若手育成の原理原則 ~社会化とOJT施策~
(本日のお話 2413字/読了時間3分)
■こんにちは。紀藤です。
昨日は某企業の
ダイバーシティ推進のリーダーの皆さまへの
ストレングス・ファインダー研修の実施。
自分の「強み」という目線で関わると、
皆さん生き生きしてこられるのが
実に印象的な時間でした。
ご参加頂きました皆さま、
ありがとうございました!
*
さて、本日のお話です。
現在、人材開発、組織開発について
夏期集中講座ということで、
大学院にてガッツリ学んでおります。
今日はその学びの中から、
「若手育成」
について学びと気づきを
皆さまにご共有させていただければと思います。
それではまいりましょう。
タイトルは、
【若手育成の原理原則 ~社会化とOJT施策~】
それでは、どうぞ。
■「新人は、職場にぶち込んでおけば
勝手に育つ」。
、、、なんていったら、
皆さま、どう感じるでしょうか。
ただ、ちょっと乱暴なようですが、
元々、村社会的な共同体から
始まった日本企業においては、
声高に言わずとも、
このような考えがどうやら
暗黙裡にあったようにも思われるのです。
いわゆる、
・年功序列
・終身雇用
・職場における長時間労働
等々によって、
古き良き日本企業(なのかわかりませんが)では
”職場で勝手に育つ”という仕組みが
意図せず生まれていた、
のかもしれません。
■しかしながら、
1990年代になり、バブルが崩壊。
終身雇用、
年功序列が廃止され、
リストラが敢行されました。
そして極めつけは
「成果主義」の導入です。
すると、様々な影響が
職場に出始めました。
例えば、
1,仕事ができる人に集中する
2,情報共有をしなくなる
(業務を囲い込む、仕事の私事化)
3,職場の助け合いがなくなる
(組織市民行動の消失)
などなど。
■そして、それは
職場内の「学び」にも
影響がでてきます。
例えば、
”高度情報化(IT化)”
先輩の仕事が見えなくなる。
加えて、直近では
コロナ禍のおける
”リモートワーク化”によって
更に加速しているようにも見えます。
その昔、
「隣で電話をしている先輩から
営業トークを学んだ」
とか
「先輩の他部署との交渉を
隣の席で見ていて学んだ」
そんな、
”職場における行間の学びの機会”
がどんどん消失している、
とも言えそうです。
(きっと、ある年代以上の方は、
わかるはず、、、)
■そんなこんなの影響があり
「新人を職場にぶちこんでおけば、勝手に育つ」。
ということは、
まずもって
言えなくなったのが現在でありますし、
そういった意味では
「新人を育成する要素が何なのか、
明確に語ることが出来ること」
は、人材育成に関わる人々の
重要な知識と言えそうです。
■では、一体
”新人を育成する要素”、
もうちょっと広げて言えば
”「若手育成の原理原則」とは一体なんなのか?
これを、整理してみたい、
と思うのです。
■ずばりキーワードは
【組織社会化】
です。
この言葉の定義は、
”個人が、組織の役割を担うために
必要な知識(信念)・技術を獲得し、
組織の構成員になること"
(Vanmannen&Schein 1979)
とのこと。
一言で言えば、
”組織に馴染む”
ということです。
「馴染む」と言っても、
・職場の人間関係
・仕事に必要なスキル
・組織の文化に慣れる
等色々あります。
■ゆえに、
【組織社会化】のためには、
3つポイントがある、
とされています。
では、1つずつ見てみます。
まず、
<その1)予期的社会化>
です。これは、
”組織参入前(採用前)に、
組織の目標、仕事の実態を
ポジティブな側面のみならず、
ネガティブな側面を含めて
体系的に事前に理解させること。”
です。
※「リアリスティック・ジョブ・プレビュー」といいます。
*
会社あるあるですが、
採用前は、
「残業は、ほとんどないです!
アットホームな空気で皆あたたかいです!」
「仕事マジ楽しいですよ!」
と、イイコトをたくさんいう先輩が
強く口説いて入社を決めたものの
いざ入社すると、全く違う。
「残業バリバリで、
皆、殺伐としてそれぞれの目標を
個人商店のようにやりまくっている」
「目が死んだ先輩が結構いる」
みたいな話。
そして、
「こんなはずじゃなかった」と
失望をする。(そして退職等々)
採用において
”口説き”は必要だし大事ですが、
どこかのタイミングで
現実も伝えるバランスを模索しないと、
結局、企業も応募者も
両者にとって望ましくない、
となります。
これが、
<予期的社会化>
です。
■そして2つ目。
<その2)訓練・教育>
です。
これは、
『学習転移モデル(Lave.2000)』という
学習モデルが有名です。
平たく言えば
”研修で学んだことを、
現場に持ち帰り実践し、
成果を出せるようにすること”
です。
※ちょっと長くなるので、
詳しくはこちら↓↓
◯学習心理学から「王道の学び方」を学ぶ ー学習転移モデルと経験学習モデルー(前編)
https://www.courage-sapuri.jp/backnumber/9742/
職場において、
どんな知識やスキルが必要かわからず、
手探りでやっていたとしたら、
そもそも成果を出すことは難しいでしょう。
ゆえに、
成果を出すために必要なスキルを
組織として体系的にまとめて、
OFFJTで効果的・効率的に伝える。
その知識を持って帰って
実務に活かす仕組みを設けることは大事です。
もし学ぶべきものをまとめず、
本人任せにしていたら、
「荒地に種をまいて、
あとは生えてきたらラッキー」
みたいな育て方、
と言わざるを得ないかと。
望ましくないですね。
<訓練・教育>
も大事です。
■そして最後、3つ目です。
若手を1人前に育てる上、
最も重要な施策です。
それが、
<その3)社会化エージェント>
です。
社会化エージェントとは、
”学習を促す「他者の役割」”
のことです。
これに関する理論で
『最近接発達理論(Zone of Proximal development)』
という理論があります。
”発達とは、現有能力と
他者の助けを借りてできることの
心理的距離である”
とロシアの心理学者ヴィゴツキーは言いました。
どういうことかというと、
”自分一人ではできることは限りがあるが
他者の力を借りれば出来ることが増える”
という話。
「幼児」であれば、
1人で料理ができなくても、
お母さんのサポートがあれば
目玉焼きが作れたりします。
「営業会社の新入社員」も同じで、
1人でアポイントに行けなくても、
先輩が一緒に同行しフォローしてくれれば
営業プロセスを完遂できるのです。
つまり、
人は誰かの支援を受けて、
能力向上(発達)を果たす。
たった一人で
何かを身につけるのではないということでしょう。
■そして、
若手が育つ職場では、
「直接の上司」だけではなく、
「隣の部署の先輩」とか
「同期の仲間」など、
多様な
「学習を支援する
”社会化エージェント”」
という存在がいます。
社会化エージェントが行う行為は、
1,業務支援
2,内省支援
3,精神支援
の3つがあります。
※これも長くなるので、
詳しくはこちらから、、、↓↓
◯素朴な疑問。上司が何をすれば、「部下の能力」が伸びるのだろう?ー「職場学習」の研究から紐解く
https://www.courage-sapuri.jp/backnumber/9981/
学習を支援する
<社会化エージェント>
が一番大事、ということです。
■ということで、まとめです。
「若手を職場にぶちこめば(!)、
自然と育つわけではない」
ゆえに、
若手が計画的に育つ仕組みを設けることが
とても重要です。
そのためのキーワードが
【組織社会化】
であり、それには
1)予期的社会化
2)訓練・教育
3)社会化エージェント
の3つがポイントになります。
これが、
”若手育成の原理原則”
(といってしまうと言いすぎかもですが)
大事なポイントですよ、
というお話でした。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
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<本日の名言>
人間は、他人の経験を利用するという
特殊能力を持った動物である。
R・G・コリングウッド(イギリスの歴史学者/1889-1943)
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