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1897号 2019年4月29日

今週の一冊『初秋』

(本日のお話 2116字/読了時間3分)

■こんにちは。紀藤です。

昨日土曜日は、コーポレートサイトの企画、作成。

また夜は、1年ぶりに元テニススクールの仲間と、テニスでした。
びっくりするくらい下手くそになっていて、自分でも驚きました。
やっぱり、練習しないとだめですね。。。(汗)



さて、本日の話です。
毎週日曜日は、お勧めの1冊をご紹介する今週の1冊のコーナー。

今週の一冊は、

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『初秋』
(ロバート・B. パーカー (著), 菊池 光 (翻訳))



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です。


■突然ですが、皆さまは「カッコいい男」というと、
誰を思い浮かべられますか?

・有名人
・父親
・先輩、攘夷し
・歴史上の人物


おそらく、人によって様々かと思います。

そんな中、1人紹介したい人物がいます。

古今東西、文化を越えて
「THE・カッコいい男」の称号を贈りたくなる人物。

それが、『初秋』の主人公「スペンサー」です。


■今の現代社会ですと、

・ハードボイルドで、不器用で、
・でも根は優しくて、
・決めたことは曲げなくて、
・義理人情に厚い、
・そして頼もしい(ちょっと暴力的)

日本でいえば「日本男児」のような人は、
あまり見かけなくなったような気もします。

しかしながら、いつの世も、

”自分の軸を貫き通して生きる人”

は、芯が通ったカッコよさを感じるな、
と私は思うのです。


■この『初秋』という一冊。

ハードボイルド探偵・スペンサーシリーズ
(ミステリー系のシリーズ作)

の中の一冊です。

読み始めると、この本の主人公である、
スペンサーなる私立探偵に惚れてしまいそうなほど

”男の生き様とは何か?”

を感じさせられる1冊です。


■ストーリーは、私立探偵スペンサーに舞い込んだ、
1つの依頼から始まります。

「離婚した夫が連れ去った息子を取り戻してほしい」。

そう、養育権を持つ母親からの依頼は、
百戦錬磨のスペンサーにとっては、ごくごく簡単な内容でした。

しかしながら、実際にその依頼内容を知るにつれ、
15歳の息子が、いがみ合う夫婦の取引材料になっていることを知ります。

自分のことしか考えない親。

そして、お互いの”有利な条件”のために、
2人の間で揺れ動く15歳の少年の心は、
親を信じられず、誰も信じられず、
自分の人生を完全に諦めてしまっていました。

テレビばかり見て、虚ろな目で、
ぼんやり過ごす少年。

「何がしたいのか」「自分はどうしたいのか」と聞いても、
わからない、どうでもいい、と答える。

、、、完全に希望を失っている、そんな少年と出会います。


■その中でスペンサーは、
その15歳の少年と心を通わせ、
優しく、時に厳しく育てていくのです。

以下、少年とスペンサーのやりとりを、
本編から抜粋してご紹介します。

(若干のネタバレになります)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

少年「もうなにもやりたくない。
  どうしてぼくのことを放っておいてくれないんだ?」

スペンサー
「なぜなら、おまえさんが生まれたときからみんなが放ったらかしておいて、
 そのために今、おまえは最低の状態にあるからだ。
 おれはお前をそのような状態から、脱出させるつもりでいるんだ」

少年
「それでどうなるの? ぼくは、もう少したったら、また帰るんだ。
 結局なんにもならないじゃないか?」

スペンサー
「…たぶん、そういうことになるだろう。
 だからこそ、おまえは変えるまでに自立できる能力を身につけなければならないのだ。
 自立心だ。自分自身を頼りにする気持ちだ。自分以外の物事に影響されないことだ。

 おまえはまだそれだけの年になっていない。
 おまえのような子供に自主独立を説くのは早すぎる。
 しかし、おまえにはそれ以外救いはないのだ。
 
 おまえは両親に頼ることはできない。
 おまえが今のようになったのは、彼らのせいだ。
 両親が人間的に向上することはありえない。

 おまえが、自分を向上させるしかないのだ」

ポールの肩が、震えはじめた。

「それ以外に、途はないんだよ」

泣いていた。

「おれたち二人でやれる。
 お前はある程度の誇りを抱き、自分自身について気にいる点がいくつかできる。
 俺は手助けができる。二人で、やりとげることができる」

(引用:『初秋』より)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

■優しい。

厳しくて、だからこそ、優しいのです。
 
スペンサーは彼に、一つ一つ、
「自分の力で生きていく」とはどういうことなのかを、
その少年に教えていくのです。

大工仕事、料理、
ランニング、ボクシング、
ウェイトリフティング

自信をつけるために、

身体を鍛え、精神を鍛え、
自分でできることを少しずつ増やしていく。

教え、寄り添っていく。

一緒に生活をする中で、
スペンサー自身の背中で、少年を育てていくのです。


■口数は少なく、甘い優しさではない。
ときには厳しく、現実を突きつけるスペンサー。

そんな彼が見せる言動は、
「本当の優しさとは何か?」を考えさせらます。

愛を感じる傑作。

『初秋』の作者パーカーの善き読者は、
”卓越した恋愛小説を求めている貴女である”と帯にありましたが、
男でも惚れてしまう一冊です。

物語自体が非常に読みやすく、
登場人物もさほど多くなく、短い作品なので、
すらすらと読めるのもよいです。

ゴールデンウィークに、ぜひお勧めの一冊。

爽やかな読了感で、良い時間の使い方ができたな、と
きっと思える一冊かと思います。

スペンサー、カッコよかです。


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<今週の一冊>

『初秋』(ロバート・B. パーカー (著), 菊池 光 (翻訳))



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