人が育つ過程は、まるで「ヨウ素時計反応」のようだ
■おはようございます。紀藤です。
週末は「そして父になる」
という映画を見に行ってきました。
福山雅治さん主演の、
昭和40年代に頻発した「子供の取り違え」に関わるテーマで、
カンヌ映画祭の審査員賞を受賞した映画です。
自分の子供を育てるにあたって、
「血を選ぶのか、
それとも、共に過ごした時間を選ぶのか」
という非常に考えさせられるいい映画でした。
よろしければぜひ。
今日はそんな内容に少し関連した、
私の考える「教育」について、
思うことを共有いたします。
(少し長いので、お時間があればお読みください)
■皆様は「時計反応」という化学の実験をご存知でしょうか。
正式な名前は「ヨウ素時計反応」といい、
「化学反応から、一定時間が経過したのち、
一気に色が変わる(目に見える変化が起こる)」
という面白い実験です。
2つの無色透明の液体を混合すると、
最初は目に見える反応は起こりません。
しかし、一定時間経過してから、
混合液体が突然深青色に変化します。
■この実験のからくりは、
「目に見えないところで、
色が変わるための2つの反応が同時に起こっている」
「そのために一定時間が必要である」
というのが、ポイントだそうです。
実験の内容を整理すると、
1、〇〇と△△が反応すると、色が変わる。
2、実験を始めた直後は、〇〇はあるが、△△はまだ存在しない。
3、しかし、見えないところで■■と××が反応して△△が少しずつできている。
4、そして△△が一定量、出来上がると、〇〇と△△の反応が一気に始まる。
5、その結果、がらりと色が変わる。
というステップを踏むそうです。
■この話を聞いて、私は
「人が育つプロセスとは、時計反応のようだなあ」
と思わずにはいられませんでした。
私は、教育プログラムを提供しています。
そして必ずと言っていいほど
よく議題にあがるテーマがあります。
それは、
「この教育の成果は、いつでるのか」、
というテーマです。
確かに、費用と時間を投資した研修において、
実際に何人中、何人が変わった、とか
費用対効果はどれくらいなのか、
というのはとても重要な要素だと思います。
ですが、同時に、
「人が育つためには、時間が必要である」
ということも、念頭に入れなければいけないのではないか、
と思うのです。
■人には「変化のタイミング」というものがあります。
例えば研修で、大切なメッセージを受け取ったとします。
・コミュンケーションの方法
・自分から動く大切さ
・目標を持つ意味
・愚痴を言わないほうが良い理由
・人の話を聞くポイント
など、色々あるでしょう。
研修で、「なるほど、取り入れてみよう」という
良い反応があったとしても、
「大切だということはすごくわかった。
でも、なかなかできない・・・」
という状態の人がほとんどになるでしょう。
そして、この状態を
「変わってない」と思いがちですが、
考え方を変えれば、当たり前なことにも思います。
なぜならば、
「実行するための練習量」
が足りていないわけですから。
トレーニングで
「大切なことがわかった」(気付き)
後には、「実行する」ための
スキルを磨く時間が必要になるのではないでしょうか。
■これは、上記の化学の実験で表現するならば、
3、しかし、見えないところで■■と××が反応して△△が少しずつできている。
という段階でしょう。
「〇〇が大切だ、とわかっている。でも、できない」(=葛藤)
「頭ではわかる、きっとそうなんだろうと思う。でもまだ納得ができない」(=葛藤)
こんな思いがあり、意識をし続けていることができれば、
すぐに行動には出ないとしても、
「3」のプロセスのように、
目には見えない化学反応が着々と進んでいる、
と言えるのではないか、と思うのです。
■そして、仕事の経験、失敗などを通して、
「もやもやが、電気が走ったように、一本につながる」
「言っている意味が、本当の意味でわかった」
というように、すぐに変わらなかった人が
「4、一気に反応が始まる」という化学反応が起こり、その結果、
「5、がらりと色が変わる」
というように表面の変化にも現れてくるのではないでしょうか。
そしてこのタイミングは、人によってまちまちなのでしょう。
■もちろん、「お前のやり方は違う!」と
外からの力を強く加えて、行動変容をさせることもできますし、
場合によってはそれが効果的なこともあると思います。
ですが、一時的ではなく、
人が根本から変わるためには、
「自ら気が付くこと」
が必要なのではないか、と思ってやみません。
「7つの習慣」では、これをSee-Do-Getサイクルという、
「原則」としてお伝えしています。
これは、物事の見方(パラダイム)が変わると、
行動が変わり、行動が変わると、結果が変わる、
というサイクルを表現した言葉です。
著者のコヴィー博士はこういいます。
”大きな変化を望むなら、パラダイムを変えねばならない”
■「変わってくれ」、といって、
誰かが変わってくれれば苦労ありませんが、
一瞬で人が変わるようなトレーニングは、残念ながらありません。
もしそんな簡単に変わるのであれば、
誰もがそれを試して、みんな変わっているはず。
最も身近な人すら変えられない日常を考えれば、
教育の難しさは、よくわかるはず。
(私も「目標が大切だ!」と熱く家族に語っても、
なかなか変わることはありません…汗)
■人が育つのは、「時計反応」と同じようなもの。
見えない部分で、少しずつ変化は起きている。
時間がかかるかもしれないけれど、
一定量の学習や練習量を投入した時に、
目に見える「変化」として表れてくる。
そんな考えを前提として、
・人の成長を「見えないところで変化は起こっているはず」と信じること。
・そのための、最良の「学びの機会」を、場を与えること。
・反応を継続させるために、学び続ける仕組みを作ること。
を、教育の役割だと捉えてみると、新しい気付きがあるかもしれません。
■そして、変わりたくても変われない自分自身に対しても、
「今は、時計反応の最中だ。
そのうち、一気に変わる瞬間がくるはず」
と考えると気持ちが楽になり、もうひと踏ん張りできるのではないでしょうか。
一つの考えとしてご参考になれば幸いです。
朝から長文にお目通し頂き、ありがとうございました。
■今日のお話は、
・「時計反応」という化学の実験がある。
これは、目に見える変化があるために一定時間が必要という実験。
・「人が育つ」ということも同様なことが言えるのではないか。
・気付きをトレーニングで提供しても、それが形に出るためには、
「意識をした回数」「行動しようとした練習量」など、時間が必要。
・人を育てるにあたっても、「目に見えない変化」を意識して、
長い視点で教育の場を提供してみてはどうか。
変わるまでにタイムラグがある、と自分自身と人の成長を見守ってはどうか。
という内容でした。
今日も皆様にとって良い一日になりますように。