今週の一冊『「旭山動物園」革命 —夢を実現した復活プロジェクト』
(本日のお話 2999字/読了時間5分)
■こんにちは。紀藤です。
週末より、コーチング合宿にて
北海道に来ております。
また重ねて、
「旭山動物園に行く」
という叶えたかった目的を達成すべく、
北日本三番目の都市、
旭川市に言ってまいりました。
*
さて、本日のお話です。
実は昨日日曜日に、
いつもお勧めの一冊をご紹介している
「今週の一冊」のコーナーを、
うっかり飛ばしてしまいましたので(汗)、
本日は遅ればせながら
今週の一冊をご紹介させていただければと思います。
内容は、「旭山動物園」にまつわる一冊。
今週の一冊は、
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『「旭山動物園」革命 —夢を実現した復活プロジェクト』
(著:小菅 正夫)
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です。
■旭山動物園。
もう10年以上前ですが、
話題になった北海道旭川市の
動物園です。
廃園寸前の動物園。
予算もない。
目玉となる動物もいない。
地方の動物園。
、、、そんな中で、
旭山動物園が、
日本で最大の来園者数を誇る、
上野動物園を上回る来場者数を達成し
そこに至ったプロセスと、
動物園のこだわりにより
一躍、旭山動物園と旭川市は
有名になりました。
■その「奇跡の復活」と呼ばれた理由の一つが、
『14枚のスケッチ』
と呼ばれるデザイン画でした。
旭山動物園が経営としても冬の時期に、
現場の飼育員を含むスタッフが、
仕事終わりに23時まで
皆でワクワク夢を語りながら、
「こんな動物園ができたらいいよね」
「動物のこんなすごいところを
知ってもらえる動物園にしたい」
という理想を語り合い、
スタッフの1人が、
それをスケッチに落としこんだのでした。
(※このお話の詳細は過去のメルマガに記載をいたしました)
↓↓
2377号 2020年8月23日
今週の一冊『未来のスケッチ -経営で大切なことは旭山動物園にぜんぶある-』
https://www.courage-sapuri.jp/backnumber/9449/
■そして、この度
ご紹介させていただく一冊も、
そんな旭山動物園のエピソードです。
ただ、『未来のスケッチ』は
早稲田大学ビジネススクールの遠藤教授が
取材を元に書いた本ですが、
今回ご紹介の一冊は、
旭山動物園の園長を務め、
また未来のスケッチにご自身が関わった
小菅元園長が人生をかけた
”旭山動物園の再生プロジェクト”
を、自らの言葉で語った一冊です。
■その言葉は、小菅元園長の、
哲学が詰まっています。
・動物園とは、どうあるべきなのか?
・動物園が持つ、社会的使命とは何か?
・動物から、人が学ぶべきことは何か?
・動物園の歴史と、未来に向けての動物園の役割とは、何か?
、、、
「かわいい」「かわいそう」だけでは語れない、
この地球上にいる”動物”から、
我々は何を学び、そして
どう生きていくべきなのか?
深く、生命に対する愛情に溢れた理念。
そして、現代社会に対する危機意識。
それらを、少しでも多くの人に伝えよう、
伝えたい、伝えなければという思いが、
ひしひしと伝わってきます。
■そして、その思いが、
具体的な施策へと繋がり、
そのこだわりが一つ一つ、
丁寧に語られます。
そしてそれは、今回、
私(紀藤)が旭山動物園を訪れて感じた感動を
紐解いてくれる話でした。
例えば、
「死」
についてもそう。
旭山動物園には、
「喪中」の展示がされています。
生まれて1週間で、
”衰弱”で亡くなったキングペンギン。
”心不全”で亡くなった
十数年生きてきたフンボルトペンギン。
”肺炎”でなくなった
ジェンツーペンギン。
頚椎の骨折でなくなった、
肝臓がんでなくなった、
腹膜炎で亡くなった、
、、、
動物の誕生など、
喜ばしいニュース以外の
「死」の情報も展示してある。
■また、
「老いと病」
についてもそう。
老いて、衰えてきた
チンパンジーのリーダー。
結果、群れの中で
リーダーを奪われる戦いを挑まれ、
日々生傷が耐えない。
首の後ろに、大きく
開いた生生しい傷がある。
それも、隠そうとせず
ありのままに展示する。
■あるいは、その
「動物の説明」
についてもそう。
その動物が、どんな特徴を持ち、
今なぜ絶滅危惧種となってしまったのか?
あるいは、
なぜ「害獣」というレッテルをはられ、
駆除の対象になっているのか?
、、、それらのその裏側には、
人間のエゴがあり、
人間優位の考え方と歴史があり、
その結果、今の動物が生き生きとした姿を
この地球で見せることができなくなっている。
あるいは苦しんでいる。
■動物の凄さと愛情を
十分に感じてもらった上で、
不都合な事実を知らしめる。
そのことで、
確かに私たちの中に、
「かわいかった」
「かわいそう」
だけでは終われない感覚が
自分たちに生まれることにも
気づくのでした。
■本書には、このように書かれています。
”人を知らんと欲すれば、まず獣を知れ”
”動物園はよくレクリエーション施設の一つだと言われる。
re-creation、つまり人間性の再創造なのである”
”限界を超えて、自分自身と戦える人材の育成をする”
”設置者が苦しくなったら、真っ先に捨てられるのが
動物園や水族館なんです。そういう運命なんです。
悲しいことです。
そして、こんな一節もあります。
動物園づくりの根本にある思いを語る時に、
よく思い出す言葉がある、というお話。
”住職がおもむろにこう質問してきた。
「地獄とはなんだと思う」
答えられないでいると、住職はこう言った。
「地獄とは、やりたいことができないことだ」
(中略)
今の動物園づくりの根本にあったのは、
住職から言われた言葉だったかもしれない。
動物も人間も、やりたいことができなければ幸せではない。
だから、それぞれの動物の
いちばんかっこいいところは、
彼らがやりたいことをやっている瞬間である。
それをお客さんに見せたかった”
、、、と。
■動物が気持ちよくいられて
好きになってしまう、たくさんの工夫。
旭山動物園にかつて
訪れた事がある人であれば、
「ああ、それは
そういう想いが込められていたのか」
という気づきになるでしょう、
そうではない人も
この本を通して、
「こんな動物園があるのか。
動物園とはこんなメッセージを持つ施設なのか」
という驚きと発見になるでしょう。
■小菅館長はもう退任されていますが、
そのDNAが受け継がれているのは、
飼育員の方々の
動物について語るときの様子から
伝わってきました。
また全ての施設が、
動物への愛情と尊厳で
できているように感じました。
これはもちろん、
本を読んでのバイアスがあるのかもしれませんが、
それでもとても素敵な、
素晴らしい動物園だと感じましたし、
私たちの誰もが1度は訪れたことがあるであろう
「動物園」というものを考える上で、
ぜひご一読いただきたい本だな、
そんなことを思った次第です。
最後に、旭山動物園の入り口に
書いてあった言葉を紹介いたします。
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<旭山動物園 存在のこだわり>
動物園も人間のエゴで動物たちを閉じ込めている場所です。
動物園が人間の知的好奇心や癒やしや楽しさを
追求するためだけの場であってはいけないと考えます。
動物たちの本質的な素晴らしさを感じてもらうことで
飼育動物と来園者をつなぐ架け橋となり、
動物園は飼育動物とその動物が
本来暮らすふるさとを結ぶ架け橋としての役割を
担うことに取り組まなければいけないと考えます。
旭山動物園は
『ヒトも含めたたくさんの命が輝き続ける未来のためにできること』
を考え、実行していきたいと思います。
※あさひやまどうぶつえんからのメッセージ より
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
旭山動物園、素晴らしい場所でした。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
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<今週の一冊>
『「旭山動物園」革命 —夢を実現した復活プロジェクト』
(著:小菅 正夫)
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