ダニング・クルーガー効果 ~自分を高く評価していたら危険?!~
(本日のお話 3565字/読了時間4分)
■こんにちは。紀藤です。
さて、本日のお話です。
「ダニング・クルーガー効果」
という興味深い研究があります。
これは、
「無能な人ほど、自分の能力を
過大に見積もってしまう」
というお話。
今日はこの論文と、そこからの学びを
皆さまにご共有させていただければと思います。
それでは早速まいりましょう!
タイトルは、
【ダニング・クルーガー効果 ~自分を高く評価していたら危険?!~】
それでは、どうぞ。
■こんな名言があります。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「無知は、知識よりも自信を生むことが多い」
チャールズ・ダーヴィン(1871)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「知らないこと」が、
自信を生み出してしまうことがある。
今から100年以上も前に
ダーヴィンが言いましたが、
実際こういうこと、
まま起こっているようですね、、、(汗)
そして、このことを
研究によって実証したのが
『ダニング・クルーガー効果』
と言われています。
■「無知」は実に危険です。
この事を考える上で、
ある銀行強盗のエピソードがあります。
1995年、米国ピッツバーグにて
マッカーサー・ウィーラーなる人物が
白昼堂々、銀行強盗に入りました。
変装もせず、正面突破です。
、、、まあ、当然捕まりますよね(汗)
そして、警察に捉えられた後、
ウィーラーは監視ビデオに移っている
自分の姿を見せられ、こう呟きました。
「レモンジュースを飲んだのに・・・」
、、、と。
曰く、ウィーラーは
”レモンジュースで顔をこすると
ビデオテープのカメラから見えなくなる”
という説(というか噂話)を
信じていたらしいのです。
なので、
「白昼堂々、変装もせず正面突破(!?)」
で銀行強盗をした、
とのこと。
■そんな、ネタみたいな話やん、、、
と思いそうですが、
これ、実際にあった話。
これは、何が引き起こしたかというと
「自分が信じる理論は正しい」
と盲目的に信じてしまったこと、
広く言えば「無知」が引き起こした自体、
といえるでしょう。
もう少し細かく言えば、
「自分が信じていることを
客観的に見極める能力がなかった」
(=メタ認知力がない)
ことが招いた結果です。
さすがにレモンジュースは、、、
と思いそうですが、
もっと身近なことであれば
私達も同じようなことをしていそうです。
■たとえば、
数々の心理学の文献でも、
同じような事が言われています。
・社会的に無能な少年たちは、
自分が社会的な礼儀を欠いていることに
ほとんど気づいていない
(※学生時代の自分を振り返り、耳が痛いです汗)
・テストの成績が悪い学生は、
成績の良い学生に比べて、どの問題が正解するかを
正確に予測できない
(※はじめてのTOEICテストを
10年くらい前に受けたときに、
「こりゃ700点くらいとれたな」と思ったら
実際は400点だったことを思い出しました(汗)
・事故に遭ったドライバーは
熟練した経験豊富なドライバーに比べて、
反応テストでの自分のパフォーマンスを正確に予測できない
(※無謀な運転をする人は、
自分がそうであることに気が付かないのですね)
、、、というように。
■つまり、
『能力がない人は、
自分の能力を正しく見積もれない』
のです。
このことについて、
ミシガン大学のダニング・クルーガーは
「実際にどうなんだ?」
ということで、以下
実験をしてみました。
それが、こんな3つの実験でした。
1)ユーモア・・・
「何が面白いと感じるのか」
プロのパネリストの結果と本人の予測を
照らし合わせてスコアをはかる
2)論理的推論・・・
法科大学入学試験から引用して
20項目の論理推論テストを行う
3)文法・・・
「文法的に正しい英語を識別する」という
文法テスト20問を用意した
これらのテストを、
大学の学部生50~100人ほどを対象に行い、
「自分の成績は、
全体のどのあたりに位置する思うか?」
を自己評価させたのでした。
■すると、以下のような
結果がわかりました。
まず、1つ目が、
参加者の多くは、
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
『自分の能力を
仲間と比べて過大評価しがち』
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
であるということ。
そして、2つ目は、
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
『他の人と比べて成績が悪かった人は
自分自身を過大評価していることに気づいていない』
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ことでした。
■特に下位4分の1の成績の人は、
”自分をめちゃくちゃ
過大評価している”
のでした。
例えば、文法のテスト。
下位4分の1の人は、
以下のような結果になりました。
*
◯{実際のテストの結果、自己の能力}
=10パーセンタイル
(実際は、自分より下に10%しかいない)
◯{自己評価でのテストの結果、自己の能力}
=62パーセンタイル
(自己評価では、自分より下に60%以上いると思っている)
*
そして、これらの結果は、
1)ユーモア、
2)論理的推論、
3)文法
いずれの結果でも
同様の結果になったのでした。
つまり、
【能力が低い人は、
自分の能力の不足に気づかない】
(=メタ認知力が不足している)
ことが、研究結果として
わかったのでした。
■では、「能力が低い人」には
どのように、自分の能力の低さに
気づかせることができるのか?
、、、ここが気になるところです。
なぜなら、
「能力がない人」に対して
”能力がないことを自覚させる”には、
”能力をつけさせる”しかない、
わけです。
しかし、
「メタ認知力を高めて、
自分を正しく見積もれるようにする」
ことが、
「無能から有能への第一歩」
になるわけですが、
そもそもそれが出来たら
「能力がある状態」なわけですから、
まさにパラドクスです。
■いずれにせよ、
ダニング・クルーガーは、
このパラドクスにチャレンジしました。
それは、
・「自分が能力がない」ことに気が付くための、
・「必要なメタ認知スキルを身につけるトレーニング」を行い、
・参加者の変化を調べる
という実験を行ったのです。
具体的には、
”論理的推論について
信憑性を検証するためのトレーニング”
を被験者には実施をする。
そして、対照群には、
”関係のないタスク”を
同じ時間やらせました。
■結果としては、
相変わらず、
「下位4分の1の参加者は、
自分のことを過大評価していた」
のですが、
とはいいつつも、
「全体的にはかなり校正されていた」
ことがわかりました。
つまり、
【自分の能力がないことに気付くための
「メタ認知力を高めるトレーニング」は、
一定の効果がある】
と言えるのでしょう。
■と、ここまでが
論文内容のご紹介でございました。
ここからは感想ですが、
よく研修でも、
「問題児と言われている人ほど、
その事に気づかない」
と言われます。
しかし、まず能力を高めようとするなら、
”自分の能力がどれくらいかを
正しく認識する”
ことが極めて重要なことに
なるのでしょう。
(特に下位4分の1などの人に対しては、、、)
■すると、こと「能力を高める」という観点で
考えてみると
「自分で自分をどう思うか」
(内面的自己認識)
そして
「他人が自分をどう思っているか」
(外面的自己認識)
を一致させていくプロセスが
「メタ認知」を高める重要な要素になりそうです。
とすると、
そのためのアクションとして
「定期的に、自分がどう見えているか
他者からのフィードバックをもらう」
ことは、自らを磨く、
重要な活動だと言えそうです。
■そして論文を読みながら、
TOEICの点数を過大評価していたり、
中学生のとき、ハンドボール部で
メンバー14人中、背番号が14番
(つまり一番ヘタ)だったのに、
「自分は出来る!」と思い込んでいたことなど、
その他、色んな出来事を思い出しました(汗)
まさに、能力が低い人は
自分のことを理解できていない、
典型であったと思います。
今は多少なりとも自己認識が
マシになっていることを願いつつ。
※本日のお話は、以下論文よりご紹介いたしました。
『Unskilled and Unaware of It: How Difficulties in Recognizing One's Own Incompetence Lead to Inflated Self-Assessments』
(無能であることに気づかない:自分の無能さを認識することの難しさが、自己評価の肥大化につながる)
Journal of Personality and Social Psychology誌より(2000年1月)
https://www.researchgate.net/publication/12688660_Unskilled_and_Unaware_of_It_How_Difficulties_in_Recognizing_One's_Own_Incompetence_Lead_to_Inflated_Self-Assessments
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
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<本日の名言>
あなたを支配するのは、出来事ではない。
その出来事に対するあなたの見方が支配するのだ。
マルクス・アウレリウス(古代ローマの皇帝/121-180)
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