今週の一冊『リーダーシップ・シフト 全員活躍チームをつくるシェアド・リーダーシップ』
(本日のお話 1935字/読了時間3分)
■こんにちは。紀藤です。
昨日土曜日は、立教大学大学院の皆様への「論文の読み方・調べ方講座」なるものを実施。午後は、兼任講師として携わらせていただいている、立教大学 ビジネスリーダーシップコースの学生さんのプロジェクトの相談に乗っておりました。
こちらもいよいよ大詰め感がでてきました。
これからが楽しみです。
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さて、本日のお話です。
毎週日曜日は、最近読んだ書籍の中からお勧めしたい本をご紹介する「おすすめの一冊」のコーナーです。
今回の書籍は、「リーダーシップ」について新しい示唆を提供する書籍です。まさにこれからの時代に求められている本である、と感じさせられた一冊。ということで早速参りましょう!
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<今週の一冊>
『リーダーシップ・シフト 全員活躍チームをつくるシェアド・リーダーシップ』
堀尾 志保 (著), 中原 淳 (著)
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■本書の概要
「リーダーシップとは、権限があるエラいが発揮するもの」。そうした考え方から「リーダーシップとは、全員が発揮するもの」へと移行する(=シフトする)提案をしているのが本書です。そしてこの考え方のことを「シェアド・リーダーシップ」と呼びます。
まず、現在のマネージャーを取り巻く状況は「複雑化・少数化・多様化・分散化・多忙化」している特徴を挙げ、マネジャー1人がチームを束ね、リーダーシップを発揮することが難しくなっている環境になっていることを、序章にて問題提起します。
その厳しい環境下において、マネージャーが「リーダーシップを全員で発揮する(シェアド・リーダーシップ)」という考え方の効果を納得し、実践することで望ましい結果につながっていくということを、研究による知見を背景に、説得力を持って描かれていきます。
■本書のおすすめポイント
では、本書の魅力はどのようなところにあるのでしょうか。以下、個人的に感じたおすすめポイントについて、記載させていただきます。
◯(1)豊富な研究データがあり、説得力があること
1つ目が、本書の中心の主張である「シェアド・リーダーシップ」に関して、実に多くの研究データに基づいて、その効果を伝えられていることです。
新しく聞こえる概念や方法は「本当にそれで効果出るの?」と思ってしまうことも少なくありません。しかし「シェアド・リーダーシップを発揮しているチームのほうが、成果に繋がっていくという事実」があれば、その概念への信頼性も、取り入れようという思う積極性も高まります。
本書では、「シェアド・リーダーシップが一体何なのか?」がわかりやすく説明されていることはもとより、豊富な研究データに基づいて、シェアドリーダーシップの有効性が説明されていきます。日本の大手企業の課長層548名に対する定量調査・定性調査も含まれており、へー!なるほど!、と説得力を持って読むことができます。たとえば、一例ですが、その効果として以下のようなものが挙げられています。
・「不確実性の高い仕事を扱うチーム」では「シェアドリーダーシップ」と「チーム業績」の関係は高まる
・「企業の成長指標への寄与率」が、「ヨコ方向のシェアド・リーダーシップ」のほうが「タテ方向のリーダーシップ」よりも高い
・チームメンバーのイノベーティブ行動にシェアド・リーダーシップが影響している
やはり、データ、科学知は説得力がありますね。
◯(2)「シェアド・リーダーシップのはじめ方」について、わかりやすく具体的に描かれている
2つ目の、おすすめポイントは、「シェアド・リーダーシップのはじめ方が5STEPで明確に示されている」ことです。シェアド・リーダーシップっていいよね、でも具体的に何から始めればよいの?、と思った時に、チームでマネージャーが何をすればよいのかが、大変わかりやすく説明されています。
見出しだけご紹介すると、こんな5ステップです。
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<シェアド・リーダーシップ5STEPモデル>
STEP1:イメトレして始める
STEP2:安心安全を作る
STEP3:ともに方針を描く
STEP4:全員を主役化する
STEP5:境界をゆさぶる
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イラストやキャッチーな各ステップの見出しで、身近に感じる内容ですが、内容は、こちらも研究や理論が背景にあり、説得力があります。
たとえば、「STEP1:イメトレしてはじめる」も、なぜ「イメトレが大事なのか?」について、バスケットのイメトレの効果などの先行研究を例に挙げて、そのアクションの有用性を支える構成となっています。読んでいて、シェアドリーダーシップ以外にも、「へー、そんな研究があるんだ!」と知的好奇心も刺激される感覚も覚えます。
加えて「どのようにやるか」を示すワークシートも挿入されているので、大変活用しやすいと感じさせられました。
◯(3)わかりやすくて、読みやすい
そして3つ目のおすすめポイントがこちら。本を読むのは、正直結構疲れますが(わたしだけ?)、本書にといては平易な表現で、リズミカルにスイスイ読むことができました。
おそらくその理由は、それぞれにデータも豊富に挿入されており、難しいところはイラストなどもたくさんあり補足され、スッと内容が頭にはいってくるようになっているのだろうと感じ、ありがたいな、と思いました。
■まとめと個人的感想
本書を読みながら「研究と実践をつなげて、社会に価値をもたらすとはこういうことなのだ」と、心を揺さぶられておりました。
シェアド・リーダーシップについて、理論的にも書かれた石川先生の8年前の著作(『シェアド・リーダーシップ-チーム全員の影響力が職場を強くする』石川 淳 (著))が思い出されます。
研究によりその効果が蓄積されていき、その研究のバトンがわたされ、実際にどのように職場で活用できるのかが明らかになっていき、本書へと繋がったような、そんな研究のバトンのような感覚を、勝手ながら覚えてしまいました。そうした研究と実践を繋げることの難しさ・凄さも感じ、憧れを抱かざるを得ないと思った書籍でもありました。
ということで、マネジメントに現在悩みをお持ちの多くのマネージャーもそうですし、そうではないメンバー層の方、幅広い方にぜひおすすめさせていただきたい一冊であると感じた次第です。
最後までお読み頂き、ありがとうございました!
最後までお読み頂き、ありがとうございました!
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