「強み活用✕欠点修正」の複合アプローチが最も成果が高くなる?! ー南アフリカの266人の調査結果よりー
(本日のお話 2682字/読了時間3分)
■こんにちは。紀藤です。
昨日は、立教大学の経営学部
ビジネスリーダーシップの授業のセッション1の開催でした。
学生の皆さんのレベルも高く、大変刺激になるとともに、
自分も色々とインプットしないとな・・・と気が引き締まりました。
これからが楽しみです!
*
さて、本日のお話です。
本日も強み論文のご紹介です。
今日の論文は「強み活用のアプローチ✕欠点修正のアプローチの組み合わせが、もっとも従業員にポジティブな成果を与える」という結果を示した調査です。
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<今回ご紹介の論文>
『強み活用に対する組織的支援と欠点修正を組み合わせたアプローチが、従業員の成果に与える影響を調査する』
Els, Crizelle, Karina Mostert, and Marianne Van Woerkom. (2018). “Investigating the Impact of a Combined Approach of Perceived Organisational Support for Strengths Use and Deficit Correction on Employee Outcomes.” SA Journal of Human Resource Management 16 (March). https://doi.org/10.4102/sajhrm.v16i0.882.
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■30秒でわかる論文のポイント
・ポジティブ心理学のパラダイムでは、従業員の強みに焦点を当てることを示唆している。しかし、強みを強調するゆえ、強み活用と欠点修正にバランスよく焦点を当てた複合的アプローチの価値について疑問が投げかけられている。
・本研究の目的は、「強み活用の組織的支援」、「欠点修正のための組織的支援」、「両者を組み合わせたアプローチ」のいずれがワーク・エンゲージメント、学習意欲、職務満足度、離職意向の予測因子となるかを検討することだった。
・その結果、「強み活用の組織的支援」「欠点修正のための組織的支援」のどちらも支援されていると複合的アプローチを経験している従業員は、最も学習意欲が高く、離職意欲は低い結果となった。
というお話です。
繰り返しになりますが「強み活用」&「欠点改善」両方のアプローチが最も効果が高い、とのこと。
では、具体的にどのような調査を行ったのかを見ていきましょう。
■研究の全体像
以下本研究の全体像でございます。
◯参加者
南アフリカの西ケープ州にある公立学校の中等学校教師 266人
(参加者の大半は女性 64.6%であり、平均年齢は48.28歳、大卒者は34.7%)
◯調査尺度
(1)強み活用の組織的支援(5項目)
(2)欠点修正の組織的支援(5項目)(Van Woerkom et al)
(3)ワーク・エンゲージメント(UWES)
(4)学習意欲(Thriving at Work Scale(Porath,2012))
(5)職務満足度(Hellgren, Sjöberg and Sverke (1997) )
(6)離職意向(Sjöberg and Sverke (2000))
◯分析
SPSSを用いて分析し、構造方程式モデリング、一元配置多変量分散分析(MANOVA)を用いて、異なる4つのグループ間でワーク・エンゲージメント、学習意欲、職務満足度、離職意向に違いが存在するかを評価しました。
グループの分け方は、以下の通りとなります。
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●グループ1:強み活用「低」/欠点修正「低」(アプローチ無群)
・強み活用の知覚された組織支援(POS)が低く、欠点修正のPOSが低いグループです。
強みの活用も欠点の修正も、どちらものアプローチも受けていないと感じる従業員のグループです。
●グループ2:強み活用「高」/欠点修正「低」(強みアプローチ群)
・強み活用のPOSが高く、欠点修正に関するPOSが低いグループです。
主に強みベースのアプローチを受けていると感じるグループです。
●グループ3:強み活用「低」/欠点修正「高」(欠点アプローチ群)
・強み活用のPOSが低く、欠点修正に関するPOSが高いグループです。
主に欠点修正のアプローチを受けていると感じるグループです。
●グループ4:強み活用「高」/欠点修正「高」(複合アプローチ群)
・強み活用のPOSが高く、欠点修正に関するPOSも高いグループです。
このグループは、強み活用と欠点修正の複合的なアプローチを受けていると感じるグループです。
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■結果
上記のグループについて、ワークエンゲージメント、学習意欲、職務満足度、離職意向について、それぞれのグループ間の平均値と標準偏差(括弧内の数字)、F値・P値(統計的に有意であることを示す数値)、Partial η²: 効果量(effect size)を分析しました。
◯わかったこと1:複合アプローチ群が最も成果が高かった
その結果、ワークエンゲージメント、学習意欲、職務満足度が高く、離職意向が最も低いものは、グループ4:強み活用「高」/欠点修正「高」(複合アプローチ群)であることがわかりました。
◯わかったこと2:アプローチがない群は最も成果が低かった
そして、ワークエンゲージメント、学習意欲、職務満足度が低く、離職意向が最も高いものは、グループ1:強み活用「低」/欠点修正「低」(アプローチ無群)であることがわかりました。強み活用でも欠点修正でも、組織的支援向けていないと感じるグループは、職務満足度も学習意欲も低下することが示されていました。
◯わかったこと3:強み活用と欠点修正アプローチはそれぞれ影響を与える指標が違っている
また、グループ2:強みアプローチ群に比べて、グループ3:欠点アプローチ群のほうが、ワークエンゲージメント・学習意欲・職務満足度が高い傾向があったことです。一方、離職意向は、強みアプローチのほうがより低い結果となりました。
■まとめと個人的感想
ポジティブ心理学の別の研究では「強みアプローチのほうが有効」とするものも以前読んだ記憶があります。
しかし、南アフリカの今回の研究では「欠点修正型のアプローチ」のほうがワーク・エンゲージメントや学習意欲、職務満足度において、若干ではありますが高い平均値がでていたことは興味深いところでした。
このあたりは、文化・年齢・職種などで、完全にどちらが優れているとはいえない領域なのかな、とも思います。
いずれにせよ、「アプローチが無い群」は一番よろしくなく、強み活用も欠点修正も何方も行う「複合アプローチ」が最も成果に繋がるということは、ポジティブ心理学で語っている「強みは伸ばし、弱みは対処する」という話と共通する結果となり、改めて胸に留めおきたいと思った次第です。
最後までお読み頂き、ありがとうございました!
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