今週の一冊『会社の中はジレンマだらけ~現場マネジャー「決断」のトレーニング~』
(本日のお話 2658字/読了時間3分半)
■こんにちは。紀藤です。
昨日は立教大学大学院の説明会(運営側)でした。
「在校生の声」として仲間とともに
登壇をさせていただきましたが、
改めてこの説明会のプロジェクトも楽しい時間でした。
*
さて、本日のお話です。
毎週日曜日は、お勧めの一冊をご紹介する
「今週の一冊」のコーナー。
今週の一冊は、
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『会社の中はジレンマだらけ~現場マネジャー「決断」のトレーニング~』
本間 浩輔 (著), 中原 淳 (著) 、光文社新書
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です。
■組織には
実に多くの「ジレンマ」がありますね。
「ジレンマ」とは、
”どちらを選んでも
メリットもデメリットもあるような二つの選択を前にして、
それでもどちらにするか決めなくてはならない状況”
と今回の著書では
定義されています。
■例えば、
若手社員からみれば、
「絶対にAするべきです!」
とピュアな視点で断言できることでも
視座が高い部長からすると、
見える世界が違っています。
部長からしても
その「A」という意見は
既に検討はしてきた。
しかし、それを選べない理由、
内部事情があり
かといって政治的なその理由を
若手社員に伝えるわけにもいかない、、、
みたいな状況です。
■人が集まり、
また規模が大きくなると、まさに
”会社の中はジレンマだらけ”
のようです。
■そんなジレンマが満載の組織。
今回の書籍では、そんな
「組織のあるあるジレンマ」
について、
Yahoo!上級執行役員として
人事改革に取り組む人事の本間浩輔氏と、
企業における人々の学習・成長・コミュニケーションを研究する
中原淳教授の対談を収録したものです。
(※2016年出版時の役職です)
この書籍の魅力は
上席執行役員として
「現場」のプロフェッショナルと
人と組織の研究者としての
「理論」的なプロフェッショナルが、
”どんな視座で物事を見ているか”
を教えてくれていることが、
何よりも学びになると感じます。
■では
組織の中で起こるジレンマとして
具体的にどのような話があるのか?
、、、例えば、
こんな話題が挙げられています。
<”現場仕事”が多いマネジャー問題>。
、、、タイトルを聞くだけで
「あるある!」
と思われた方、
いらっしゃるのではないでしょうか?
■マネジャーには
多くのジレンマがある。
まさに
「manage」=なんとかやりくりする
という翻訳になるように、
マネジャーは上からと下から、
ジレンマの渦の真ん中にいます。
■例えば
マネジャーは、仕事を任せていかないと、
自分の手が空かず、他の業務ができません。
かといって、単に「仕事を振る」だけだと、
上からあれこれ言われるし、
部下からは「あの人はいつも丸投げする」と
言われてしまう。
今では「上司の360度評価」もあったりするから、
評価の視点でも、部下にも気を遣う。
”任せ方のジレンマ”です。
■また多くの組織においては
自分のチームのミッションに対応できる人的リソースが
十分に与えられていない場合がほとんどです。
マネジャーは自分のミッション(数字)も
達成しなければいけない。
そんな中、
部下の様子に目配りすることも、
なかなかできない。。。
”マネージとプレイングの
バランスのジレンマ”です。
■さらに言えば、マネジャーは、
チームの「成果を出す」ことが目的とされつつ、
一方「育成する」ことも役割ともいわれる。
しかし、実際は評価されるのは「成果のみ」
そもそも”育成した”というのは
目に見えず、評価もされづらい。
そんな時に重要な仕事があった。
「長期的な育成」を考えて若手に任せるか、あるいは
「短期の成果」を考えてベテラン社員に任せるか
という選択、どちらを選ぶか。
”育成と成果のジレンマ”です。
、、、と一つの話題を出しても、
まさに「ジレンマだらけ」です。
■その他の「ジレンマ」の話題も、
他にもたくさんです。
例えば、
<なぜ”産休社員”への人員補充がないのか?>
ー部下のワークライフバランスを考えるー
というテーマ。
あるあるな状況が、
・産休社員が出ても、
チーム全体の目標は変わらない
・状況はわかるけれど、
その方の仕事を他のメンバーが代わりにやることになり
次第に不公平感が漂ってくる
みたいなシチュエーション。
そこで、産休社員や他のメンバーに
どのようなメッセージを届けるべきか、
マネジャーとしてどうすべきか、
なる問い。。。
悩ましいです。
その他にも、
<なぜ「働かないおじさん」の給料が高いのか>
<なぜ新規事業のハシゴはすぐ外されるのか>
<なぜ転職すると給料が下がるのか>
などのテーマが書かれており、
その中で”モヤモヤとした葛藤”の中で、
マネジャーがどう決断をするか、
、、、について、
本間氏と中原氏の切れ味鋭い意見が
交わされ、実に学びになります。
■個人的に残った言葉が、
「マネジャーに覚悟があるか」
なる問いでした。
マネジャーは
様々なジレンマを抱える”定め”にある。
ゆえにその中で、出来る範囲で
チームを一生懸命に動かして、
それでも成果が出なければ、
自分で責任を取る、くらいの気持ちを持つこと。
大げさに聞こえるかもしれないけれども、
そういう覚悟がマネジャーに必要とされているし、
評価権が与えられているからこそ、
マネジャーは高い倫理観を持たなければならない、
というメッセージでした。
「ジレンマの中で決断をする」
マネジャーは大変な役割で、
実にストレスがかかることで、
ゆえに”胆力”も必要なことなのでしょう。
だからこそ、
精神論のようですが
”マネジャー自身の覚悟が必要ではないか”
いうのは、納得できる話だな、
と思ったのでした。
■また中原教授いわく
”人にまつわる課題には
そんなにバリエーションがあるわけではないし、
部下にどう仕事を任せるかというやりくりや、
育児や介護に悩む部下を抱えている職場のやりくりは、
どこの会社でも必要とされている。
だから、マネジャーがこの課題にちゃんと取り組んで
結果を振り返りながらマネジメント能力をつけていけば、
それは他社にいっても使える”
とのことでした。
この書籍では、
人にまつわるジレンマの
具体的な事例が書かれており、
・どんなジレンマの
バリエーションがあるのか
が書かれています。
ゆえに、
今まさにジレンマに迷うマネジャーにも
人にまつわる課題のレパートリーを増やし、
その中で自分の考えを整理する上でも
役に立つ一冊です。
また、リーダー、マネジャーの立場でない方にも
より高い視座を身につける上で役に立つ書籍かと思います。
■組織のジレンマの中で
ジレンマを抱えつつ
前を向かれている、向こうとする方に
ぜひ読んでいただきたい一冊だな、
と思った次第です。
いやはや、考えさせられました。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
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<今週の一冊>
『会社の中はジレンマだらけ~現場マネジャー「決断」のトレーニング~』
本間 浩輔 (著), 中原 淳 (著) 、光文社新書
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