『データの見えざる手 ウエアラブルセンサが明かす人間・組織・社会の法則』
(今日のお話 2423文字/読了時間3分)
■こんにちは。紀藤です。
昨日土曜日は、朝9:00から英語塾。
13:00ら、
8月のトライアスロンに向けて
2‚500メートルのスイムの練習。
そして夕方からは、サムライ塾の塾長と共に、
某有名神宮の館長と共に、来月行う特別イベントの打ち合わせなど。
盛りだくさんの一日でした。
思いましたが、
自分よりも数段、数十段高いレベルの方々の話は、
本当に勉強になるとともに、その見識の違いに圧倒されます。
こういった場に、仕事とは別の場で
縁を持たせていただけることを、
月並みですが、感謝です。
自分の無知さを感じるとともに、
もっと、勉強したい!と思った1日でした。
*
さて、日曜日は
今週のおすすめ本を紹介する、
「今週の1冊」のコーナー。
本日は、
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<今週の一冊>
『データの見えざる手
ウエアラブルセンサが明かす人間・組織・社会の法則』
矢野 和男 (著)
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をご紹介させていただきたいと思います。""
■『データの見えざる手』。
この本は、日立中央研究所で2006年に実施された
”ウエアラブルセンサによる人間行動の研究”をもとに、書かれた本。
述べ100万人もの日常の行動を計測し、
その身体活動、位置情報、
センサーをつけている人同士の面会などを記録した
「ヒューマン・ビックデータ」
をもとに、人間や社会の法則を解き明かそうとしたプロジェクトと、
そこから見えてきた『人間・組織・社会の法則』について、
語られている本です。
2006年に開発されたウエアラブルセンサですから、
もう10年以上前の話。
変化の速い今となっては、
結構、昔に感じる方も多いかもしれません。
しかしながら、この本を読むと、
”私たちが当たり前だと思っていたこと”が、
ビック、データによると実は違う、
ということが明らかになったりするのです。
■例えば、本書では、
こんな事例が紹介されています。
対象は、あるコールセンター。
特定の商品を売る、セールス型のコールセンターです。
そして、そのコールセンターの重要な指標は、
「商品の受注率」
でした。
これを、ヒューマン・ビックデータを使って計測したのでした。
当初の予想では、
受注率に影響を与えるものは、
”コールセンターのシフト組み”
だと思われていました。
つまり、シフトにスキルレベル(=トークがうまいなど)が多ければ、受注率が高い。
逆に、スキルレベルが低い人(=トークが上手じゃない)が多い日は、受注率が低い。
そう、想定していました。
また、性格的にコールセンターに向いている人が多い現場は高くて、
逆に、性格的に向いていない、内向的である、という職場は、受注率が低い、
そんなことも考えられるだろう、
管理部門の人々はそんなことを考えていました。
■しかし、です。
実際、その予想は、
全く違ったのでした。
コールセンターの人につけた
ウエアラブルセンサデータによると、
実は”受注率を最も高める要因”というのは、
『休憩所での会話の活発度』
が、受注率に最も影響していた、
と言うことがわかったのです。
つまり、
・休憩中の会話がはずむと、受注率があがる
・休憩中に、適度に体動かしていると、受注率が上がる。
ということ。
これは、誰も想定していなかった。
しかし、ウエアラブルセンサデバイスを使って分析すると、
そのような、想像もしなかった結果が見えた
と言うわけです。
*
そして、このデータを用いて、
このコールセンターでは
「休憩時間の活発さを向上させる施策」と銘打ち、
”同世代の4人のチームで休憩を同時に取る”
ようにしたそうです。
そうすると休憩中の活発度が10%以上向上。
その結果、受注率が13%向上。
このデータ結果が、正しかったことを裏付けた、
そんな実際のコンサルティング案件があった、
という事例が紹介されています。
■時代は大きく変わりつつあります。
自分の経験で物事を判断してきたところから、
目に見えない情報を、見えるようにすることが出来る時代になりました。
今までは「働き方」とか「仕事の成果の高め方」といっても、
属人的なものでした。
だから、職場の課長が、
「俺たちの時は寝ずに働いたもんだ。
それぐらい集中して仕事に没頭すれば、
生産性なんて、高まるんだよ」
(=俺たちの働く職場では、みんなそうやって成果を出していた。
だから、そうに違いない)
とか、
「若い頃に膨大な仕事を与えられること。それが大事だ。
膨大な仕事をなんとかこなそうと思うから、
生産性を高めて、効率的に仕事ができるようになるのだ。」
(=自分たちも、自分たちの同じ世代の人も、先輩も、最近の後輩も、
みんな膨大な仕事を通じて生産性を高めてきた。そうに違いない)
みたいな、
”個人の感覚から法則を見出してきた時代”
でした。
しかし、それは
あくまでも、自分自身の体験した範囲
または、自分が知りうる世界の中の範囲
で仮説を立て、戦略を立てるものでした。
しかし、これからは、
感覚すらも分析し、自分だけでなく、
あらゆる人のデータから法則を導き出し、
思いもよらなかった「解」を、
導き出せる時代になったのだ、
そう、肌で感じさせられる本です。
■今は、2017年。
この流れは、もっともっと進んでいるのでしょう。
今までは、「精神論だろう」などと片付けられていた
・マインドフルネス(禅の思想)
・睡眠が生産性に与える影響
・運動が心に与える影響
・食事と精神の関わり
などなど、
”見えなかったもの”が、
ビックデータやテクノロジーを通じることにより
どんどん見えるようになってきています。
これからの時代は、
「データに対する感度」
はますます重要になってくるのでしょう。
だからこそ、これらのことに、
アンテナを立てること。
それが、
”自分の状態を高い状態で本当にできるかどうかに関わってくる”
そう思います。
AI .ビックデータ、これらの言葉が注目されている今、
ぜひそれが私たちの日常にどういう影響与えるか、という入門書としても、
ぜひご一読いただきたい一冊です。
目から、ウロコです。