今週の一冊『ダイアローグ 対話する組織』
(本日のお話 2515字/読了時間3分)
こんにちは。紀藤です。
昨日土曜日は大学院の授業。
並びに夜からは、大学院の仲間と
読書勉強会の実施でした。
*
さて、本日のお話です。
毎週日曜日は、お勧めの一冊をご紹介する
「今週の一冊」のコーナーです。
今週の一冊は
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『ダイアローグ 対話する組織』
中原 淳(著)、長岡 健 (著)
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です。
■皆様は普段、
職場で(あるいは家庭でも)
「対話」
されていらっしゃいますでしょうか?
なんとなくのおしゃべり、
「雑談」とも違う。
あるいは真剣な意思決定のための
「議論」とも違う。
また、一方的に物事を伝える
「伝達」とも違う。
真剣だけど、自由な雰囲気で語る
「対話」の場。
言葉やコミュニケーションを通じて
”新しい何かを作り上げていくプロセスこそが
「対話」(=ダイアローグ)である”
今回ご紹介する一冊の
中核のメッセージがこれです。
■なんとなく多くの方が感じている、
しかし明確にその大切さを
「なぜか」を説明できないのが、
”コミュニケーションの価値”
ではないかと思います。
コミュニケーションには
対話・会話・議論、
ただ一緒にいること…
様々な意味が含まれていますが、
その中でも
そのチームあれ、
夫婦関係であれ、友人関係であれ
意図を持って、
その場の空気や雰囲気を形作るものが
「対話」ではないかと。
■しかしながら、一方
そんな対話の大切さは
何となくわかっていても、
「なぜ重要なのか」説明する事が難しく、
つい後回しになってしまうがゆえ、
つい軽んじられて、結論を急ぐような
”議論”になってしまう。
例えば、
「今日の会議のお題は、◯◯。
そのゴールに向かって話し合えばいい」とか、
「そもそも問題を整理すると、AとBとC。
論理的に考えて、君がAをすべきだ」
と、収束に向けた意思決定、
あるいは合理的な解決だけに
向かっていく、みたいに。
■合理的に考えたら、
確かにそうなのかもしれない。
、、、しかし
何だか釈然としない。
明確に反論できないんだけれども、
なんだかモヤモヤする、
納得できない気がする、、、
こんな曖昧な状況と言うのは
現実の社会ではたくさん起こります。
■そして、そんな組織における
あるあるモヤモヤ問題を
解決するための一つの方策が
「対話をすること」
にではないか、、、
そのことをこの著書では
考えさせてくれます。
■この本の魅力は、
「対話」がもたらす効果について、
・理論的背景
・哲学的背景
・対話がもたらす効果効能
を明確に言葉にし、
整理をしてくれているところです。
やはり、大学の先生が書かれた本
「なんとなく」の主観で抱えてはいないと
言う事が特徴かと思います
■著者の主な構成は、以下の3つです。
まず1つ目、
”伝わらないのは「導管メタファー」のコミュニケーションが
人々の当たり前になっているから”。
「導管」と言うのは、その字のごとく
自分の頭と相手の頭に”管”を接続して、
その管を通じて相手に情報を流し込めば届く、
つまり、
「自分の頭の中にある思いを言葉にして
正しく伝えさえすれば」
↓
「相手にも正しく理解される」
という思い込みがある、
なる、コミュニケーションの問題点です。
上司が部下に
「俺はきちんと伝えたよな?
なんでやってないんだ」
みたいに言うシーンがあります。
伝えた=伝わる=行動する
という単純な図式で
人は動かないのは考えてみれば当然ですが、
現実の会社では「伝えれば伝わる」という
解釈をしていること、結構あるようです。
しかし、
「こういったつもり」
「いや、自分はこう解釈した」
こんな自分の価値観や思い込み、
すれ違いを解消し、相互理解を深めていくためには
この「導管型コミュニケーション」から脱却が必要、
と著者は述べます。
■そして著書のポイントの2つ目。
「対話が必要な哲学的背景を理解する」
ことです。
対話の重要性は
「社会構成主義」
という哲学的背景を
理解することが近道になります。
ちなみに、”社会構成主義”とは
「物事の意味とは客観的事実ではなく、
社会的な構成物(人々のコミュニケーションによって作られるもの)である」
という意味で、
ここでは捉えられています。
*
例えば、「会社の戦略を決める」という場面が
研修であったとします。
そして同じような状況を
A~D 4グループ、それぞれが話し合って決めるという設定。
オープンになっている情報が、
市場・資源・顧客・競合などなど、、、
全部同じだったとしても、
グループディスカッションして
そして決まった戦略は、
当然グループごとに違います。
なぜ違うかと言うと、
”なされた対話が違うから”
に他ありません。
同じ情報があっても、あるいは
人がその場の空気や、全体の合意や
意見の強い誰かの声や、様々なものを感じ取って
人は合意形成・意思決定をしていきます。
始まりの情報と
結論の意思決定の間にあるものは
間違いなく
「対話」
であり、
「人々は対話を通じて現実を作っていく」
(=社会構成主義)
と言えるわけです。
ゆえに、
対話の質=結果の質に影響する、
と言えるのでしょう。
■そして3つ目。
「組織における対話の意義/効果的なやり方」
についてです。
1つ目、2つ目の点を踏まえて
・協調的な問題解決、問題設定、
・知識の共有
・組織の変革
を対話を通じて
どのような考え方、
どんなプロセスで行っていくのかを
伝えています。
例えば、
・問題解決モードではなく
「問題発見をしていく」というスタンスの対話の大切さ
・組織の中である暗黙知・実践知を共有するための
経験やエピソードを語り合うことの重要性
・多様な視点をお互い受け入れるための
自由な空気を作るための対話、
等、企業の事例を伝えつつ、
対話の重要性を伝えています。
■書籍のボリュームとしては
200ページ強の短い本ですが、
「なぜ対話が必要なのか?」
をシンプルかつ、説得力を持って
整理してくれる1冊でございます。
もちろん対話が
すべての万能薬とは思いません。
しかし、改めて
仕事と対話は切っても切り離せない。
むしろ対話こそ、
成果の質を決めるのだろう…
そんなことを考えるきっかけになる
一冊かと思います。
コミュニケーションの大切さを
語り合ってみたいチームは
ぜひこの書籍を題材に
色々と語ってみるのも面白いかなと思います。
よろしければ是非。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
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<今週の一冊>
『ダイアローグ 対話する組織』
中原 淳(著)、長岡 健 (著)
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