「自分に思いやり」を持つことは、世の中のためになる
(本日のお話 2430字/読了時間3分)
■こんにちは。紀藤です。
昨日は名古屋へ出張。
『4Dx』の研修実施立会い、
ならびに、1件のミーティングなどでした。
*
さて、早速ですが本日のお話です。
購読している『ハーバードビジネスレビュー』より、
興味深い記事がありました。
それが『セルフ・コンパッション』というもの。
人材開発の世界で近年注目されているこのキーワード。
今日はこの言葉からの学びについて、
皆さまにご共有させていただきたいと思います。
タイトルは、
【「自分に思いやり」を持つことは、世の中のためになる】
それでは、どうぞ。
■研修を実施するにあたって、
よく議論にのぼる話があります。
それが、
”「成長をしようと思う気がない人」には、何をやってもダメ”
という話。
確かに、色々アプローチを与えても、
・生まれつきこんな性格だから
・今更何やったって、変わんない
・才能がないからムリ
というように、
性格や特徴や能力を、”石に刻まれたモノ”のように捉え、
今も5年後も変わりはしないと信じていれば、
当然、現実もそうなります。
この考えを、『固定思考』と呼びます。
*
一方、
「性格的特徴は改善できる」
「能力も伸ばせる」と考える人もいます。
これは、「固定思考」に対して、
『成長思考』
と呼びます。
「成長思考」の人は、積極的に努力をし、
改善をし、前向きで楽観的。
ゆえに当然、
”成長もするし、未来もよりポジティブな結果になる”
傾向があります。
そして、どちらのほうが望ましいかと言えば、
『成長思考』
であるのは言うまでもないでしょう。
・自分の可能性を信じられて、
・前向きに取り組めて、
・過去の自分より向上もできて、
・皆からも評価されたほうが
本人にとっても、周りにとっても幸せであるかと。
■しかし、ここで疑問が起こります。
「どうすれば『成長思考』になれるのか?」
という疑問です。
いやいや、成長思考はわかる。
いやいや、それがいいのはわかっているよ。
でも、そう思えないから、ツラいんじゃないか。
「どうすれば”自分の可能性を信じられる”のか?」
「どうすれば”努力すればきっとうまくいく”と思えるのか?」
「どうすれば”自分自身をもっと改善しよう”と思えるのか?」
ここに一つの壁があり、
大きな疑問であり、考えたいことなのです。
*
そこで、鍵となるキーワードが冒頭の、
【セルフ・コンパッション】
なるキーワードなのです。
聞き慣れない単語ですが、日本語に訳すと
『自分への思いやり・慈悲』
という意味です。
不思議なことに
「自分への思いやり」を持ってあげると、
人材開発の面でも、個人の人生においても、
様々なプラスが現れることがわかりました。
■こんな実験が行われたのです。
それは、テキサス大学の准教授である、
クリスティーン・ネフ氏による実験です。
*
ある被験者に対して、
『自分自身の最大の弱点を考えてもらう』
(自信がない、不安、内気である、人間関係が不安定など)
というワークをしました。
その後、被験者を3つのグループに分けて、
以下のような指示で文章を書いてもらったのです。
*
グループ1は、「思いやり」グループ。
「自分の弱点に”思いやりと理解”という視点で自分自身に語りかけています。
あなたはどんな言葉をかけますか?」
と問うて、文章を書いてもらいました。
グループ2は、「強み重視」グループ。
「自分の弱点に”自分の良いところ(悪いところではなく)”を証明するという視点で、
自分自身に語りかけています。どんな言葉をかけますか?」
と問うて、文章を書いてもらいました。
グループ3は、「何も書かない」グループ。
ただ、弱点を上げただけで終了しました。
、、、そして、グループ1~3について、
『自分の弱点をどう捉えるか?』
について質問をしてみました。
そして
{1}「その弱点は、自分の性格的ものだから変えられない」(『固定思考』寄りの答え)
または、
{2}「その弱点は、努力によって変えられるものである」(『成長思考』寄りの答え)
どちらに回答が振れるのか、調べてみたのでした。
■すると、面白いことがわかったのです。
【自分に”思いやり”を持って言葉を書いたグループ1は、
優位に『成長思考』寄りの回答になった】
というのです。
つまり、
自分に「思いやり」を持つと、
(=セルフ・コンパッションを持つと)
『「成長思考」が鍛えられる』
ことがわかりました。
不思議なもので、自分に「思いやりや理解の心」を持つと、
・自分に正直でいられるようになる
・自分の悪いところもそのまま受け止められるようになる
・その上で、自分を改善良くしようと思える
そんな効果があるという事実がわかったのでした。
■私達は、個人であれ、組織であれ、
ほとんどの人が「もっとよくなりたい」と願っているはずです。
でも、
途中で諦めてしまったり、
自分はムリだと思ったり、
どうせ変わらないと投げ出したり、
「良くなろうとする努力」をできないことがあります。
もしそうだとしたら、それは、
”自分に対しての「思いやりや理解」”
が足りていないのかもしれません。
友人や家族だったら
「うんうん、そういうこと、あるよね」
と励ませても、不思議なもので、
自分のことになると途端に許せなくなったりします。
でも、それは、「自分にとってもマイナス」であり、
「社会にとってもマイナス」なのです。
・自分に「思いやり」を持てない。
↓
・自分なんて変わらないと、
「固定のマインドセット」になる
↓
・自分の弱点が「改善されない」
↓
・自分が成長しないことは、周りにも影響を与える
↓
・すなわち組織や社会にとっても損失になる
そんな構造になるとも言えるのです。
■また「自分に思いやり」を持てない人は、
他人への態度にも”リンク”をします。
ゆえに、
「自分への思いやり」
は甘えや怠慢ではなく、
・誰かへの影響力を磨くという文脈でも、
・自分自身が現実を受け止め、改善するという文脈でも、
とても大切なキーワードである、と思うのです。
*
そして、自分が「思いやり」を持ち、自分の可能性を認められ、
そして、弱みを改善し、強みを大きく伸ばせたのであれば
それは、家族に、組織に、社会に還元されます。
だからこそ、『セルフ・コンパッション』が大切、
そんなことを思った次第です。
ゆえに、
【「自分に思いやり」を持つことは、世の中のためになる】
のだろうな、そのなことを思った次第。
人材開発・組織開発の観点からも、
とても大切なことだな、と思いました。
最後までお読みいただきありがとうございました。
今日も皆さまにとって、素晴らしい1日となりますように。
==================================
<本日の名言>
弱い者ほど相手を許すことができない。
許すということは、強さの証だ。
マハトマ・ガンディー(インドの弁護士・社会運動家)
===================================