プロアクティブ行動を促すのは「上司の発展的フィードバック」だった!? ~『若年就業者の組織適応』より #6~
(本日のお話 2630字/読了時間5分)
■こんにちは。紀藤です。
昨日は立教大学の経営学部のビジネスリーダーシップの授業でした。
予選前のプレゼンの練習とのことで、いつもと違う緊迫感のもとに発表がありましたが、
学生さんの発表のクオリティも、ぐっと上がってきて嬉しく思った時間でした。
色々と求めすぎてしまう気持ちを調整しながらの関わりですが、
そうしたものも含めて、刺激的な時間を過ごさせていただいています。
あと1週間、ぜひ頑張ってほしいと思います・・・!
*
さて、本日のお話です。
先日より著書『若年就業者の組織適応』からの学びの共有をしております。
今日は、「第10章 プロアクティブ行動を喚起する要因」よりお届けしたいと思います。
さて、「プロアクティブ行動」が「組織適応」を促すことは、これまでの研究から明らかにされてきました。では、そもそも「プロアクティブ行動」は何によって促されるのでしょうか? 非常に気になるところです・・・!
本章ではこのテーマについて探求をしています。実践に非常に役立つ示唆のある内容で、読んでいて、思わず「うんうん、そうだそうだ!」と頷いてしまいました。
ということで、早速見てまいりましょう。
■プロアクティブ行動を喚起する先行要因
プロアクティブ行動を喚起するもの(先行要因)について、これまでの研究でわかっていることが大きく2つあります。
○(1)プロアクティブ・パーソナリティ
まず1つ目が「プロアクティブ・パーソナリティ」と呼ばれるものです。
本書ではこのように説明されています。
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*プロアクティブ・パーソナリティとは
「状況に影響を受けず、環境の変化に影響を及ぼすことができるパーソナリティ」と定義し、機会を見分け、行動を起こし、意味のある変化を生じさせるまで屈せずにやり通す個人の特性のこと
Bateman & Crant(1993)
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つまり、周りがどうであろうと、自らが主体的に機会を見つけ、行動し、変化を生み出していく、まさに「積極的な個人の特性」と言えそうです。
そして先行研究によると、このプロアクティブ・パーソナリティは、様々な成果変数に影響を及ぼすことがわかりました。たとえば、
・キャリアの成功
・客観的な職務パフォーマンス
・キャリア満足と従業員としての自覚
・学習モチベーション
・職探し、
・個人と組織/職務の適合(Person-Job-fit)
などです。
なるほど、言われてみればそうですが、プロアクティブ行動は「個人の特性」が大きく関わってきているようですね。(プロアクティブな人はどこに行ってもプロアクティブ!なのです)
○(2)組織の社会化戦術(人事施策)
プロアクティブ行動を喚起する2つ目の先行要因は「組織の社会化戦術」に関するものです。これも様々な研究者による定義がありますが、大きく2種類が含まれるようです。
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・「個別的社会化戦術」:個人が個別に行う社会化戦術
・「制度的社会化戦術」:組織の提供する体系だった育成(つまり研修)
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特に、「制度的社会化戦術」は「情報探索」や「フィードバック探索行動」などに影響を与えることがわかっているそうです。
○(3)その他
またその他にも、プロアクティブ行動に影響を及ぼす先行要因として、以下のようなものが挙げられていました。
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●3つの状況要因(Grant & Ashforl, 2008):
「個人の考えや感情」「行動を正当化し、説明しやすい環境と曖昧性」「自律性」
●組織のプロアクティブな風土(Fay, Luhrmann, & Kohl(2004):
「1,自発的行動への志向性」「2, 作業革新への志向性」「3, 失敗マネジメントへの志向性」
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最後に著者の尾形先生がまとめられてた「プロアクティブ行動の喚起要因と組織適応に及ぼす要因」が整理されておりわかりやすく、勉強になりました。(以下引用させていただきます)
■プロアクティブ行動を喚起する「上司要因」
さて、ここからが本章のメインになるのですが、上記で挙げられたプロアクティブ行動を喚起する先行要因の中で、特に「上司要因」に注目しました。
というのも、これまでの研究では「上司との関係性」に着目したものはある一方、「プロアクティブ行動を喚起する『上司の具体的な行動』」については、着目されいなかったようです。よって本章では、どのような上司の行動がプロアクティブ行動を喚起するのかを研究した結果を分析しています。
○実証研究の内容
調査対象は入社2~7年目の256名です。
測定尺度として、以下のものを用いました。
・「組織適応」(前回までのお話をご参照ください)
・「プロアクティブ行動」(前回までのお話をご参照ください)
・「上司要因(「発展的フィードバック」と「ネットワーク形成支援」)」
・「職務要因(「職務自律性」と「タスク重要性」
・「職場要因(「支援風土」と「コミュニケーション風土)」
そして上記に関して、上司要因・職務要因・職場要因を独立変数、プロアクティブ行動を媒介変数、組織適応を成果変数とし、どのような影響を与えているのかを分析しました。
○結果:「上司の発展的フィードバック」は特に重要
「上司要因」と「プロアクティブ行動」の関連についてわかったことで、特徴的だと感じたものを、以下2つご紹介します。
1つ目が、「上司の発展的フィードバック」が、「フィードバック探索行動」に影響を与えるということ。
2つ目が、「上司のネットワーク形成支援」が、「ネットワーク活用行動」と「積極的問題解決行動」に影響を与えるということです。
また、媒介分析では、「上司要因」が「プロアクティブ行動」を媒介して、「組織適応」に影響を与えるモデルを分析した結果、組織適応の下位次元である「職業的社会化」「情緒的コミットメント」「仕事のやりがい」「離職意思」に多くのモデルにおいて媒介していることがわかりました。(文化的社会化はあまり影響がみられなかったようです)
これらのことから、「上司の発展的フィードバック」が、若年ホワイトカラーの「フィードバック探索行動」を喚起し、職業的社会化に正の影響を及ぼしている、と本章は締めくられています。
■まとめと感想
まず、「プロアクティブ・パーソナリティ」の研究がかなり多くあることが驚きでした。このあたりはまた論文を紹介できればと思いますが、やはり「個人の特性」の影響は大きいということですし、それは現場の感覚にもマッチしていることのように思います。
その上で、変えられることとして「上司の要因」、特に具体的な行動としての「上司の発展的フィードバック」が様々な組織適応の下位次元に多くの影響を与えているということは、実践に即役立つ研究の知見であると感じます。
だからこそ、上司は「発展的フィードバック」(攻撃する・攻めるフィードバクではない ←ここ大事)の考え方やスキルを学ぶ事が重要ですし、それを行うのが人材開発の役割、とも言えるのだろうなと思った次第です。
最後までお読み頂き、ありがとうございました!
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