メールマガジン バックナンバー

3959号 2024年12月27日

あなたがいたから、諦めなかった。~仲間が粘り強さに与える影響とは?~

(本日のお話 2256字/読了時間3分)

■こんにちは。紀藤です。

昨日は午前中に1件のアポイント。
また午後からは外部人事サポーターとして関わらせていただいている会社様への、
コンサルティングや勉強会の実施でした。

また夜は5kmのランニング。
100kmマラソンぶりに走りましたが、とても気持ちよかったです。



さて、本日のお話です。

本日は「粘り強さ」についての論文のご紹介。

何かを成し遂げる上で「粘り強さ(Perseverance:困難や障害に直面しても、変わらずに続けること。忍耐力。)」は、重要な特性とされています。

たとえば「粘り強さ」が高いと、学業的な成績が高い、仕事の業績が高いなど、スポーツの成績もいいなど、様々なパフォーマンスにプラスの影響があることがわかっています(なんとなく想像できますね)

▽▽▽

では、何が「粘り強さ」を高めるのか?

この疑問について、ある論文が一つの見解を示していました。
それが「仲間の存在が粘り強さを高める」です。

今日は論文『あなたがいたから、私は諦めなかった(Because of you I did not give up)』について、ご紹介したいと思います。

なんだか論文のタイトルを見ているだけで、エモくて目頭が熱くなってしまいましたが(笑)、早速見ていきたいと思います!

================================
<今回の論文>
・タイトル:『Because of you I did not give up – How peers affect perseverance(あなたのおかげで諦めなかった:仲間が粘り強さに与える影響)』
・著者:Leonie Gerhards, Christina Gravert
・ジャーナル:SSRN (Social Science Research Network), 2016年8月
================================

■1分でわかる本論文のポイント

・本研究は、仲間の存在が職場での生産性や行動にどのように影響を与えるかについて、特に「粘り強さ(perseverance)」に焦点を当てた実験を行った。

・観察者(Observer)が被観察者(Peer)の回避行動(タスクスキップ)についての情報を得る状況を設定し、その影響を分析した結果、観察者は有意に「粘り強さ」を高めた一方、被観察者の行動はほとんど変化しないことが示された。

また、観察者は似た能力を持つ仲間を観察する際に最も「粘り強さ」が向上することがわかった。

という内容です。

つまり、平たく言えば「仲間が頑張っている姿を観察しているときに、人は粘り強くなる」ということ。特に「自分と近い能力の人が頑張っているのを見たがり、見ることでより粘り強くなる」という話です。

うん、確かにこれまでの仕事経験を振り返っても、わかる気がします。
以下、より詳しくみてみましょう。

■研究の概要

本研究では、以下2つの問いに焦点を当てています。

1.仲間の存在は、粘り強さにどのような影響を与えるのか?
2.観察者と被観察者(Peer)の役割によって、その影響はどのように異なるのか?

◎研究の方法
本研究は、152人の大学生を対象とした実験デザインを採用し、以下の手順で実施されました。

<実験の概要>
参加者は難解なアナグラム課題(言葉を並び替えて言葉を作る課題)を解き、次の選択肢が与えられました:
・選択肢1:課題を解くことに挑戦する。
・選択肢2:課題をスキップし、容易な課題に切り替える(ただしコストが発生する)。
そして「粘り強さ」は、「課題スキップの頻度が少ない」ほど高いと評価されました。

<グループ分け>
参加者は以下の2つの条件にランダムに割り当てられました:
・コントロール条件(個人タスク群): 他者の影響を受けず、課題に取り組む。
・観察条件(観察ペア群): 観察者(Observer)が被観察者(Peer)の課題スキップ数に関
する情報をリアルタイムで観察できる。

<追跡調査>
実験後、短縮版の「Grit Scale」を使用し、自己申告による粘り強さの評価を測定。また、参加者の仲間選択の傾向や動機を質問形式で記録しました。

■結果わかったこと
さて、上記の実験の結果、以下のようなことがわかりました。

◎(1)観察者の粘り強さが向上した
「観察者は被観察者の行動を見ることで、課題スキップ数が有意に減少」した。これにより、観察者自身の粘り強さが向上することが確認されました。

◎(2) 被観察者の行動への影響はほとんどなかった
「被観察者の行動は、観察されることでほとんど変化しません」でした。これは、観察そのものが一方向的な影響を持つことを示唆しています。

◎(3) 仲間の選択傾向があった
観察者は、「自分と類似した能力を持つ仲間を好んで観察する傾向」があり、この選択が粘り強さ向上をさらに促進することが示されました。

■まとめと感想

自分の過去の経験を振り返った時に、「そういえば・・・」と当てはまることを思い出していました。
20代の後半、営業チームのリーダーと頑張っていた頃に、チームにストレッチな目標がおりてきたことがありました。
みんなひいひい言いながら、頑張っていたわけですが、そのときに自分も含むメンバーは「彼/彼女が頑張っているから、自分も頑張ろう」というモチベーションが、確かにあったと思うのです。

まさに『あなたがいたから、諦めなかった』です。

ただ、意外だったのが、「非観察者(見られている人)」は特に粘り強くはならなかった、ということ。私は、見えっ張りなのか、誰かに見られていると思うと、ちょっと背伸びをして頑張ってしまう傾向があります(マラソンでも仕事でも)。

ただ、今回の「粘り強さ」の実験においては、非観察者の影響はないとのことでしたので、ちょっとした驚きでした。(また別の研究では、「見られることによる影響」も調べられてそうですが)

いずれにせよ、大変興味深い研究でした。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

※本日のメルマガは「note」にも、図表付きでより詳しく掲載しています。よろしければぜひご覧ください。

<noteの記事はこちら>

365日日刊。学びと挑戦をするみなさまに、背中を押すメルマガお届け中。

  • 人材育成に関する情報
  • 参考になる本のご紹介
  • 人事交流会などのイベント案内

メルマガを登録する

キーワードから探す
カテゴリーから探す
配信月から探す