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3973号 2025年1月10日

性格が収入に影響する?! ー論文「性格が収入に与える影響」のまとめー

(本日のお話 2577文字/読了時間4分)

■こんにちは。紀藤です。

昨日は1件のアポイント。
その他、勉強会への参加や、研修の準備、研究などでした。
また夕方からは8kmのランニング。



さて、本日のお話です。
先日より有名な性格モデル「ビックファイブ」に関する論文をご紹介しております。本日も続けてまいります。

本日の論文は、「性格が収入に影響する」というテーマについて、オランダで大規模調査をした2004年の研究です。

収入を決めるものは、学歴とか職業とか、トレーニング等色々な要素があるけれど、それだけじゃ説明できないよね、それって性格なんじゃない?(だいぶ乱暴にいうと)という研究者の疑問を実際に検証したものです。

この調査から、「ビックファイブと収入の関係」が明らかになりました。

「へー、なるほど・・・」と、意外な発見も多く、たいへん興味深いものでした。ということで、早速中身を見てまいりましょう!

(ビックファイブについてはこちらの記事をご参照ください。
自己診断テスト受検用のURLも掲載しています↓↓)
https://note.com/courage_sapuri/n/nfedfa71f92d3

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<今回の論文>
タイトル:The Effects of Personality on Earnings(性格が収入に与える影響)
著者:Ellen K. Nyhus、Empar Pons
ジャーナル:Journal of Economic Psychology:2004年
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■1分でわかる本論文のポイント

・これまで、収入(賃金)の決定要因は、教育、経験、スキルといった「人的資本」や職業特性に重点を置いていました。しかし、これらではすべての収入の違いを説明しきれませんでした。

・一方、心理学の分野では「性格特性」が労働市場における行動やパフォーマンスに影響を及ぼす可能性が注目されています。

・本研究は、性格心理学の理論を経済学の文脈で応用し、「性格特性が収入に与える影響」を具体的に検証する初期の取り組みです。

・特に、「ビッグファイブ」性格モデル(外向性、協調性、誠実性、情緒安定性、自律性)に基づき、性格が収入にどのような影響を与えるか、また性別や教育レベルなどによる影響の違いを探ることを目的としています。

・研究の結果、以下のようなことがわかりました。
「情緒安定性」は、男女ともに賃金と正の相関を示し、特に女性でその影響が大きかった。
「協調性」は、女性の賃金に負の影響を及ぼした。
「開放性」は勤続年数が増えるほど賃金に正の影響を与える傾向があった。
「誠実性」は勤続初期には重要な影響を持つことが示唆された。

とのこと。なるほど、興味深いです・・・!
では、具体的にどのような調査を行ったのかを見てまいりましょう。

■研究の概要

◎研究の方法
●データセット: オランダのDNB世帯調査(DHS: De Nederlandsche Bank Household Survey)。
(この調査は、経済的および性格を含む多様なデータを収集しており、性格や収入、学歴や労働条件に関するデータも含んでいる)

●対象: 労働者828名(男性539名、女性291名)。対象者は16歳から65歳

●性格の測定(ビックファイブ):
性格は、Hendriksら(1999)によるFive-Factor Personality Inventory (FFPI) を用いて測定。
外向性: 社交性や積極性に関連する特性。
協調性: 他者との調和や共感性を示す特性。
誠実性: 計画性、責任感、目標志向性に関連。
情緒安定性: ストレスへの対処や感情の安定性を示す。
開放性: 独立性や自己決定力を示す特性。

●賃金の測定:
年間総所得を労働週数および週あたりの労働時間で割ることで時給を推定しました。

●分析手法:
・OLS回帰分析: 賃金を従属変数とし、性格特性や人的資本変数を独立変数として分析しました。
・拡張モデル: 性格特性の交互作用項(例: 性格×勤続年数、性格×教育レベル)を追加し、更に調査を加えました。

■結果わかったこと
調査の結果、「性格と収入の関係」について、以下のことがわかりました。
それぞれビックファイブの5つの性格特性が収入にどのような影響を与えるのでしょうか? その考察を含めてまとめます。

1)「情緒安定性」が収入に与える影響
・賃金に最も強く正の影響を与える特性。男女ともに有意な正の関係を示した。特に女性において影響が大きい。
・感情的に安定した従業員が職場で評価されやすい可能性を示唆。

2)「協調性」が収入に与える影響
・女性の賃金に負の影響を与える。
・他者との調和を重視する特性が、交渉力の低下や低賃金職業の選択につながる可能性が考えられる。

3)「開放性」が収入に与える影響
・勤続年数が増えるほど賃金に正の影響を与える傾向。
・自立的な判断や行動が職業キャリアの後期で評価される可能性。

4)「誠実性」が収入に与える影響
・勤続初期には重要な影響を持つことが示唆された。ただし、賃金との直接的な関連は観察されなかった。

5)「外向性」が収入に与える影響
・女性では賃金にわずかな負の影響を示したが、統計的に有意ではない。

■まとめと感想
また、論文の考察では、「外向性」や「協調性」がなぜ賃金とマイナスの影響があるのかについて、以下のような可能性を述べていました。

これは、「他人を助けたり、他人の利益に従って行動したりする」ことは、必ずしも労働市場では賃金のプラスの影響がないということですが、その理由として、「協調性」が高い人は賃金交渉に弱い可能性がある、あるいは「協調性」が高い人は、サービス業や看護師など一般的に低賃金の職業につく可能性がある(かもしれない)等でした。

また、「誠実性」はキャリアの初期ではプラスで働くということも、そもそも、そうした勤勉で計画性があり目標志向があるような誠実性の高い人は「キャリアの初期から評価されている→ 良い待遇だから収入カーブが上がらない」という可能性なども書かれていました(おそらく年功的な仕事以外も含むのかと)。

また「開放性」(好奇心や創造性など)はキャリアの後期に賃金への影響が特に強いということも、学び続けること外に出続けることの重要性を示唆しているように感じました。

言われてみたらたしかに・・・!というのも、こうした大規模データを用いた調査研究だと、ぐっと説得力が高まるように思った次第です。

他にも、近しい研究がいくつかあるので、引き続き紹介してまいりたいと思います。最後までお読みいただき、ありがとうございました!

※本日のメルマガは「note」にも、図表付きでより詳しく掲載しています。よろしければぜひご覧ください。

<noteの記事はこちら>

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