「ゆとり教育で学力低下」とはいえない
■おはようございます。紀藤です。
年末最後の金曜日。
今日で仕事納めの方もいらっしゃるようですね。
年末年始はつい食べ過ぎ、飲み過ぎをしてしまいますが、
くれぐれもお体にはお気を付け下さいね。
■さて、本日のお話は
先日読んだ『池上彰の日本の教育がよくわかる本』から。
この本の中で、池上さんが興味深いお話を伝えていました。
それは、
【「ゆとり教育で学力低下」とはいえない】
というもの。
私自身「ゆとり教育」の細かい部分まで、
深く考えたことがありませんでしたが、
「”ゆとり教育”= 甘え、学力低下」
というような印象を少なからず持っていました。
それはおそらく、
周りの「ゆとり教育」に対する意見に影響をされて、
そう思っていたのだと思います。
■では、「ゆとり教育で学力低下」と
騒がれた背景、その真偽はいかなるものなのでしょうか。
少し説明くさいお話ですが、以下著書より引用です。
まずは、「ゆとり教育」によって子どもたちの学力が低下した、
と騒がれたときのことをちょっと思い出してみましょう。
2004年、経済協力開発機構(以後、OECD)が3年ごとに実施している
「生徒の学習到達度調査」(以後、PISA)の2003年調査の結果が発表されました。
このとき、2000年調査のときに比べて大幅に順位が下がった、
いわゆる「PISAショック」が騒ぎの発端でした。
PISAとは、世界の15歳の子ども(日本では高校1年生)を対象に行われるものです。
調査科目は3つ。
「読解力」「数学的リテラシー」「科学的リテラシー」です。
日本の教科にたとえれば、国語と数学、理科といっていいでしょう。
データによると、
2000年は、科学2位、数学1位、読解力8位にくらべ、
2003年には、科学は2位を確保したものの、数学は6位に、読解力は14位に転落しています。
それからさかのぼること2年前、2002年4月から「学校週5日制」が導入され、
国公立の小・中・高校は土曜日が完全に休みになりました。
これによって授業時間数は一割削減されました。
さらに「学習指導要領(第2章を参照)」の改訂によって、
同じく2002年度から教える内容が3割削減されていました。
いわゆる「ゆとり教育」が始まっていたのです。
この「ゆとり教育」がPISAの順位が下がった原因だ、学力低下の原因だと
政治家や評論家、マスコミが騒いだわけですが、これは本当でしょうか?
良く考えると、2003年に調査を受けた15歳は、
わずか1年間しか「ゆとり教育」を受けていません。
たった1年間しか受けていない「ゆとり教育」によって
PISAの順位が下がったと考えるのは無理があるように思います。
『池上彰の日本の教育がよくわかる本』より 著:池上彰
■注目すべきは、最後の部分。
”二〇〇三年に調査を受けた一五歳は、わずか一年間しか「ゆとり教育」を受けていない。
そして、この一年しか「ゆとり教育」を受けていない十五歳の学力が下がった。
これを「ゆとり教育が学力を下げた」と言えるのか”
普通に考えて、「いや、それは無理があるでしょう」と思えます。
でも正直、私はこの事実を知らないまま、
「ゆとり教育が学力を下げた」と思っていたわけです。
「ゆとり教育」という響き、そして
「学校が週休2日制になった(ゆとり教育)」という断片的な情報だけで、
私は勝手に「”ゆとり教育”= 甘え、学力低下」
という印象を決めてしまっていたのではないか・・・
このことに、はたと気が付かされたわけです。
■上の内容は、ゆとり教育における学力の話です。
しかしながら、このことは、
「ゆとり教育」という話に限ったことではないかもしれません。
事実の深い部分を知らないまま、
「周りが言っているから」
「二ュースでもいっているから」
と、印象を決めつけてしまう。
そして、その結果、
「ゆとり世代の人は、甘やかされて育ってるからね~。
考え方もちょっとズレてるよね~」
という風に、何となく迎合してしまう。
もしかしたら、このような「罠」が、
日常に潜んでいるのかもしれません。
■現代は、色々な情報で溢れています。
そして、受け取るたくさんの情報によって、
私たちは知らず知らずに「色メガネ」をかけさせられているのかもしれません。
「7つの習慣」でも、
【私たちの”ものの見方・考え方”は、「情報」「経験」から作られる】
といいます。
だからこそ、物事を正しく理解するためには、
そんな自分の「ものの見方・考え方」が全てではない、と
一歩引いて考えることが大切である、と言います。
自分が「?」と思った情報は、
そのまま鵜呑みにせず、自ら「なぜ?」と掘り下げる姿勢が、
情報過多な今を生きる私たちには求められるのかもしれませんね。
私も、もっと勉強したいと思います。
自戒も込めて。
(ちなみに、今日のお話は、
実際に「ゆとり世代」が立派なのか、イマイチなのか、
という議論ではありません。念のためでした。)
最後までお読み頂き、ありがとうございます。
今日が皆様にとって、素晴らしい一日になりますように。