ストレングス・コーチングの効果を紐解く(その1)~オーストラリアの研究のご紹介~
(本日のお話 2356字/読了時間3分)
■こんにちは。紀藤です。
さて、本日より新シリーズ
『「強み」と「コーチング」』
をテーマにお届けしたいと思います。
日本でも「1on1」という言葉で
注目されているように、
コーチングの効果は、市民権を獲得しつつあるようにも感じます。
また「強みにフォーカスしたマネジメント」という視点についても、
同様に、少しずつ認知されてきているようにも思います。
今日はその中でも、
「強みにフォーカスをしたコーチングが
リーダーシップ行動にどのような影響を与えるのか」
について研究をした論文がありましたので
そちらのご紹介をさせていただければと思います。
タイトルは
【ストレングス・コーチングの効果を紐解く(その1)~オーストラリアの研究のご紹介~】
それでは、どうぞ。
■「コーチング」という言葉も、
おそらくメルマガをお読み頂いている方であれば
なんとなくご認識頂いているかもしれません。
実際に、ビジネスシーンでの
コーチングの活用は益々活発になっていますし、
その影響は、私も肌身で感じております。
そして、その中でも
『「ストレングス・ベースのコーチング」が
(強みにフォーカスをしたコーチング)
エグゼクティブのリーダーシップ行動に
どのような影響を与えたのか』
に着目した論文があります。
※オーストラリアのダグ・マッキー博士(CSAコンサルティング)による
『THE EFFECTIVENESS OF STRENGTHBASED EXECUTIVE COACHING IN ENHANCING FULL RANGE LEADERSHIP DEVELOPMENT_A CONTROLLED STUDY』(2014)
(ストレングス・ベースのエグゼクティブ・コーチングが、フルレンジリーダーシップ開発を強化する上での影響:対照研究)
という論文です。
■この研究は以下のような目的・方法で、
実施をされました。
以下、まとめます。
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<調査目的>
・ストレングス・ベースのコーチングが
・360度フィードバックで測定された
「変革型/取引型リーダーシップ行動」に対して与える影響を
・被験者間の非等価対照群デザイン(介入群と対照群をわけて実施)
を用いて調査する
<対象者>
・大規模な非営利組織の役員、及び上級管理職37名
<方法と手順>
1、コーチングを受けるグループと待機するグループを
無作為に振り分けた
2、コーチングを受けるグループでは、
”リーダーシップと強みに関するフィードバック
目標設定、強みの開発を含む6セッションのリーダーシップコーチング”
が行われた
3、コーチングの実施方法は、介入を行う11名のエグゼクティブコーチ間で、
方法論的な一貫性を確保するため、マニュアル化した
4,3ヶ月にわたる6回のコーチングの後、
コーチングを受けるグループと、待機グループは
役割を交代した
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
■そして、「結果」としては、
・コーチングを受けた参加者は、
変革型リーダーシップ行動が増加した
・この違いは組織のあらゆるレベル(上司・同僚・部下等)で認識されたが、
参加者本人は認識していなかった
ことがわかりました。
そしてこの結果を読み解いた示唆として
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
『ストレングス・ベースのコーチングの手順は、
変革型リーダーの育成に有効である』
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ことが示唆されたという論文の内容です。
■ちなみに、この研究の意義は、
(アカデミックな分野で)
「依然として議論がある
効果的なコーチングとは何か?」
について考察をした点が
挙げられるようです。
、、、というのも、
コーチングはリーダーを育成するための
有効な方法論の一つであるものの
以下の課題がある、とされています。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
<コーチング研究の課題>
1,確立された普遍的なコーチングの方法論がないため、
コーチングの提供に一貫性をもたせることが困難
2,潜在的な成果の範囲が広く、研究間での比較がほとんど不可能
(ゆえに、自己報告された成果に焦点が当てられる)
3,コーチングを受ける人(クライアント)によって、
能力、モチベーションなどが違っているため、
コーチングの効果を示す変数を特定することが難しい
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
※1)について言えば、
確かに、傾聴・承認・質問・フィードバック等
基本的な”型”はあっても、流派によって異なる印象があります。
仮にコーチングの流れは大雑把に同じだとしても、
詳細の部分はコーチの経験値やクライアントとの関係性に
委ねられている要因も多分にあるため、
研究としては観察をすることが難しいのでしょうね。。。
また、2)についても、組織のどの側面に、
どの様な影響があったのかを客観的に見極めるのは、
なかなか難しいようです、
そして、3)に対しても、
人によって”目標設定”に課題があるのか
”自己認識”に課題があるのか、”現状分析”に課題があるのか、
人によってコアな課題が形を変えて存在しているので、
「これがコーチングにおいてフォーカスする変数だ!」
と確立することが難しいのだろう、と思われます。
■その中で、今回のストレングス・ベースのコーチングは、
・成果の中核となる基準=「リーダーシップの開発」
・方法論=「ストレングス・ベースのプロトコル(手順)」
として明確にすることで、
”ストレングス・ベースのコーチングが
リーダーシップ開発に対して
どの様な影響を与えるのかを考察する”
ことを調査した内容になります。
読み解いてみたところ、
実に興味深い内容でございましたので、
(私がコーチングの資格、
ストレングス・ファインダーのコーチの資格等で
生業にしていることもありますが)
明日からもこの論文の内容を
詳細にご紹介して参りたいと思います。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
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<本日の名言>
あらゆる者が強みによって報酬を手にする。
弱みによって、人は何かを成し遂げることはできない。
ピーター・ドラッカー
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