「エリクソンの8つの発達段階」から、人生のテーマを考える(後編)
(本日のお話 3904字/読了時間5分)
■こんにちは。紀藤です。
昨日は「エリクソンの8つの発達段階」という
お話をお伝えさせていただきました。
今日もそのお話の続きについて、
皆さまにご共有させていただきたいと思います。
それでは、早速参りましょう!
タイトルは、
【「エリクソンの8つの発達段階」から、人生のテーマを考える(後編)】
それでは、どうぞ。
■昨日のお話ですが、
エリクソンは「アイデンティティ」の概念を
提唱した精神分析の世界での有名人。
そのエリクソンが、
”人生には「8つの発達段階」があり、
それぞれのステージでテーマがある”
と言いました。
そして、その「8つの発達段階」を
理解しておくことで
・自分がどのステージなのか、
そのテーマを理解でき、参考になる
・世代の違う相手を尊重できる
(特に子育てには役に立つ)
ため、お勧めである、
というお話でした。
そして昨日は、
生まれてから小学生(0~12歳頃)までの
8つの段階の前半をお伝えさせていただきました。
※詳しくはこちら
↓↓
「エリクソンの8つの発達段階」から、人生のテーマを考える(前編)【カレッジサプリ】
https://1lejend.com/b/detail/HSfoIRnMfw/3830050/
■さて、後半戦は「アイデンティティ」です。
皆さまも聞き馴染みがある言葉かと。
平たく言うと、
「自分は何者か?」
という問いへの答えです。
そしてライフサイクルの
「8つの発達段階」の後半(段階5)は
この「アイデンティティ」から始まります。
それでは見ていきましょう!
(ここから)
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<<エリクソンの「8つの発達段階」(後半)>>
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【段階5:青年期(12-18歳頃)】
「テーマ: アイデンティティ対アイデンティティの混乱」
(identity vs. identity confusion))
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12-18歳頃、中学生~高校生くらいのテーマ。
それは「アイデンティティ」です。
この時期は本当に色々な悩みがありますね。
・性格・外見を比較してしまう
・勉強/運動ができるorできない
・自分ってなんなんだろう?
、、、そうやって
周りの目が特に気になったり、
自分自身がよくわからなくなったりして、
思い悩んでしまう。
そんな風に、
”自分自身のことを探求していく時期”
がこの時期になります。
特に「アイデンティティ」については、
2つの要素から成り立ちます。
1、自分自身が「自分は自分である」という意識を持っている
(=自己斉一性)
2,周囲から「自分は◯◯な人である」と認められている
(=社会的アイデンティティ)
の2つからあると言われます。
ちょっとややこしいですが、
「自分は自分!」&
「◯◯さんってこんな人だよね」
という自分の自己理解と、
他者の自己理解の本質が
自分の中で腹落ちしていると、
「自分は何者か?」
が理解できている状態に近い、
といえるかと思います。
*
、、、しかし、これが上手くいかないと、
対になる「アイデンティティの拡散」が起こります。
自分が何者かわからず、
混乱するのです。
そうすると、症状として
・自意識の過剰
(例:ひとりよがりのナルシズム)
・選択の回避と麻痺
(例:進学か就職か決められず、ひたすら怠慢し続ける)
・否定的アイデンティティの選択
(例:自分なんていないくていいんだ、と思う)
・時間的展望の拡散
(例:将来を考えない、自分が歳を取りすぎたと感じる、など)
となって、”危機”を迎える、
とエリクソンは言います。
(深いテーマなので
大人になっても悩み続ける話でもあるかと思いますが)
そして、その次は初期成人期です。
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【段階6:初期成人期(18ー40歳頃)】
「テーマ: 親密性 対 孤立」
(intimacy vs. isolation)
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さて、青年期の次は「成人」の時代です。
でも、40歳くらいまでは
”初期”成人期といいます。
恋愛したり、結婚したり、
そして父・母になったり。
そんな世代も増えてくる年代ですね。
ちなみに、ここのテーマは「親密性」です。
”自分のアイデンティティが確立している。
ゆえに、他者と親密な関係を結んでも、
自分自身が揺らがない”
のです。
*
もし自分自身の
「アイデンティティ」が確立していないと、
こんなことが起こります。
例えば、
・他者に過度に依存的になる
(自分の軸がブレているから)
・自分の嫌なところを相手に鏡のように投影させ、
相手を責めてしまう(本当は自分を責めている)
・相手が自分の領域に入ってくるのを恐れ、
過度に防衛的、あるいは表面的になる
というように。
これが、「親密性」と対になる
”「孤立」という危機”になります。
そう、
青年期のアイデンティティを乗り越えて、
初期成人期の「親密性」を獲得ができるのです。
人と深く付き合うことって
場合によっては傷つくし、怖いのですよね。。
だからこそ、”自分は何者か”という
アイデンティティが大事になるのですね。
この時期は、18-40歳まで、
それなりの時期続いていきます。
「人を愛する」って難しい。。。
さて、この次は、
もうちょっと大人になって40歳です。
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【段階7:壮年期(40ー65歳頃)】
「テーマ:ジェネラティビティ 対 停滞」
(generativity vs. stagnation)
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さて、大人の中盤戦は「壮年期」。
ここでのテーマは、
”generativity(ジェネラティビティ)”
です。
なんぞや? と思いそうですが、
この言葉がもつ意味は、
・生殖性
・生産性
・世代性
・創造と育成、
・生成力、生成継続性
など、実に幅広いです。
ただ、そこに含まれている意味は、
「世代を越えて継承する」
ということ。
それは親としての
遺伝的な次世代だけではなく、
会社の後輩を育てたり、
次の世代を考えるというステージもそう。
育てる。導く。継承する。
これがこの壮年期のテーマなのですね。
*
一方、対となる”危機”は、
「停滞」です。
”自己陶酔”とも
書き表されています。
どういうことかというと、
「継承」をしないので、
・自分の活動や命が、自分の中にだけで留まる。
よって発展せずに、終結してしまう
そして、
・ジェネラティビティを発達させていないと、
自分を子供のように甘やかし始めることが多い
(byエリクソン)
といいます。
「次世代を育て・導き・継承する」。
そのことで、自分自身も満たされ、
そして発展をしていく。
世代間のダイナミズムが大事、
とエリクソンは言っております。
、、、さて、次はいよいよ
最後のステージです。
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【段階8:老年期(65歳頃)】
「テーマ:自己統合 対 絶望」
(ego integrity vs. despair)
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大人の後半戦、「老年期」です
ちなみに老年期とは
「mature age」(成熟した世代)と書かれます。
老年じゃなく、成熟した年頃なのです!
では、成熟したこの時代に、
何がテーマとなるのか。
それは
「自己統合」
です。
すなわち、大きく言えば
”自分の人生の意味を見出す”こと、
と言い換えられるかと。
元々の英語の
「integrity(インテグリティ)」の意味は
”高尚な精神の状態を保っていること”
とされます。
・行動・言葉・思考が一貫している
・裏表がない
・強固たる信念があって揺らぐことがない
↓
結果、言動が常に誠実であり高潔である
とのこと。
、、、なんていうと、
ものすごくハードルが高い感じですが
他方エリクソンは「受容」を
キーワードにしています。
もうちょっと広い意味で見ると、
(色々ある中でも)
”自分を受け入れていく”
とも解釈できるかもしれませんね。
*
そして、この「自己統合」と
対になる”危機”が「絶望」です。
見るからに重々しい言葉ですが、
”すべての希望を失ってしまった状態”
です。
具体的な心境とは、
「もう新しい人生やチャレンジをするには
時間が足りない。。。」
という感情です。
この感情は、
・何かに対する嫌悪や人間嫌い、
・制度や特定の人々に対する
慢性的かつ軽蔑的な態度
となって表出するそう。
しかし実際は、
「その本人が自分自身を軽蔑していることを表現している」
(byエリクソン)
とのことです。
「自己統合」か「絶望」か。
非常に考えさせられる
最後の段階でございますね。
※参考:『アイデンティティとライフサイクル』
エリク・H・エリクソン 著/西平直・中島由恵 訳)
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■さて、いかがでしたでしょうか。
うーん、、、私自身、
書きながら実に考えさせられました。
段階1~4くらいまでは
「子供の発達はこういうものなのだよな」
「自分も確かにそうだったよな」
と振り返って考えていましたが、
段階5のアイデンティティ以降は、
自分が迷いながら歩んでいる道と重なり、
「ここで言われているテーマは
(アイデンティティや、次世代への継承)
もっと深く考えていきたい」
と感じたのでした。
■ちなみに、エリクソンは、
”ライフサイクルの「8つの発達段階」は
各段階がそれぞれに関連しあっている”
と言っています。
つまり、生まれてから
少しずつレベルアップする形で
段階1~8へと進んでいく
という意味も持ちます。
もちろんこの「8つの発達段階」も
一つの視点にしかすぎません。
ただ、このような視点を持つことで、
”社会的な人間として生きる上で
一つの指針にはなり得る”
とも思います。
そして、生きる世代が違う、
自分と他者の違いにも、
寛容になることができるのであろう、
と感じます。
■ということで、
人生の泳ぎ方の一つの参照枠として、
【「エリクソンの8つの発達段階」から、人生のテーマを考える】
の巻でした。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
本日も皆さまにとって、素晴らしい1日となりますように。
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<本日の名言>
私にとって最高の勝利は、
ありのままで生きられるようになったこと、
自分と他人の欠点を受け入れられるようになったことです。
オードリー・ヘップバーン(イギリスの女優/1929-1993)
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