フリーライダーの集団心理 ~見て見ぬふりはなぜ起こるのか~
(本日のお話 2508字/読了時間3分)
■こんにちは。紀藤です。
昨日はコーチング研修。
その他3件のアポイント。
また、大学院の打ち合わせでした。
*
さて、本日のお話です。
人が集団になることにより、
様々な作用が起こることを
「グループダイナミクス」
といいます。
今日はこのお話に関して、
興味深い実験を紹介しつつ
学びと気付きを、皆さまに
ご共有させていただければと思います。
それでは早速まいりましょう!
タイトルは
【フリーライダーの集団心理 ~”見て見ぬふり”はなぜ起こるのか~】
それでは、どうぞ。
■突然ですが皆さまは、
「電車内で体調が悪くなった人」
に遭遇をしたこと、ありますでしょうか?
そして、そんなとき、
(自分を含めて)周りの人は
どのような対応をしがちなのでしょうか。
■、、、と考えてみると、
往々にして、
「体調が悪くなったのを目撃したら、
周りの人が我先に助けに行く」
というより、
「皆が様子を見つつ、
そのうちの誰かが声を上げるのを待つ」
というパターンのほうが、
多いようです。
”困っている人がいても、
他にたくさんの人がいると
誰かが声をあげるんじゃないか”
と思ってしまい、
言い換えると、
「見て見ぬふりをしてしまう」
という現象は、少なくないようです。
かくいう私も、
電車内で喧嘩をしている
サラリーマンに遭遇したことがありましたが
見て見ぬふりをしてしまった口であります(汗)
■おそらく、感覚的に
わかるであろう、このお話。
実際にどうなのか?
と、ある実験が行われました。
Darley&Latnae(1968)による、
「電話によるコミュニケーション」の実験です。
*
どのような実験かと言うと、
被験者を複数名集めて
このように実験内容が伝えられました。
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<被験者に伝えた実験内容(パターン1)>
1,この実験は、電話によるコミュニケーション実験です。
2,各電話ボックスの電話で、お互いに情報交換をし
グループで課題を解決して下さい。
3,参加人数は、「2人」です。
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■ちなみに、被験者は複数います。
別のグループの被験者には
以下のよううに伝えられました。
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<被験者に伝えた実験内容(パターン2)>
1,この実験は、電話によるコミュニケーション実験です。
2,各電話ボックスの電話で、お互いに情報交換をし
グループで課題を解決して下さい。
3,参加人数は、「6人」です。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
■、、、さて、どこが違うか
お気づきになられましたでしょうか?
そう、
「参加人数」
が違うのです。
(2人か、6人か)
そして人数が違う条件下で、
ある”アクシデント”を起こします。
参加者の一人が急に体調不良になり、
「ウッ、、、胸が苦しい!
助けてくれ」
と言うようにシナリオが組まれています。
電話でのコミュニケーション中です。
ゆえに、参加者しかいません。
誰かが、医者などに
助けを求める必要があります。
参加者が2人ならば、
自分と相手のみ。
つまり、声をあげるのは、
自分しかいません。
一方、参加者が6人であれば、
自分以外にも参加者がいます。
他の人が、声をあげてくれるだろう、、、
という選択肢が生まれ得ます。
■結果、どうなったのでしょうか?
この実験を通じて、
以下のことがわかりました。
一つは
『人数による「援助率」の違い』
でした。
2人の場合、援助率はほぼ100%ですが、
3人の場合、約80%になり、
6人の場合、約60%になるのでした。
もう一つは、
『人数による「援助するまでの時間」の違い』
でした。
2人→6人につれて、
援助するまでにかかる時間が
長くなっていきました。
すなわち、
『人数が増えるほど、
援助率が下がり、
援助するまでにかかる時間も伸びる』
ことがわかりました。
、、、という実験。
■うーん、実に興味深いです。
参加者2人だったら
皆助けていたはずでしょう。
ただ、6人になると、
「他の人が助けてくれるだろう」
と皆に起こりがちというのは、
まさに集団心理。
その深い部分には、
「自分だけが声をあげて
面倒に巻き込まれるのは嫌だ」
という思いもあるのかもしれません。
そして、こういう心理を、
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『サッカー効果』
他のメンバーが手を抜くのを見た人が、
自分だけ損をすることを避けるために
自分も手を抜こうとすること
Jackson&Harkins(1985);Kerr(1983)
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といいます。
■そしてこの話は、
決して他人事にできません。
というのも、このようなメカニズムは
「大人数集まった会議」
でも起こりうるし、
「人混みで起こった
(自分が巻き込まれるかもしれない)トラブル」
など、日々の生活で
頻繁に起こりうる話だからです。
■人が多くなると集団心理が働き、
いわゆる、
「フリーライダー」
が生まれやすくなる。。。
このことを認識しておくのは、
”見て見ぬふりの集団心理”を
生み出さないためにも、大切なことでしょう。
■ちなみに、上記の
「フリーライダー」を発生しづらくするには、
いくつかの施策が有効です。
それは、
・役割分担を明確にする
・責任を明確にする
・情報共有をする
などの調整です。
例えば、
「あなたが今日の会議の主担当です」
(=役割分担を明確にする)
「参加した人は、自分の意見を必ず言うこと」
(=責任を明確にする)
「今回のゴールと、皆に期待していることは◯◯です」
(=情報共有をする)
などを事前に行えば、
人数が増えても、
集団心理のマイナス効果を
低減できる可能性は高まるでしょう。
■集団心理の理屈を知れば、
”傾向と対策”
も行うことが
できるようになります。
そうすれば、もしも自分が
人混みの中で体調が悪くなった際でも、
「そこのアナタ!助けて下さい!」
と、役割と責任を
特定の人に与えるように、
”誰かを名指しで援助依頼をする”
ことで、援助してもらえる率も
高まっていくのでしょう。
会議の参加も、意図的に
高めていくこともできそうです。
、、、ということで、
・人が集まると自分だけが損をしたくないという
”サッカー効果”が発動する。
・それは誰が悪い、ではなく、
グループダイナミクスとして起こりがち。
・ゆえに、そういうものと理解した上で、
事前に調整を行い、見て見ぬふりを
防ぐ施策を行うことが重要
というお話でした。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
本日も皆さまにとって、素晴らしい1日となりますように。
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<本日の名言>
黙って服従することは、しばしば安易な道ではあるが、
決して道徳的な道ではないのだ。それは臆病者の道なのだ。
ヴィクトル・ユーゴー(フランスの詩人/1802-1885)
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