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3850号 2024年9月9日

アンバサダーがいると、称賛の文化は広がり深まる ~読書レビュー『感謝と称賛』#8~

(本日のお話 2152字/読了時間3分)

■こんにちは。紀藤です。

昨日は20kmのランニングでした。
その後、ピアノのコンサートに初めていってみました。
プロってスゴイんだなあ、と感じた次第。



さて、先日より『感謝と称賛』(正木郁太郎 (著))書籍からの学びを共有させていただいております。本日も続けてまいります。

今日は、第8章より「称賛を促す介入は機能するのか」という内容を紹介いたします。「称賛を促す仕組みの効果はあるか」に加えて、例えば「アンバサダーなどの称賛を促す施策」設けた場合、社内で交わされる称賛の数は変わるのか?という疑問に答える研究です。

結論、施策は意味がある!という結果でしたが、大変実践的で、現場に役立つ研究でした。ということで、早速まいりましょう。

――――――――――――――――――――
<目次>
PRAISE CARD(称賛カード)とは
研究の概要
「アンバサダー」の施策
研究の内容
研究の結果_わかったこと
(1)PRAISE CARDの導入により、「称賛の広がり」がある
(2)称賛を促す介入施策は、「称賛の深さ」を促す
まとめ
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■PRAISE CARD(称賛カード)とは

本研究では、事例としてBIPROGY株式会社と株式会社博報堂が開発、共同運営されている仕組み「PRAISE CARD」が紹介されています。

「PRAISE CARD」とは、職場のコミュニティにおいて、パソコンやスマフォを用いて、称賛のカードを送り合うという称賛文化を広げる仕組みです。カードを介することで、遊びゴコロによって称賛をしやすくなるだけでなく、「相手の観察」や「相手の個性に合わせたカード選び」など、称賛の質も高くなるという狙いがあります。

やり方は、3ステップ。
1、相手を選ぶ→ 2,カードを選ぶ→ 3、称賛ボタンをタップ
なるシンプルアクションで送ることができます。

またPRAISE CARDには、29種類あり、中には「感謝と挨拶のカード」が数種類程度含まれています(今日飲みいこう!とか)書籍には、具体的なカードサンプルが紹介されていましたが、面白そうな内容でした。

■研究の概要

さて、本研究ではこの「PRAISE CARD」を導入した後の、利用状況を、2社間で比較しました。

1社目は、「称賛を促す介入『なし』のB社」です。
8000名規模の情報通信業で、このPRAISE CARDは、部門長レベルで興味がある部署から順次導入していきました。導入した後は、特に施策はありません。

次に2社目は、「称賛を促す介入が『あり』のC社」です。
こちらは300人希望の会社で、小売業で、組織のパーパスとバリューの浸透を測る目的で、PRAISE CARDを全社的に導入しました。導入した後に、追加施策として称賛を促す施策を行いました。
具体的には、「アンバサダー」と呼ばれる施策です。

◯「アンバサダー」の施策
アンバサダーとは、運営事務局以外に、各部署からアンバサダーとなる従業員が6人選定される人のことです。彼/彼女らは、一定期間の活動任期を終えたら、次のアンバサダーに世代交代していきます。

アンバサダーは、「PRAISE CARDの利用促進策を話し合って、行動する」「率先してカードを送る」などを任期中に、現場で自律的に活動し、広げるための施策を考えて行っていきます。
まさに、アンバサダーは「称賛を促す介入施策」の代表といえます。

■研究の内容
本研究では、「称賛を促す介入『なし』のB社」「称賛を促す介入が『あり』のC社」のそれぞれにおいて、以下の内容を調査しました。

・「PRAISE CARD(称賛)」の利用者数
・「PRAISE CARD(称賛)」の一人あたりの平均利用枚数
・「PRAISE CARD(称賛)」の合計利用枚数の推移

導入から1~270日後まで、30日ごとにデータを区切り、その推移を確認し、結果を分析、考察しました。

■研究の結果_わかったこと

さて、調査の結果、どのようなことがわかったのでしょうか。
以下、大きく2点まとめさせていただきます。

◯(1)PRAISE CARDの導入により、「称賛の広がり」がある

まず1点目が、「PRAISE CARD(称賛)」は導入から、その利用者数は送信者・受信者共に増えていった、ということ。

これはB社、C社共に共通していることであり、このような称賛のプラットフォーム(仕組み)を導入することで、「称賛文化の広がり」「称賛のコミュニケーション範囲の拡大」が見られることがわかりました。

◯(2)称賛を促す介入施策は、「称賛の深さ」を促す

一方、B社と比べてC社(アンバサダーの仕組みを活用)は、利用者数だけでなく「1人あたりの利用枚数」も増加していることがわかりました。
つまり、PRAISE CARDのような施策だけでも、内発的モチベーションにより称賛の文化の浸透を狙うことは一定程度可能ではあるものの、追加施策としてアンバサダーのような称賛を促す施策があればと、「称賛の広さ」だけではなく「称賛の深さ」も促すと考えられます。

■まとめ
PRAISE CARDのような、組織内で特定の文化を広げ、深める狙いをした施策は存在しています。その中で、アンバサダー制度などの効果があることを示唆する実験結果であったと感じました。

著者の正木先生は、もちろんデータのサンプルが2社の比較なので、断言はできないとは述べているものの、こうしたデータがあることで、組織文化の浸透を担う従業員が、その意義を理解し、コミットすることにも繋がる研究だと私は感じました。そういった意味でも、大変価値のあると思った次第です。

最後までお読み頂き、ありがとうございました。

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