あなたのユーモアレベルはどれくらい? ーユーモアを測定する2つの尺度と性格の強みの関係ー
(本日のお話 4410文字/読了時間6分)
■こんにちは。紀藤です。
昨日、祝日の月曜日は、東京にいる従兄弟のご夫妻とランチでした。
幼少期は家族ぐるみで会うことはあっても、意外と個別で話す機会はほぼ皆無で、
大人になって個人的に話をすると、色々話せることも増えるものだなあ、と感慨深い時間でした。
その他、月1のピアノレッスン。また、子どもと公園で走り回ったりした1日でした。
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さて、本日のお話です。
本日は「強み」に関する論文のご紹介です。
性格の強みにおいて「ユーモア」は人間が持つ美徳の一つとして評価されています。しかし、ユーモアと一言で言っても、様々なものがあります(知的なユーモアもあれば、下ネタ的なユーモアもある)。
これらのユーモアスタイルを分類した上で、他の「性格の強み」とどのように関連しているかを調べた論文となります。
論文を読んでみて、紹介されていた「ユーモアを測定する尺度」が、「なるほど、こういう観点でユーモアスタイルを分類できるのか!」と特に驚きがありました。
それでは、早速内容をみてまいりましょう!
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<目次>
今回の論文
30秒でわかる本論文の概要
「ユーモア」の定義に関する2つのアプローチ
(1)「日常生活におけるユーモア行動」
(2)「ユーモア感覚」の尺度
研究の概要
結果
わかったこと1:VIAの「ユーモア」は、「社会的温かさ」と関連があった
わかったこ2:「性格の強み」と「日常生活のユーモア行動の関連」には関連があった
まとめと感想
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<今回の論文>
『Humor and strengths of character』(ユーモアと性格の強み)
Liliane Müller, Willibald Ruch
The Journal of Positive Psychology, 2011年
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■30秒でわかる本論文の概要
本研究は、「ユーモア」がValues in Action (VIA)分類における「性格の強み」としてどのように位置付けられ、ユーモアの様々な側面とどのように関連しているかを探ることを目的としています。
特に、ユーモア行動を5つのスタイル(「社会的温かさ」「能力」「反映」「俗っぽさ」「無害さ」)に分類し、それらがVIAや「ユーモア感覚(SHS)」」とどのように関連するかを調査しました。
結果として、VIAの「ユーモア」は特に「社会的温かさ」を示すユーモアスタイルと強く関連しており、他者を和ませ、支援するようなユーモア行動を含むことが確認されました。また、「能力」のスタイルも、VIAの「ユーモア」と有意な関連を示していました。
加えて、「無害なユーモア」は、他者を傷つけずに楽しませるポジティブな特徴として一定の相関が示されました。一方、意地悪で攻撃的なユーモアスタイルはVIAの「ユーモア」とは負の関連を持っていました。
研究の結果をまとめると、VIA分類における「ユーモア」が人間関係の向上や社会的つながりを強化するための重要な要素であり、心理的ウェルビーイングの改善に寄与する可能性があることが示唆されました。
という内容です。
VIAの「ユーモア」を、一般的なユーモアを測定する「ユーモア行動の5つのスタイル」や「ユーモア感覚」との関連を探索した点が特徴的です。
以下、より詳しく見てみたいと思います。
■「ユーモア」の定義に関する2つのアプローチ
さて、ユーモアについて、先行研究でも様々なアプローチがあります。
その中で、本論文内では、Craikら(1996)とMcGheeら(1999)の2つのアプローチが紹介されていました。
この内容が、一般的な「ユーモア」の解像度を高める上で、非常に勉強になりました。以下、ご紹介いたします。
○(1)「日常生活におけるユーモア行動」
1つ目が、『Humorous Behavior Q-Sort Deck (HBQD)』(Craik, Lampert, & Nelson, 1996)という「日常生活におけるユーモア行動」を10のスタイルに分類し、5つの対比要素(例: 社会的に温かい vs. 冷たい、反省的 vs. 粗野、有能 vs. 無能、俗っぽい vs. 抑制的、無害 vs. 意地悪)に基づいて評価したものです。
この尺度は、日常のユーモア行動を包括的にカバーしています。具体的には、以下の内容となります。
(ここから)
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【「日常生活におけるユーモア行動」の分類の特徴】
1,社会的に温かい vs. 冷たい (Socially Warm vs. Cold)
他者と良好な関係を築くためのユーモアを示し、場を和ませる善意のある冗談などが特徴です。社会的に温かいユーモアは、グループの士気を高めます。反対に、社会的に冷たいユーモアは交流を避け、笑いをほとんど表しません。
2,反省的 vs. 粗野 (Reflective vs. Boorish)
内省的か粗野かを示し、反省的なユーモアは観察力に基づく控えめな笑いを伴います。粗野なユーモアは無礼で思慮に欠け、他者を不快にさせることがあります。知的なユーモアと関連が深いです。
3,有能 vs. 無能 (Competent vs. Inept)
ユーモアの伝達力や即興の機知を評価し、有能なユーモアは巧みな言葉遊びを含みます。無能なユーモアは、自信がなく効果的でない表現を示します。例えば、話が伝わらず笑いを取れないことが挙げられます。
4,俗っぽい vs. 抑制的 (Earthy vs. Repressed)
タブーを含むかどうかを評価し、俗っぽいユーモアは下品な話題や性的内容を伴います。抑制的なユーモアはこれらを避け、慎み深く節度あるものです。大胆さと抑制の対比を示します。
5,無害 vs. 意地悪 (Benign vs. Mean-Spirited)
無害で善意的か、意地悪で攻撃的かを示します。無害なユーモアは他者を楽しませる目的があり、心温まります。意地悪なユーモアは侮辱や嘲笑を含み、攻撃的です。
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(ここまで)
上記内容とVIAの強みの相関については、研究結果「わかったこと2」で詳述いたします。
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○(2)「ユーモア感覚」の尺度
2つ目が、『Sense of Humor Scale (SHS)』(McGhee, 1999)という、「ユーモア感覚」を測定する尺度です。
McGheeはユーモアを「遊び心」として捉え、ユーモア感覚を段階的に発展する概念として定義しました。そして、ユーモア感覚を複数の下位要素(例: 日常生活でのユーモア、ストレス下でのユーモアなど)に基づいて評価するものです。具体的には、以下の項目となります。
(ここから)
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【ユーモア感覚:Sense of Humor Scale (SHS)】 (McGhee, 1999)
1,Attitude(態度)
遊び心と真面目な態度の対比を測定し、ユーモアに対する基本的な姿勢を評価します。高いスコアは、遊び心のある態度を示します。
2,Mood(気分)
ポジティブな気分とネガティブな気分を測定します。ユーモアに関連する喜びや楽しみを持っているかを反映します。
3,SOH(Sense of Humor)
全体的なユーモア感覚を示す総合的な尺度で、他のサブスケールの合計として評価されます。
4,Enjoyment(楽しみ)
ユーモアを楽しむ程度を示し、ジョークや面白い出来事に対する喜びの感覚を測定します。
5,Laughter(笑い)
笑いの頻度や笑いを誘発する行動を評価します。積極的に笑うかどうかを示します。
6,Verbal(言語的ユーモア)
言葉や会話におけるユーモアの使用を測定します。機知に富んだコメントやジョークを交わす能力が評価されます。
7,Everyday(日常でのユーモア)
日常生活の中でユーモアを見出し、楽しむことができるかを測定します。
8,Laughing at yourself(自己嘲笑)
自分自身の失敗や欠点をユーモアとして笑えるかを評価します。自己批判的でありながらも前向きに受け止める能力を示します。
9,Humor under Stress(ストレス下でのユーモア)
ストレスや困難な状況でもユーモアを保つ能力を測定します。これはMcGheeによると最も発展が難しい要素とされています。
10,HQ(総合スコア)
SHS全体の総合スコアで、すべてのサブスケールの結果をまとめたものです。
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(ここまで)
■研究の概要
上記内容について、以下の方法で研究を行いました。簡単にポイントだけまとめます。
●参加者
・203人(男性84人、女性119人、平均年齢39.12歳)
・教育レベルは高く、半数以上が大学または高等教育機関の学位を保持
●測定尺度
・性格の強み尺度:Values in Action Inventory of Strengths (VIA-IS):
・日常生活におけるユーモア行動:Humorous Behavior Q-Sort Deck (HBQD)
・ユーモア感覚:Sense of Humor Scale (SHS)
●分析方法
・相関分析:VIAーIS、SHS、HBQDの相関を比較し、ユーモアスタイルが美徳や性格の強みとどのように関連しているかを確認しました。
・重回帰分析: 複数のユーモアスタイルが、性格の強みやユーモア感覚を予測する際の影響度合いを評価するために用いられました。
■結果
○わかったこと1:VIAの「ユーモア」は、「社会的温かさ」と関連があった
・VIA-ISのユーモアは、特に「社会的温かさ(他者を和ませ、支援するユーモアスタイル)」と強い関連を示しました。
これは、ユーモア感覚(SHS)やHBQDのスタイルとも一致し、特に「社会的温かさ」と「有能さ」が重視されました。
反対に、冷たさや俗っぽさを含むユーモアスタイルは、VIAユーモアや他の美徳と負の関連を示されました。
○わかったこと2:「性格の強み」と「日常生活のユーモア行動の関連」には関連があった
相関分析の結果、以下の特徴があることがわかりました。
・社会的に温かい vs. 冷たい:
社会的に温かいユーモアは、「愛情」や「親切心」「社会的知性」などの人間性の美徳と強く関連しています。冷たいユーモアは、これらの強みと負の相関を持ち「自律心」とも関連していました。
・反省的 vs. 粗野:
反省的なユーモアは「洞察力」と関連しますが、美徳との相関はほとんどありません。統計的に顕著な関係は見られませんでした。
・有能 vs. 無能:
有能なユーモアは勇気と関連し、積極的で自信に満ちた行動が見られますが、美徳との全体的な相関は低い結果となりました。
・俗っぽい vs. 抑制的:
俗っぽいユーモアは、節制や正義の美徳と負の相関が見られます。タブーを題材にした冗談と関連し、節制の欠如を示しました。
・無害 vs. 意地悪:意地悪なユーモアは、
正義、節制、超越の美徳と負の相関を示します。無害なユーモアはこれらと明確な相関が見られませんでした。
■まとめと感想
改めてですが、「社会的に温かいユーモア」が「性格の強み」としてのユーモアであることを、再確認しました。
そして、「社会的に温かいユーモア」とは、愛情や親切心や社会的知性(相手の気持ちを想像する)ことに繋がっており、また、「有能なユーモア(即興や巧みな言葉遊び)」も重要であることがわかりました。
やはり、ユーモアがあるとは、決して品が無いことでも、相手を傷つけるような笑いでもなく、ウィットに富む知性の表出としてのものであるのだ、ということを改めて感じた次第です。
こうした尺度があることで、自分のユーモアのレベルを客観視できる気もして、面白いなあ、と感じた次第です。知性あるユーモアあふれる人になりたいなあ、と思いました(道のりは遠い・・・)。
最後までお読み頂き、ありがとうございました!
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