「コーチング」を研究視点で紐解くと、こう見える ~コーチング研究は、実は難しい?!~
(本日のお話 3654字/読了時間4分)
■おはようございます。紀藤です。
昨日は3件のアポイント。
また夕方からは10キロのランニング。
週40~50キロ走るペースで
5月の100キロマラソンに向けて準備をしています。
最近はプロテインも飲み始めていますが、
体組成計のスコアが変わり始めていて
実に興味深い。
ランニングは「自己効力感」を高めるのに
非常に役に立つ(=変われるという実感が持てる)と感じます。
とってもオススメ。
*
さて、本日のお話です。
先日よりお届けしております、
「組織におけるストレングス・ベースの
リーダーシップ・コーチング」
『Strength-Based Leadership Coaching in Organizations
An Evidence-Based Guide to Positive Leadership Development』
について、本日もお届けしたいと思います。
本日は
「第5章 ポジティブなアプローチの
リーダーシップ開発への有効性の証拠」
の”中編”です。
”ポジティブなアプローチ”の代表は
「コーチング」が代表的な手法とされています。
では、そのコーチングは
本当に有効なのか?
何を持ってそう言えるのか?
(あるいは言えないのか?)
この点について、紐解いていきたいと思います。
それでは早速まいりましょう!
タイトルは
【「コーチング」を研究視点で紐解くと、こう見える ~コーチング研究は、実は難しい?!~】
それでは、どうぞ。
■「コーチング」、昨今
大変ポピュラーになっていますね。
私がこのような仕事(人材開発とか組織開発)を
しているからかもしれませんが、
周りに”コーチ”と名のつく方が
大変たくさんいます。
実際、「国際コーチング連盟」と呼ばれる
民間資格で一番大きいとされるところの有資格者も、
近年、急速に増えている様子。
(ちなみに私の国際コーチング連盟の
有資格者でございます
、、、と一応アピール)
■さて、そんなコーチング、
ビジネスシーンでも活用されてきています。
そして、それに伴って
アカデミックな分野でも
”コーチング研究”
が進んでおり、
その内容がなかなか興味深いです。
コーチングもその組織に応じて
色んな流派があるもの。
それらのものを概観してみて
・どのようなことがわかっているのか?
・あるいはわかっていないのか?
をマクロ視点で見てみると、
視点が広がる感覚も持てるように感じます。
■、、、ということで、
「コーチングの有効性」
「ポジティブなアプローチの有効性」
について見ていきたいと思います。
※ちなみに、補足ですが
「組織でのリーダーシップ開発」という文脈での
コーチング研究となっていますのでご留意ください。
(ここから)
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【コーチング研究の今はどうなっている?】
<効果的なコーチング研究は難しい・・・。その理由とは?>
1)”コーチングの成果”がどのようなものか基準ができていない
(幸福度・目標設定・自信・リーダーシップなど、異なる結果基準が用いられている)
2)コーチングの方法が研究によって違う
(コーチングプロセスで、コーチが何をしているかが見えない)
3)コーチングの研究のほとんどが自己報告データに依存している
(ので信頼性に懸念あり。色んな人に尋ねるのは手間がかかる)
4)コーチング研究に同意してくれる組織はまれ
(研究に協力したからといって、投資対効果は得られるの?という疑問)
【「ポジティブなアプローチ」って有効性なの?】
<「一般的なコーチング研究」からわかったこと>
◯コーチングの有効性に関する研究はエビデンスレベルにばらつきがある
・全体の研究は156件(2010時点)であった。
その内101件がケーススタディ、39件は被験者内デザイン、16件のみが被験者間デザインだった。
(つまり、成果の測り方はほぼ「その人個人の事前事後の感想」だったということ)
◯効果的な(エグゼクティブ)コーチングには「共通の原則」がある
1,コーチとクライアント(コーチを受ける人)の協力的な連携
2,クライアントの自己認識を高めること
3,明確に定義された目標
4,達成するための具体的な行動 など
<「ポジティブ心理学の研究」からわかったこと>
◯ポジティブ心理学ってなに?
・「ポジティブ心理学」とは、長所を伸ばし、自信とポジティブな感情を高める考え方。
・コーチングの文脈で適用されており、有効であることを示す証拠も増えている。
◯「ポジティブ心理学的アプローチ」のメリット
1,ポジティブな気分や感情の増加は、“強みに基づいたアプローチ”によって増える
2、自分の強みを定期的に活用している人は、仕事への関与が高まる。
3,マネジャーが部下の強みにフォーカスすると、パフォーマンスが大幅に向上した
(逆に、弱みにフォーカスするとパフォーマンスが低下する(Corporate Leadership Council,2002)
4,強みに基づいたアプローチが、従業員のパフォーマンス、エンゲージメント、
定着率を高め、個人の主観的な幸福感にも影響を与える
・これらはすべてストレングス・ベースのコーチングと相関関係がある。
<「ポジティブなリーダーシップ開発」についてわかったこと>
◯「結構わかってないことが多い」問題。
・リーダーシップ開発には、さまざまな方法やプロセスがあり、開発することができる。
・がしかし、わかっていないことも多い。
リーダーシップ開発の83の公式トレーニングを調査したところ、リーダーシップの効果量は全体的に小さかった。
すなわち、「どのリーダーシップ開発の方法論が効くのか?」はまだわかっていない、ということ。
・一方、コーチングのような開発の介入によってリーダーシップが強化される証拠も見つかっている。
(結論、今後のさらなる研究が必要である、というお話)
<「リーダーシップ開発コーチング」についてわかったこと>
◯コーチングとリーダーシップ開発の歴史
・コーチングは、これまでスキル構築、自己認識向上、
モチベーション強化などの方法で、リーダーシップ開発に活用されてきている。
◯コーチングが、「ポジティブさを活用した有能なリーダー育成」に効果的な理由
1)コーチングは、参加者の個別ニーズに合わせて行うため、具体的である
2)コーチングは、目標達成と個人の開発というポジティブなアプローチに焦点をあてている
3)コーチングは、強みを認識し、開発する能力を提供する
4)コーチングは、反復して行われ、学習を促進することができる
◯コーチング研究の課題と、ポジティブアプローチの可能性
・ただし、“コーチング研究“の課題は
「結果(何をゴールとするか)」と「方法論(やり方)」が研究によってバラバラである。
・そんな状況の中で、「ストレングス・ベース(ポジティブ心理学的アプローチ)のリーダーシップコーチング」と領域を特定すると、
“何が(強みのフォーカスが)/どれくらい結果に
影響を与えるのか”、という領域を特定できると考えられる。
◯ポジティブ心理学的アプローチを活用したリーダーシップコーチング研究(Cilliers,2011)
・ポジティブ・リーダーシップ・コーチングの効果を検証した数少ない研究の1つ。
・この研究では金融機関のリーダーを対象に、その効果を調査した。
*ポジティブ・リーダーシップ・コーチングの効果
1)役割への関与 2)役割の複雑さ 3)感情的な自己認識
4)自己承認(自分の中でコントロールできる場所がある)
5)他者の成長を促進すること
◯ストレングス・ベースのリーダーシップコーチングの研究(Mackie,2014)
・ストレングス・ベースの方法論が、リーダーシップにどのように影響を与えるのかを調査。
・この研究では、国際的なNPOのリーダーを対象に“被験者間の無作為対照群デザイン”を行った。
(=ランダムに実験群と対照群にグループを分けて、結果を検証する手法)
・マルチソースフィードバック(本人を含めた360度評価)にて、事前/事後を検証した。
*ストレングス・ベースのコーチングの内容と結果
(プロセスの内容)
・参加者は、自分の強みを考える際に「成長を重視すること」をコーチから促される。
・「実現している強み」、「実現していない強み」、「弱み」の観点からフォーカスするところを選ぶ。
・3ヶ月に6回のコーチングを受ける。
(結果)
・コーチングを受けた群は、対照群の3倍の効果サイズを達成した。
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(ここまで)
■こう見てみて感じられるのは、
こと”研究視点”から見た時に、
・コーチングについて
「成果」や「方法論」が統一されていないため、
研究そのものが難しいこと
その中で
・「ポジティブアプローチ」(ストレングス・ベースのコーチング)を説明変数
「リーダーシップの成果」を目的変数、
と”特定”することで、その影響を見定めることができる
というのは、
”ポジティブな関わりが
エビデンスベースでどのような影響があるのか”
を証明しようとする、
有意義な試みだろう、
と感じます。
■ということで、本日はここまで。
明日は、このコーチングをもう少し深める形で
この章の結論に向かわせていただければと思います。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
本日も皆さまにとって、素晴らしい1日となりますように。
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<本日の名言>
部下に任せることが必要だ。
そのうち部下は必ず一人前になり、
時には自分よりうまくなる。
松下幸之助(松下電器創業者/1894-1989)
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