今週の一冊『乳幼児のこころ』
(本日のお話 2256文字/読了時間4分)
■こんにちは。紀藤です。
先日沖縄から東京に戻ってまいりました。
50kmランニングの疲れは、だいたい翌々日にやってくるので
このあたりに若干の年齢を経たことを感じます。
あと2週間ちょっと。
6度目の100kmの完走に向けて頑張りたいと思います。
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さて、本日のお話です。
毎週日曜日はおすすめの一冊をご紹介する「今週の一冊」のコーナー。
今週の一冊は
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『乳幼児のこころ -- 子育ち・子育ての発達心理学』
遠藤 利彦 (著), 佐久間 路子 (著), 徳田 治子 (著), 野田 淳子 (著)/有斐閣アルマ
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です。
それでは早速まいりましょう!
■3歳を迎えた息子から思うこと
個人的な話となりますが、我が息子も3歳を迎えてしばらく経ちました。自己主張の萌芽を感じさせ(=イヤイヤ言う笑)、人間っぽくなっております。
自分の思い通りにならない対象物には攻撃性を向け(見知らぬ人だとヒヤヒヤする汗)、そのことを咎めるとバツの悪そうな顔をします。
遊びたいおもちゃを眼の前の1歳児から奪い取ったと思えば、泣いているその子を見て「だいじょうぶ?よしよし」とするなど、ツッコミどころはあるにせよ、社会・情緒的学習をしているようにも見えます。
心が育っているなあ、と感じます(たぶん)。
このGWの休みでは、友人家族とシェア生活をしばらくしました。
7歳のお兄さんと、もうすぐ2歳になる子どもとプールに行って、果敢にスライダーに飛び込む2歳児を眺めていました。
すると「水が顔にかかることに泣いていた自分」を客観的に見たのでしょうか、その後のお風呂ではあまり泣かなくなりました。
小さな一歩ですが成長を重ねたようにも見えたのでした。
こうした小さなことも、親としては興味深く、感慨深いものがあります。
■赤ちゃんに、『こころ』はあるのか?
さて、その中で、ある本を思い出しました。
昨年の話になりますが、ある学びの先輩たちと食事をしながら、そんなテーマを話し合った一夜があったのですが、その際に紹介された一冊です。
ちなみに、参加メンバーの多くが、私を含めて乳幼児期の子を持つお父さんでその中で盛り上がった話が、あるあるの「子育て」談義でした。
皆さん人材開発・組織開発に関わっている人たちなので、アプローチが実に興味深い。たとえば、免疫マップ(抑圧された欲求)の話が出てきたり、発達心理学的な話が出てきたり。その中である方が、紹介してくれたのがこちらです。
『乳幼児のこころ -- 子育ち・子育ての発達心理学』
遠藤 利彦 (著), 佐久間 路子 (著), 徳田 治子 (著), 野田 淳子 (著)
この本では冒頭の疑問、「赤ちゃんに、こころはあるのか?」について、ある一つの言説を紹介していたのでした。
少し長いですが、以下引用させていただきます。
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”赤ちゃんの実体としての心は、少なくとも大人が思うほどには、何かを思ったり、考えたり、あるいは思い出したり、感じたりするものではない可能性が高いと言えるのかもしれません。
しかし、私たち大人は、たとえば、実際には睡眠中におけるただの神経の痙攣でしかない赤ちゃんの口角の引き上げ(新生児微笑)をほかならぬ「微笑」として受け止め、
何を思い出して喜んでいるのかとか、どんな楽しい夢を見ているのかとか、ごく自然に考えてしまうように、赤ちゃんの心をその実体異常にやや過剰にあると思い込み、その心の状態を様々に推察してしまうものなのです。
それは、実際には必ずしもあるとは言えないものでもあると考えてしまうという意味でまさしく錯覚というべきものであるわけですが、マインズ(Meins, 1997)という研究者は、これを”mind-mindedness”(子どもの心をなぜかつい気遣ってしまう傾向)と呼び、
養育者側にこれがあることによって、子どもの発達に促進的に働くこどもとの相互作用がごく自然なかたちで可能になり、ひいては、その中で、現実に子どもがさまざまな情緒的な能力を備えるようになるのだと仮定しています。
このことは、少なくとも当初、実体とはややかけ離れた錯覚が、養育者の子どもに対する関わりを適切に方向づけることを通じて、徐々に、子どもの心の実体を生み出すに至るというきわめて逆説的なプロセスがあることを示唆していると言ってよいのではないでしょうか。
P7,8
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簡単に要約すると
「赤ちゃんに『こころ』があるかはわからない。
ただし、大人が”こころ”があるように関わるから、赤ちゃんの中に”こころ”が育つようである」
ということになります。うーん、実に興味深い。
■乳幼児の発達心理学の本
私も初めての子育てなので、こういう関わり方でよいのか?と疑問に思ってしまいます。
急に目の前の見知らぬ人に頭突きを連発する息子の様子をみて、不安になることもあるわけです。(そして自分で頭突きをして自分で泣く)
その中で、一つの指針があると安心します。この本は「乳幼児の発達心理学を、専門科目として学ぶ本」として位置づけられており、
乳幼児のこころ(感情や知性など)の発達が、生誕し成長するに従って、どのように育っていくのかが実験や研究データを元に、詳細に述べられている本です。ゆえに、非常に子育てにも参考になります。
たとえば、今の息子の「自分の欲求をガマン出来ずに、相手を攻撃する」という現象。これも、少し前まではあまり見えませんでした。
ではこれは彼の中で何が起こっているのか?が気になるところとして考えてみると、たとえばこんな研究があります。
「自己主張」「自己抑制」という感情制御機能についての研究です。年齢や性別ごとにどのように変化をしていくのか、というデータです。
簡単に言えば、「4歳になるとガマンができるようになる(傾向がある)」という話なのですが、もしかすると彼は「自分のやりたい(自己主張)」が育つ一方、
それにそぐわないことに対して「ガマンする(自己抑制)」が未熟なステージなのかもしれない、、、そんなことも一つのデータ(柏木, 1988)をみながら思ったりすると、少しあたたかい目で見られる気もするのでした。
■感想
その他にも、「幼児はなぜ、自己認識が肯定的になるのか(こんなことできてすごいでしょ!)」の理由(実際にできることが増えていくことに加えて、社会的比較がまだできないのが幼児であるため)、
「空想などの物語をどのタイミングで編み上げられるようになるか」など、研究に基づいた結果が豊富に載っており、とても勉強になりました。
最後までお読み頂き、ありがとうございました!
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