガティブ感情はどうなのか?
さて、強みの活用がポジティブ感情に与える影響については、強みの活用がポジティブ感情を媒介し、幸福度に影響を与える研究(Meyersら, 2017)などがあります。
ポジティブ心理学でも軸となっている「強み」の活用は、ポジティブ感情はもとより、自己効力感、自尊心、主観的活力、エンゲージメント、使命感、組織市民行動などなど、重要な成果に繋がることがわかっています。
その中でも、「ブロード・アンド・ビルド理論(拡大構築理論)」によれば、ポジティブ感情によって、アイデアや社会的な絆を広げ(拡大し)に繋がり、個人的資源を生み出す(構築する)効果があると述べます。
そして、このような内容は多くの研究者が注目してきましたが、ネガティブ感情への影響は考えられてきませんでした。そこで、「ポジティブ感情はもとより、ネガティブ感情に対しても低減させる効果があるのではないか?」と本研究では考えたのでした。
(当たり前のようではありますが、言われてみればポジティブ感情を伸ばすことと、ネガティブ感情を低減させることは、別物なのかも、、、と思えます)
■研究の全体像
ではどのような研究だったのか、以下ポイントをみてまいりましょう。
◯研究の仮説
仮説1:強みの活用は仕事のパフォーマンスを正に予測する
仮説2:ポジティブな感情は、正の媒介となる (強みの活用と仕事パフォーマンスの間において)
仮説3:ネガティブな感情は、負の媒介となる(同上)
◯参加者と調査尺度
<参加者>
カナダの人事専門家協会に所属する424名(75%が女性)
<調査尺度>
1)強みの活用(Govindji and Linley, 2007)
2)ポジティブ感情とネガティブ感情(Waston, Clarkら, 1988)
3)仕事のパフォーマンス(Griffin, Neal& Parker, 2007)
■結果
調査内容について、相関分析、因子分析、ならびにポジティブ感情とネガティブ感情の媒介分析を行い、以下の結果を得ました。その結果、以下のことがわかりました。
●わかったこと1:強みの活用は仕事のパフォーマンスを正に予測した
→仮説1を支持した
●わかったこと2:強みの活用と仕事のパフォーマンスの間に対して、ポジティブな感情は正の媒介をし、ネガティブな感情は負の媒介をしていた
→仮説2,3を支持した
強みの活用はポジティブな感情に正の相関、ネガティブな感情と負の相関があり、これらはそれぞれワ ークパフォーマンスとそれぞれ正の相関と負の相関ありました。
■まとめと個人的感想
非常にシンプルな論文だと感じました。同時に、これまでは、色々な成果指標の媒介要因としてポジティブ感情とネガティブ感情が相関分析に入っていたな、、、くらいの取り扱われ方だった印象だったところに、あえて「ネガティブ感情」にスポットを当てたところに、面白さを覚えた論文でもありました。
(いつもご飯のお供にいる「漬物」に注目してみました、みたいなイメージ)
論文も複雑なモデルで解き明かして、おおっ、と思うものもありますが、こうしたものもまた原点に変えるような感覚がして、貴重だと感じた次第です。
最後までお読み頂き、ありがとうございました!
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