今週の一冊『明日死ぬかもしれない自分、そしてあなたたち』
(本日のお話 1992字/読了時間2分)
■おはようございます。紀藤です。
昨日は、コーチング勉強会の実施。
並びに研修の企画、読書などでした。
さて、本日のお話です。
毎週日曜日は、お勧めの一冊をご紹介する、
「今週の一冊」のコーナー。
今週の一冊は、
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『明日死ぬかもしれない自分、そしてあなたたち』
山田 詠美 (著)
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です。
■この本を購入したきっかけ。
最近、地下鉄の電車の中吊り広告で、
『つみびと』という本の広告がありました。
そのサブタイトルには、
”灼熱の夏、23歳の母・蓮音は、
なぜ幼な子二人をマンションに置き去りにしたのか。
真に罪深いのは誰なのか。
あの痛ましい事件に山田詠美が挑む。
虐げられる者たちの心理を深く掘り下げて、
日経新聞連載時から話題を呼んだ、迫真の長編小説”
と書かれたものがあり、非常に興味がわき、
Amazonで検索してみました。
ビジネス書より、こういった人の心理を描いた本のほうが、
実は勉強になるな、と最近よくよく思います。
■しかし、まだ単行本で高かったので、
「またにしよっかな」と思っていたら、
同じ山田 詠美氏の著作で、
『明日死ぬかもしれない自分、そしてあなたたち (幻冬舎文庫)』
という非常に興味深いタイトルが目に入り、
かつ、これまた非常に高評価。
ついそちらを買ってしまいました。
(、、、という長い前置きでした。
ちょっと余談ですが、個人的に興味がある著者がいたら、
その人の一番評価が高い本から読むようにしています。
すると、なんとなく合う合わないがわかる気がするし、あまりハズれがありません)
一つの本の探し方の共有でした)
■さて、ではこの、
『明日死ぬかもしれない自分、そしてあなたたち (幻冬舎文庫)』
はどんな本なのか。
一言でいうと、「小説」です。
しかも、結構全般を通して、
”けっこう重たいテーマ&ストーリー”です。
あらすじは以下の通り。
(以下Amazonより引用です)
”ひとつの家族となるべく、東京郊外の一軒家に移り住んだ二組の親子。
それは幸せな人生作りの、完璧な再出発かと思われた。
しかし、落雷とともに訪れた長男の死をきっかけに、
母がアルコール依存症となり、一家の姿は激変する。
「人生よ、私を楽しませてくれてありがとう」。
絶望から再生した温かい家族たちが語りだす、喪失から始まる愛惜の物語。”
とのこと。
■「人の死」とは、本当に深いテーマで、
誰もが必ず考える、普遍のテーマでもあると思います。
私もよく考えます。
ただ個人的にはありがたいことに
自分の身近には”死”というのが、
比較的縁遠い人生を送ってきました。
ただ、
”いつ、誰が、どんな形で死を迎えるのかはわからない”
というのは事実であり、
漠然と思い続けている不安でもあります。
自分が”残す側”になった場合、
あるいは”残される側”になった場合、
それぞれ、心情に、実際の物質的変化において、
どんな事が起こり、どんな心情になるのか…
かけがえのない人を失った時、
自分がどうなってしまうのか。
、、、
想定してもしきれない「痛み」により、
自分の身を剥がされる想いにより、どうなるのか。
そして、その”痛み”とは、
例えば『7つの習慣』の考え、
その他の過去の賢人の知恵を持っても、
抗えないほどの力なのだろう…
と思うわけです。
だから、せめて想像しておきたい。
心構えをしておきたい。
■別の話ですが
『社会的排除―参加の欠如・不確かな帰属』(著:岩田 正美)
という本があり、
”社会で活躍していた人が、
なぜホームレスになってしまうのか、
社会的に排除されてしまうのか”
を調査した本があります。
これによると、一番多い原因の一つが
「配偶者の死」
であることがわかりました。
そこからなし崩し的に生活が崩壊していく、
それが一つのパターンとしてあるそうです。
■今回ご紹介している、
『明日死ぬかもしれない自分、そしてあなたたち 』
の本は、まさしく、
「幸せな家庭が”最愛の長男の死”によって、
母親のアルコール依存、入退院の繰り返し」
そこから引き起こされる、
家族の崩壊と再生の物語として描かれていきます。
長男の死を受け入れられない母親。
なくなった長男の代わりに、
愛情を独り占めできると感じた次男の葛藤。
母親のアルコール依存によって、
家族の面倒をみることになった長女。
長男の存在によって、苛めに合うようになった末娘。
同じく前妻に先立たれ、再婚したものの、
母親がそのようになり仕事との間で悩む父親。
、、、
それぞれの主観から、
鮮やかに、臨場感を持って描かれます。
その著者の心的描写の凄さが、
まるで自分が仮想体験しているように引き込まれる、
そんな作品です。
■最後は、
”長男の死”を乗り越えていく、さあ、がんばろう、、、、
というシンプルな話ではないのですが、
その”死”を受け止めていくプロセスで、
家族が自分たちを再構築していく
そんなハッピーエンドで終わる、
読了感の良いお話です。
大切な人をなくした痛み。
そこから始まる、
人間のその繊細な心とエピソードを、
体験できる、そんな一冊。
よろしければ、ぜひ。
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<今週の一冊>
『明日死ぬかもしれない自分、そしてあなたたち』
山田 詠美 (著)
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