チームで「自己認識の文化」を作る方法 ~読書レビュー『Insight』その5~
(本日のお話 2854字/読了時間4分)
■こんにちは。紀藤です。
昨日は2件のアポイント。
また1月に実施予定の研修プログラムの作成、その他出版関連の調査でした。
なかなか遅々として進まない気もしますが、こうした情報収集がものすごく大事だと思いました。
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「自分を知る」ことをテーマにした、自己認識の世界の解像度を高めてくれる書籍『Insight』。引き続き、本日もご紹介させていただきます。
本日は、第9章から「チームの自己認識を高める方法」についてまとめます。
それでは、早速まいりましょう!
■チームで「自己認識の文化」をつくる方法
これまでの書籍の紹介では、個人個人の自己認識の高め方についてお伝えしてきました。「インサイトの7つの柱(価値観、情熱、願望、環境、パターン、リアクション、インパクト)」を下に、自分の認識を高めていく。
「価値観、情熱、願望、環境」については、「内省」を通じて、「内的自己認識(自分から見た自分像)」を深める。
「パターン、リアクション、インパクト」については、「フィードバック」により「外的自己認識(他人から見た自分像)」を深める。
しかし、これはあくまでも個人の話です。
そこで、チームや組織において、メンバーが自分についてより理解できる状態に近づけるために、どのようなことができるのでしょうか。
周りにネガティブな影響を与えているのに、気づいていないのは本人だけ、、、そんなことは職場での”あるある”ですが、どうすればそのような状況を避けることができるのでしょうか。
以下、「チームに自己認識をもたらす3つの要素」です。
■要素1:リーダーが手本となる
そのために必要な方法として、まずは「リーダーが手本となる」ことです。
「リーダーが進んで、耳の痛いフィードバックを求めにいく」こと。このことにより、フィードバックの文化が生まれ、そして自己認識が深められます。ある例では、こんな進め方が紹介されていました。
そのプロセスが面白かったので、簡単に紹介させていただきます。
(ここから)
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<リーダー・フィードバック・プロセス>
{概要}:集中的にリーダーを知るためのミーティングであり、メンバーがリーダーについて率直な意見や疑問を投げかけるもの(GEで行われていたエクササイズ)。
{効果}マネジャーがほとんど瞬時に、チームの考えや期待を知ることができ、自身のリーダーシップ、コミュニケーション、並びに幸福度を高めることができる。
{参加者}
チームマネジャー(リーダー)、チームメンバー、ファシリテーター
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{進め方} ※所要時間:約3時間
STEP1:リーダーについての7つの質問に答える(45分間)
・メンバーはリーダーについての質問に答え、ファシリテーターはそれをフリップチャートに記載をする(この間、リーダーは退出している)。
・質問は以下の通り。
1.◯◯(リーダーの名前)について何を知っている?
2.◯◯について何を知りたい?
3.◯◯はチームとしての私たちについて何を知っておくべき?
4.◯◯について何を懸念している?
5.◯◯に何を期待している?
6.◯◯にやめてほしい・始めてほしい・続けてほしいことは何?
7.私たちのビジョン、戦略、プランについてなにかフィードバックすることは?
STEP2:リーダーがフィードバックを観察する(10分間)
・この間メンバーは休憩中で退出している。
・ファシリテーターとリーダーで、7つの質問に対して、フリップチャートに書かれたメンバーの回答を見ていく(名前は書かれていないので、匿名性は担保される)
・これにより、衝撃を受けつつも、どのようにメンバーから見えているかをリーダーは一瞬で知ることになる。
STEP3:フィードバックについて対話をする(90分間)
・フィードバックを受ける前に、チームに向けてリーダーは自分のバックグラウンドを話す(子どもの頃の話、兄弟姉妹など。これを話すことで人間としての親密度が高まる)
・フィードバックで寄せられた質問について、リーダーが答えていく。必要に応じてファシリテーターが介入する。
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(ここまで)
とのこと。リーダーにとっては勇気が必要なプロセスですが、効果的なものだろうと感じました。
■要素2:心理的安全性を高める
こちらはよく知られたキーワードですが「真実を告げることに対する安全性」が必要になります。
いわく、チームにおける「心理的安全性の高さ」と「自己認識の高さ」は相関があるそうです。そして心理的安全性が高く、自己認識が高いチームは、パフォーマンスが高いこともわかっています。
では、心理的安全性を高めるにはどうすればよいのか?
以下2つがポイントと述べられています。
(ここから)
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<心理的安全性を高めるポイント>
1.「弱さを見せること」
特にリーダーが積極的に自らの弱さを開示すると、心理的安全性が高まります。
2.「明確な規範を設定すること」
たとえば、「陰口の禁止」「直接本人に伝える」「善意を信じる」などいくつかチームで合意をするなど。ここでは、「スタート(始めること)、ストップ(やめること)、コンテンテニュー(続けること)」というモデルでチームで話をするのも、合意に役立ちます。
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(ここまで)
■要素3:継続的な取り組みにする
そして、こうした心理的安全性を高める文化、フィードバックをし合う文化は、”継続されるからこそ文化”になります。
その集団に共有された、無意識の思考・感情・行動のパターンを文化と呼ぶのであれば、自己認識を高める取り組みを、一過性のものにしてはいけません。
その中で、本書では「継続的な取り組みにする」ために『率直チャレンジ』なるものを紹介していました。これもまた実践に役立ちそうな内容だと感じるものでしたので、以下ご紹介いたします。
(ここから)
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<率直チャレンジ>
{目的と概要}
・数ヶ月から数年かけて実践していく「チームフィードバック交換会」。
・メンバーが仲間に、それぞれの強みと弱み、チームの成功に向けた貢献度を高める方表をフィードバックする機会が与えられる。
・それらのフィードバックをチーム全体の前で行う。
{参加者}
チームメンバー、必要に応じて外部ファシリテーター
{進め方} ※1人につき20分
STEP1:フィードバックの準備をする
*質問1~3の答えを各自が考える
ー質問1:この人物がしている行動で、会社の成功に一番貢献しているのはなんですか?
ー質問2:より成功するために、この人物がひとつ行動を変えられるとしたら、それは何?
ー質問3:私がより成功するのを手助けしてもらうには、この人物のどんな行動が必要?
STEP2:質問1のフィードバックをする
STEP3:質問2と3のフィードバックをする
{進め方のポイント}
・各メンバーは思っていることをすべて伝えること。
・伝える時間は1人30秒とする。
・行動に対するフィードバック(事実)に対してする。自分の解釈ではなく、相手が言ったこと、言い方、やったことに具体的に焦点を当てる。
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(ここまで)
とのこと。
またフィードバックは色々と感情の揺さぶりがかけられます。
伝える方も、伝えられる方も、インパクトや抵抗感を覚えるものです。
よって、以下ようなルールを設けることも有用です。
・受け取る側:「抵抗しない・防衛的にならない」「不明点は質問する」「オープンでいる」「感謝する」
・伝える側は「あなたはいつも~と一般化して言わない」」「人ではなく行動に焦点を与える」「自分の解釈を語らない」「具体例を出す」
■まとめと感想
今回紹介されていた、「リーダー・フィードバック・プロセス」を始めて、そして「率直チャレンジ」を文化にしていくことができれば、たしかにチームの自己認識は高まるし、フィードバックもされていくだろう、と思いました。
こうしたものを職場に持ち込むのは、やや抵抗感があるかもしれません。
ただ、とても大切なプロセスであるため、こうしたものを始めるための材料として、外部ファシリテータを起爆剤にして使うなども有用なのだろうな、とも思った次第です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
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