「自分についての真実」を知る2つの方法 ~読書レビュー『Insight』その3~
(本日のお話 3654字/読了時間4分)
■こんにちは。紀藤です。
昨日は2件のアポイント。
その他、強み本にまつわる「出版の企画書」を、また粛々とまとめていました。
出せるかどうかもわからないけれど、この話伝えたいなあ…と勝手に内なるエネルギーだけ沸き起こります。
年内には何か動かしていきたいところです・・・!
また夜は、大学院の同期の仲間との忘年会でした。
*
さて、本日のお話です。
本日も「自分を知る」ことをテーマにした、自己認識の世界の解像度を高めてくれる書籍『Insight』。引き続き、本日もご紹介させていただければと思います。
今日は、「第3部 外的自己認識―迷信と真実」からの学びを共有させていただきます。外的自己認識(他人から見た自分)を知るためにはフィードバックが重要であることは知られています。しかし、わかっていてもフィードバックが機能しない理由、そしてその対策についてまとめられており、実践的なパートでした。
ということで、早速まいりましょう!
■外的自己認識とは
「外から見た自分」がどう見えているのかを認識すること、すなわち「外的自己認識」は、自らの成長において、リーダーシップにおいて、組織全体の成果においても、大変重要です。裸の王様はよろしくないですよね。
・・・とはいえ、この外的自己認識、なかなかの曲者のようす。
自分についての真実は簡単には伝えてもらえないし、伝えられても受け取ることもできません。ということで、まずは「外的自己認識における障壁」(=自分についての真実を知ることができない理由)を、以下まとめます。
■障壁1:他人は真実を言わない
◎自分についての真実を知ることができない世界
最初に、「悲しき真実」を紹介します。
それが「誰も進んで、”あなたはこう見えている”という真実を伝えてくれない」ということ。そう、最も身近な人でさえ。
それは、伝えると相手が傷つく事がわかっているのもあります。
また、伝えることで角が立つからというのもある。
復讐されるかも、というのもあります(倍返しだ!みたいな)
ともかく職場でも、プライベートの関係でも、真実は伝えられません。
私達は、基本的には「自分についての真実を知ることができない世界」に生きていると言えます。
*
◎他者のほうが自分を見ている
しかし、基本的には、「あなたのことはあなたより他人のほうが客観的に見ている」ものです。言葉どおり、自分のことは主観が入るからです。
実際に研究では、
・300組の夫婦に対して、怒り、敵意などをお互いに評価したところ、自己評価はパートナーからの評価に比べて不正確だった。
・150人以上の海軍士官と部下たちに、士官のリーダーシップスタイルを評価すると、部下たちだけが正確に上司のパフォーマンスを評価していた。
・他人は、本人よりも正確に、本人のこれからの行動を予測していた。
などがわかっています。
「他者は自分のことを見ている」。ゆえに「他者は自分を知るための貴重なフィードバックの情報源になりえる」。だから大事にフィードバックを大事にするのがポイントです。
▽▽▽
ただし、注意点があります。
周りが自分のことをどう思っているかは、他者によりばらつきがあることです。他者は「鏡」のようなものですが、ちょっと縦長に映る鏡もあれば、横長に映る鏡もあるように、「鏡」には個体差(バイアス)があるようです。
著書において『自己認識とは、唯一の真実があるわけではない』と述べているように、自己認識は自分についての自分の見解と、他人の見解が複雑に織り混ざったもの。
そこで複数の他者がフィードバックすれば、それらが完全一致することがないことは当然。ゆえに、できるだけ多くのパズルのピースを集めて、自己認識を編み上げている繊維の細かさを、より詳細にしていくことが自己認識において重要と言えるでしょう。
*
◎マム効果(他人は悪いことを伝えない)
また、ある実験で、「他者に良い知らせは伝えるけれど、悪い知らせは伝えられない」ということがわかりました。
こうした「望ましくないメッセージについて沈黙を保つ(Mum about Undesirable Messages)」ことを『マム効果』と呼ぶそうです。
たしかに、思い当たります。
研修でお互いにフィードバックをしましょう、といっても、そのままだと相手にネガティブなことは伝えない傾向があるなと。
また、私自身の場合も思い当たります。先日スピーチで、明らかにイケてない話をした(何言っているかわからないし、噛み噛みだし、盛り上がりもしない)直後に、その日出会った親切そうな方から「よかったですよ!」と言われたこと。
「いや、絶対そんなことないでしょ(涙)」と思っていましたが。
どうやら人は、「厳然たる真実を告げるより、優しい嘘をつきたくなる」そうです。
■障壁2:自分は真実を知りたくない
さて、「周りが真実を言ってくれない」というのが、外的自己認識における最初の障壁ですが、2つ目が「自分が知りたくない」という点です。
フィードバックから逃避する3つの理由
「自分が現実を見ないで居心地よく居たくなる」。これもよくわかります。本書では「現実逃避の三本柱」として、以下を紹介しています。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
<現実逃避の3本柱>
1.自分はフィードバックを求める必要がない
(自分は自分の事をよくわかっている。必要がない)
2.フィードバックを求めるべきではない
(自分の弱さを見せるに等しい、代償を伴う)
3.フィードバックを求めたくない
(耳が痛い、辛いからしたくない)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ただ、上記はすべて誤りであると喝破します。
1に対しては、「自己認識(インサイト)を得るには、自分の意見と同じように、他人の意見も重要だと気づく」ことが大事。
2に対しては「批判的なフィードバックを求めたほうが、社会的・職業的にも見返りが大きい」、3に対しては「恐れよりも大切な真実がある」と著書では述べています。
■「自分についての真実」を知る方法
では、これらのことを踏まえて、何をすれば自分についての真実を知ることができるのでしょうか。
◎(1)360度評価
組織でもポピュラーな方法。30~90%の組織が何らかの形で360度評価を導入しているそうです。家庭や学校でも効果がある、優れた方法です。
メリットとして2点、デメリットを1点挙げています。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
<360度評価のメリット>
・匿名性が担保される(復讐される恐れを持たずにフィードバックできる)
・自己イメージと周りのイメージを比較できる
<360度評価のデメリット>
・数値で表される事が多いため、意味ある形で受け取るのが難しい
(5段階評価で「2」とされたときに、それが何を意味するのか、何を変えればよいのかが明確ではないこともある)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
◎(2)適切なフィードバックプロセス
では、360度評価を補完する適切なフィードバックとは、どのようなものなのでしょうか?
いくつかポイントが書かれていましたので、こちらも紹介いたします。
まず、フィードバックの基本として、「どの行動」に対するフィードバックかを明確にする、そして「何人か」に尋ねてみることをします。その上で「STEP1:適切な人々を選ぶ」「STEP2:適切な質問をする」とプロセスを進めます。
▽▽▽
では次に、「STEP1:適切な人々を選ぶ」とは具体的に何をするのか?
それは、「愛ある批判者」を選ぶことです。「愛ある批判者」とは、正直でありながら、心底こちらのことを思ってくれる相手です。条件として、以下の3点が挙げられます。
<愛ある批判者の条件>
1.相互信頼の度合いが高いこと
2.心からこちらのことを思ってくれること
3.こちらに対して残酷なまでに正直になる意志と能力があること
これらの人を選ぶことで、自分についての真実を語ってもらうことに近づけます。一方、”愛のない批判者”や、”無批判な熱愛者”を選んではいけません。
▽▽▽
そして、「STEP2:適切な質問をする」です。
これは、質問を「具体的にすること」です。良くない例は、「どんな意見も歓迎です!」というようなものです。広すぎて何を言ったらいいかわかりません。
よって、「1つか2つの仮説に絞って聞く」ことです。(例:「私はミーティング喋りすぎていると思うのですが、どのように見えていますか?」など)
■まとめと感想
本日の記事では「真実は聞くことができない世界にいる」という前提で、どのように自分にとっての真実を知るかを掘り下げました。
ちなみに続く第8章では、「フィードバックを受け止め、向き合い、行動に移すこと」が伝えられています。
そこでは、長期的な視点に立つ、否定的に感じる部分の肯定できるところを見つける、自分の弱点を認める、変えられない物事を受け止める、なども紹介されていました。
改めて本パートを読んで、真実を伝えてくれる人(愛ある批判者)は実に貴重なんだな、と思いました。私の場合は妻となりますが、仕事においても私生活においても、いつも鋭く、的を射たフィードバックをもらえるので、最も信頼しています。
その瞬間は「!」となるのですが、だいたい正しいし、フラットに見てくれる、かつフォローもしてくれる。こうした人をもっと大事にしよう(と自分に言い聞かせてみた)と感じた次第です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
※本日のメルマガは「note」にも、図表付きでより詳しく掲載しています。よろしければぜひご覧ください。
<noteの記事はこちら>