今週の一冊『成人発達理論による能力の成長 -ダイナミックスキル理論の実践的活用法-』
(本日のお話 2905字/読了時間5分)
■こんにちは。紀藤です。
昨日土曜日は、2件の打ち合わせ。
また、大学院のオンライン入学説明会への参加。
人や組織についてより理論的に学び、
再現性高く貢献したいという欲求が、
日増しに高まっております。
受かる受からないはわかりませんが、
いずれにせよ来年、受検をしようと思います。
そして夕方からは
妻の実家の茨城県ひたちなか市へ帰省でした。
*
さて、本日のお話です。
毎週日曜日は、お勧めの一冊をご紹介する
「今週の一冊」のコーナー。
今週の一冊は、
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『成人発達理論による能力の成長 -ダイナミックスキル理論の実践的活用法-』
加藤洋平 (著)
https://www.amazon.co.jp/dp/B0739Q42P5/ref=cm_sw_em_r_mt_dp_2b1zFbPJEAZRR
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です。
■最近のマイブーム。
「成人発達理論」の濃厚な一冊。
読んでみて、いやはや、
「その道の専門分野のプロが大人の成長を定義すると
このように理路整然と整理できるのだなあ…」
と、非常に納得をした一冊でした。
「成長」という曖昧模糊としたものを、
きちんと言葉で定義をされた感覚です。
■ちなみに、発達心理学では
近年になるまで、
「成長は子供がするもの」であり、
「大人になってからは成長しない」
という考えがあったそうです。
しかし、ここでわざわざ
「”成人”発達理論」
と呼ぶところに、
人は大人になっても
能力を伸ばしていくし、
出来ることも増えていくし
「成長」していくものである、
と成人発達理論のロバート・キーガン博士は
定義をしました。
■では、「成長」ってなんだ?
と捉えたときに、
成長には2種類の成長があることを
この著書では、冒頭に説明します。
まず1つ目は、
『1)人間としての器の成長(人間性や度量)』。
そして、2つ目が、
『2)具体的な能力(スキル)の成長』
この2点となります。
■しかし、特に日本で注目されている
発達心理学の大人の成長は
1)人間としての器の成長
に重きが置かれており、
2)具体的な能力の成長
については、あまり詳しく語られていない。
、、、しかし、当然ながら、
我々が成長をしていくためには、
”「人間性」と「能力」の2つを
自転車の車輪のように
双方、成長させる必要がある”
わけです。
そうしなければ、実際に
現実社会で望む成果につなげることが
難しいことは、想像に難くないでしょう。
■では、どうすれば、
1)人間としての器の成長
2)能力の成長
を、理論的背景に基づいて理解し、
意図的に育てていくことができるのか?
、、、このことについて、
今回ご紹介の著書『能力の成長』では、
・ハーバード大学教育大学員教授 ロバート・キーガンの
『成人発達理論』で、
「1)人間としての器の成長」を語り
を念頭に起きつつ、同じく
・ハーバード大学教育大学院教授 カート・フィッシャーの成長モデル
『ダイナミックスキル理論』で、
「2)具体的な能力の成長」を語り、
それらを理論的に、
明快に教えてくれます。
ゆえに、
「私たちは、どのように能力を
発達させていけばよいのか?」
を、よくある自己啓発本であるような、
「まず行動が大事だ」
「圧倒的PDCAを回し続けること」
「量的な経験が理論へと昇華していくもの」
という、確かに正しいけれども
やはり誰かの個人的経験を拭えない主張ではなく、
「理論」
として語ってくれるところに
非常に説得力を感じさせてくれます。
■実際の内容としては、
”人は、多様な経験を動的プロセス(人やプロジェクトとの関わり)を
通じてすることで、
ダイナミックに、それこそ
網の目のように広がりと深さを持って
広がっていくものだ”
という「ダイナミックスキル理論」から入り、
そのダイナミックスキル理論を形作る様々な要因を
(環境の影響や、スキルの成長のプロセスや、メカニズム)
解像度高く、かつ、隙がない形で
言語として表現し尽くしているところに、
圧倒的な著書の強みを感じます。
*
以下、著書に書かれていた代表的な「理論」でした。
(途中から小難しくなってきますが…
なんとなくイメージしていただければ幸いです)
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<キーワードのまとめ>
『成人発達理論による能力の成長 -ダイナミックスキル理論の実践的活用法-』より
◯『発達の網の目』のメタファー
… 一つのスキルが直線的に伸びるのではなく
様々な能力がお互いに関係し合いながら成長していく
(★つまり、幅がある多様な経験をすることが、
能力の成長のためには大事!)
◯能力の『環境依存性』
… 人は周りの環境によって、能力を発揮できる幅が変わってくる。
前職で優秀でも、次の職場では能力が発揮できない、というように
「能力は環境に依存する」という事実がある。
(★ゆえに、自分の能力が発揮される状況、特性などを
自分でも自覚しておくことが大事!なのです)
◯能力の『課題依存性』
… 私たちは、”具体的な課題”を通してしか、成長ができない。
つまり、何かの能力を高めるためには具体的な課題をしないとダメ。
(★例えば、英語のスピーキング能力も、実際に話をするという課題がないと
能力は伸びることはない、つまり「場」を設けよ!ということですね)
◯能力の『変動性』
… 私たち自信の感情状態、身体状態でも
発言できる能力が変わってくる
(★いつでも100%力が出せるとは限らない、ということですね。
力が出せる、感情・身体状態を理解しましょう)
◯成長と時間の関係『マクロ・メソ・ミクロな成長』
… 年単位の成長(マクロな成長)のためには
月単位の成長(メソな成長)が必要で、メソな成長のためには
1日単位の成長(ミクロな成長)が必要である。
(★日々の成長を大事にできなければ、能力の成長は起こらない!
ということですね。目に見えずとも1分1秒の成長が大事なのです)
◯『フラクタル』な能力の成長をする
… 「能力の成長」とは、点→線→面→立体、そして
立体が点となり、線、面、立体とまた大きくなることを続けていく、
雪の結晶のような構造をしている。
(★同じことを繰り返しているようでも、
レベルが変わってきているのです。それは微妙な差異ですが、
能力の成長において極めて重要なポイントです)
◯「能力の成長」に関する5つの法則
… 1統合化、2複合化、3焦点化、4代用化 5差異化
というようにいくつかの段階がある。
(、、、なんだか難しくなってきました)
◯フィッシャーが提唱する『13の能力レベル』
… 反射階層、感覚運動階層、表彰階層、抽象階層、原理階層
(、、、本書を読んでください笑)
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というようなイメージ。
後半の、
「5つの法則レベル」や、
「13の能力レベル」などは、
言葉だけ並べてみると
意味不明な感じがしますが(汗)
説明を読むと「ああ、そういうことね」と
理解いただけるようなわかりやすい事例で
表現されています。
後半力尽きてしまい、
解説を割愛させていただきました。
スミマセン。
■しかし、このような抽象度が高いことを、
言葉にして切り分けて伝えられることに
私はただただ、感動をしておりました。
重厚感があるタイトルや見た目の本は、
確かに読むのに躊躇することもありますが、
やはり学者がまとめただけあり、
『モヤモヤっとした「成長」という言葉を
レベル・ステップを明快に分けて教えてくれる』
という意味で、
思考を明瞭にしてくれる
気持ちよさがあります。
そしてそれは「成長」という言葉に
奥深さをもたせてくれて、かつ
立ち戻れる場所を与えてくれる気がします。
ということで、ぜひ
人材開発や人の成長に関わる方、
あるいは自分自身の成長に興味がある方は
学び多き冊になるかと思います。
よろしければ、ぜひ!
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<今週の一冊>
『成人発達理論による能力の成長 -ダイナミックスキル理論の実践的活用法-』
加藤洋平 (著)
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